自治体は大混乱。子育て支援の「10万給付」はどうすべきだったのか?

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18歳以下の子ども一人につき10万円相当の給付金をどう支給するかは、さまざまな議論の末自治体の裁量がある程度認められることで決着。しかし二転三転した政府見解は、事務作業を担う自治体を混乱させることになりました。今回のメルマガ『石川ともひろの永田町早読み!』では、著者で小沢一郎氏の秘書を長く務めた元衆議院議員の石川知裕さんが、自身の地元の北海道豊頃町の例を上げ、所得制限を設けず独自財源で全員支給を決めた小さい町だからこその理由を紹介。選挙目当てや人気取りの現金給付に異を唱え、実のある支援策があるはずと訴えています。

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10万円支給は子育て支援になるのか/検討すべき子育て実効策

18歳以下への10万円相当の給付を巡り、政府の見解が二転三転した結果、地方自治体が混乱している。私どもの選挙区でも、「現金一括支給」「5万円分はクーポンで」などと給付形態は様々で、所得制限をするかどうかも見解が分かれている。「クーポン使用」は準備に時間がかかるうえ事務経費が膨大になるため、自治体に多大な負担が生じる。だから、自治体としてはやりたくない。

そもそも、今回の所得制限は極めて不公平な制限だ。モデル世帯(夫婦と子ども2人)で夫婦の多い方の年収が960万円以上の世帯は給付の対象外とされているが、共働きで世帯年収が960万円を超えても、支給される場合があるからだ。共働きで夫が950万、妻も950万で合計1900万の収入がある世帯では支給され、夫が961万で妻がパートの世帯では支給されない。だからこそ所得制限を設けず、独自財源で給付する動きも広がっている。

地元の豊頃町は、所得制限に引っかかる40人分は町が独自負担して、所得制限にかからない340人と一括で支給することを決めた。小さな自治体だからできることであるが、英断だと思う。10万円をもらっているかいないかで親の所得が分かってしまうことは「子ども同士の分断」につながりかねない。

政府が当初、「現金とクーポン各5万円」と示したのは、配ったお金を子どものために使えるようにするという目的があった。現金給付だけだと、子育てに使われないのではないかという懸念があったからだ。親がパチンコ代に使ってしまう可能性もある。そうした懸念からクーポンの使用を思いついた。しかし、費用対効果の面から結局はなし崩しになってしまった。ではどうすべきだったのか。

裕福であろうが貧困であろうが、絶対に子育てに使わなければいけないお金がある。学費や給食費などだ。私は確実に子育てに使われることに予算を向けるべきだと考える。

子どもが大きくなればなるほど、子育てのお金はかかる。私立も含めて学費の援助、給食費の無償化、受験料の補填など、確実に子どもを持つ親世帯の負担が軽減されることに使うべきだったのではないか。児童手当の増額でもよい。増額であれば事務経費はかなり減らせる。一律で増やせばよいからだ。

子育て支援という名目で、目に見えて「政府のおかげ」と思わせる現金給付は、今後するべきではない。

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1973年北海道足寄町生まれ。函館ラサール高校、早稲田大商学部卒。96年2月から2005年7月まで小沢一郎秘書。同年衆院選で北海道11区から民主党公認で立候補して中川昭一氏らを相手に落選、07年3月に繰り上げ初当選。09年再選。10年1月、政治資金規正法違反容疑で逮捕、同年2月に起訴。12年12月、三選。同年5月、議員辞職。2017年10月、妻・香織が衆院議員に初当選。同月、公民権が回復。政界復帰に向け、コツコツと活動中!!! 著書『悪党』は5万部を超える大ヒット作に。そのほか、『雑巾がけ』など著書多数。

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