私もあちらこちらの屋台で食べていました。飲みに行った帰りや夜中に遊んでいた時、夜中まで働いてクタクタになった時、子どもが生まれその世話で疲れ切っていた時など、人生のいろんな場面で、しばし癒しを与えてくれた存在です。
屋台のラーメンは、ありふれた日常ではなく、どこか特別なもの。お腹を満たすだけではなく、心を満腹にしてくれます。この屋台の常連さんたちにとっても、人生のひとコマに登場する、印象深い大切な存在なのではないでしょうか。いつまでも忘れることはありません。
しかし、いま消滅の危機にあります。お客さまの減少、店主たちの高齢化により、明るい将来はありません。拘束時間も長く、夜中に働き、さほど収入が良いわけでもありません。若い後継者など、いるはずもなく、このまま消えるしかないのかもしれません。
日本の食文化を失いたくはありません。真夜中の小さな幸せを奪われたくもありません。しかし、生き残るアイデアが浮かびません。キッチンカーで昼間のオフィス街に出て行くという案もありますが、それは屋台ラーメンに似合わないのです。
あくまで真夜中に走ること。それが、人びとに愛される姿なのです。
静かに待ちわびる人びとのために、あとどれぐらいの年月が残されているのでしょうか。
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