5.ライセンスビジネスを前提にする
もう一つ、注目したいのがライセンスビジネスだ。日本の大手アパレルは欧米ブランドのライセンシーとして成長してきたので、ライセンシービジネスは得意だが、ライセンサーになるという発想は希薄だ。しかし、デザイナーアパレルを基本に考えれば、ライセンスビジネスは重要な収益の柱である。
一般のプロダクトデザインは余分な装飾を排し、合理的かつ機能性を追求したものが多い。生産性が高ければ、その分コストを抑えられるからだ。しかし、合理的で機能性を追求したデザインは、感情を揺り動かすことが苦手だ。そこにファッションの出番がある。気分の記号としてファッションブランドがあると言ってもいい。
ライセンスを軸に考えるならば、服のデザインよりも、ブランドの気分を優先すべきだろう。ブランド名とロゴタイプ、そして、ブランドカラー。場合によっては、ブランドのオリジナルモチーフやキャラクターがあってもいい。
アパレル商品でいえば、まず、強いメッセージとロゴタイプのTシャツを基本に考える。その上で世界観、ライフスタイル等を設定していく。どんな商品のライセンスができそうかを予め設定しておく。ファーストコレクションの段階で、ライセンス商品も含めたコレクションや展示会ができれば理想的だ。ライセンスビジネスを前提にするか、しないかによって、ブランドコンセプトも大きく変わるはずだ。
■編集後記「締めの都々逸」
「売れ筋探して 素早く作り さっさと売り切り 店じまい」
持続可能なサスティナブルファッションと言っても、本当にファッションビジネスを根底から変えようと思っている人は少ないようです。単なるセールスプロモーションとして、キャッチフレーズとしてサスティナブルを使っているに過ぎません。
しかし、本来は収奪型のファッションを脱して、本当の意味での養殖型、言い方を変えれば育成型のビジネスモデルへの転換が必要だと思っています。具体的な方策については、次週お伝えしたいと思います。一週間で構想をまとめたいと思います。(坂口昌章)
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