NTT頼みの「護送船団ビジネス」で沈没した日本の半導体凋落の真実

かつてアメリカとの競争に勝ち、世界を席巻した日本の半導体産業は、いま見る影もない惨状となっています。その原因について富士通の半導体部門のトップを務めた人物の証言が核心を突いていると、メルマガ『週刊 Life is beautiful』著者で、「Windows95を設計した日本人」として知られる世界的エンジニアの中島聡さんが東洋経済に掲載された記事を紹介します。中島さんは、自身がNECのガラケーの部署と仕事をしていた経験も交えて、日本の総合電機を成長させ、没落の原因にもなったNTTありきの「護送船団ビジネス」について記しています。

プロフィール：中島聡（なかじま・さとし）
ブロガー／起業家／ソフトウェア・エンジニア、工学修士（早稲田大学）／MBA（ワシントン大学）。NTT通信研究所／マイクロソフト日本法人／マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

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私の目に止まった記事

● ｢日の丸半導体｣が凋落したこれだけの根本原因 | 東洋経済オンライン

2週間ほど前に「日本の半導体ビジネスの興亡」という記事をこのメルマガで書きましたが、その記事を補足する意味でも読み応えのある記事なので、半導体産業に興味のある方には、是非とも読んでいただきたいと思います。特に目に止まった部分を抜粋します。

NTT仕様の自社の通信機器向け半導体は35年保証の世界。設計、プロセス、品質管理もその水準でやっていた。それをパソコン向けにも展開したが、必要とされたのは品質より安さだった。パソコンは数年もてばいい。

日本の半導体メーカーが、メインフレーム向けの高性能な半導体を作っていたために、パソコンが伸び始めた時に、品質にこだわるばかりにコストを下げられなくなってしまったという点は、私も記事で書きましたが、NTTの存在を忘れていました。NTTは当時、旧来型の電話交換機を「電子交換機」にアップグレードしていましたが、それが「特需」となって、日本の半導体産業を支えたのです。

半導体部門自体が決定権を持っていないということは、国プロが成功しないという問題だけにとどまらなかった。投資などを決めるのは本社様で、半導体のマーケットをわかっている人間が（投資の）賭けに打って出ることはほとんどできなかった。しかも、半導体が儲かったときは（利益を）全部吸い上げられるし、損をしたときは（事業を）止めろと言われる。

これも鋭い指摘です。日本の半導体産業は、総合電機メーカーが自社製の電気製品、メインフレーム、交換機向けに作ることにより成り立っていたため、IntelやTSMCのような思い切った投資が出来なかった、という指摘です。

私は2000年ごろ、NECのガラケーを作っている部署と仕事をしていたことがありますが、彼らが見ているのは（甘い汁を吸わせてくれる）NTTのみで、世界市場など全く眼中にありませんでした。日本の半導体産業の衰退と、携帯電話産業の衰退のルーツは同じなのです。

NTTを筆頭に置いた「護送船団ビジネス」モデルは、「欧米に追いつく」ことだけを懸命にやっていた高度成長期にはとても効果的だったのですが、NTTのISDNがインターネットに完敗し、「世界の通信会社」になる野望が崩れた時点で、総崩れになってしまったのです。

（※本記事はメルマガ『週刊 Life is beautiful』2021年9月28日号より一部抜粋したものです。この機会にぜひご登録ください）

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