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長くて1年。非正規どころか正社員にも迫る大量コロナ失業タイムリミット

ここ最近、新規陽性者数の減少が見られるものの、予断を許さない状況には変わりのない新型コロナウイルスの感染拡大。そんな中、「コロナ失業」の対象が非正規だけでなく正社員にまで拡大し、事態は深刻さを増しつつあります。この現状に対し、文科省は就職・転職支援のための「リカレント事業」の概要を公表しましたが、果たして失業者を救うことはできるのでしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、この取り組みには大賛成としつつ、そもそもの問題は別のところにあると指摘。さらに「リカレント事業」をより良い仕組みとするためのアイディアを提示しています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

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正社員も「大量コロナ失業」秒読み。政府の対策は公助か自助か?

「新型コロナウイルスとの闘いは、短距離走ではなく、1年は続く可能性のある長いマラソン」――。

新型コロナウイルス感染拡大が始まった昨年3月、山中伸弥教授(京都大学iPS細胞研究所所長)は自身でコロナ関連のホームページを開設し、こう警鐘を鳴らしました。

おそらくあのときは多くの人たちが「秋ごろにはまぁ、なんとかなるのでは」と考えていたのではないでしょうか。当時はまだ「オリンピックをやるつもり」で日本は動いていたのですから、「1年」と言われたところでリアリティーが持てるわけがありませんでした。

そして、今。既に1年半以上が過ぎ、それでも終わりの見えない状況にあきらめ感が漂っています。「格差が広がっている」と表現した方がいいかもしれません。

労働政策研究所の調査によると、2021年5月の企業の売り上げ額を「コロナ前」の2019年5月と比べた場合、52.1%の企業が「減少した」と答えたのに対し、約2割にあたる18.3%の企業が「上回っている」としました。

また、21年5月時点の売り上げ額の水準が今後も継続する場合、「現状の雇用を維持できる期間」について、2割の企業が「半年以内」、3割の企業が「1年以内」と回答。一方、4割の企業が「雇用削減の必要はない」と答えています。

つまり、「今、経営が厳しい企業」で働く人たちが、今後も働き続けられるか否かのタイムリミットは最長で1年。来年のゴールデンウィークに「コロナ前」に戻れないと、大量の人員削減が行われる可能性が高い。

厚労省によれば、新型コロナウイルス感染症に起因する解雇等見込み労働者数は7月9日時点で11万人を超え、11万326人に達しました。うち非正規雇用者は5万3,228人。つまり、非正規だけでなく正規雇用(正社員)の人たちもコロナ失業しているのです。

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そんな中、文部科学省は、就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業の概要を公表しました。全国の大学が企業・経済団体・ハローワーク等と連携し、2か月から6か月程度の短期間で就職・転職につながるプログラムを受講費無料で提供するとのこと。具体的には、DX、医療・介護、地方創生、女性活躍を中心に基礎的なものから応用的なものまで、22都道府県で63プログラムを採択しています。

おもな対象者は、「新型コロナウイルス感染症の影響を受けた失業者」ということですが、失業した人たちの中にはこういった「情報」にアクセスできない人たちもたくさんいます。「今日のご飯」のために仕事を休めない人たちもたくさんいます。そういった人たちのための「支援」に本当になるのでしょうか。

もっとも、今回の「リカレント事業」には大賛成です。新しい仕事を見つけたり、スキルアップして少しでも多くの賃金を稼ぐための手段にはなることでしょう。

しかし、そもそもの問題は、「非正規雇用」という枠組みの不安定さであり、低賃金であり、企業側の問題です。安い労働力を拡大することで、生産性を向上させた経営者の問題です。

今回の制度は公助でありながら、基本は自助。極論を言えば、「アンタががんばれ!」と、自己責任にしているのです。

つまり、リカレント事業に企業側ともっとコミットさせて、「雇用につなぐ」ではなく、「雇用された人」を企業側が送り出す仕組みにすればいいのです。

その方が受講する人のモチベーションも上がるし、自分を送り出してくれた企業への帰属意識も高まります。

みなさんのご意見、お聞かせください。

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image by: Ned Snowman / Shutterstock.com

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。

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