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NAHA, JAPAN -29 JUL 2017- Entrance of the Kadena Air Base, a United States Air Force Base in Naha. Okinawa is home to a large American military presence of United States Forces if Japan.

沖縄の感染再拡大はなぜ起きたか?筑波大客員教授「引き金は米軍基地」の重大な指摘

米軍基地内でのクラスターが発端と見られる沖縄県での感染再拡大。基地内での感染を容易に周辺へと広げてしまった原因はどこにあるのでしょうか。メルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』著者で沖縄県在住の現役医師、筑波大学客員教授の徳田安春先生は、昨夏の感染拡大時に、国立感染症研究所が米軍基地からの感染発端説を真っ先に否定した影響を指摘します。加えて、米国及び米軍の沖縄軽視があり、韓国やオーストラリアでは徹底されている米本国から移動してきた兵士への検査と隔離が、日本では実施されていなかったことを問題視。米側はもちろん、日本政府と感染研の検査方法と倫理への監視と検証の必要性を訴えています。

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沖縄の感染源としてノーマークだった米軍基地

2020年8月のゲノム解析は妥当だったのか?

新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが始まって約2年が経過した。日本を含む東アジアと東南アジアでは、欧米諸国と比べて感染者数と死亡者数は比較的少なかった。しかし、そのアジアの中で日本の感染状況は厳しく、なかでも沖縄は人口当たりの感染者数が国内でも突出して多い感染者数を出している。

まず、2020年7月の米軍基地内での感染爆発が起きた時期を追って、沖縄県内での流行が起こり始めたことから、当初米軍基地から基地外への感染リークが疑われていた。しかし、2020年8月に国立感染症研究所(以下、感染研)の所長は、記者会見で「沖縄県での感染状況を分析したところ、東京由来のものだったと説明し、7月に感染者が相次いで報告された米軍基地から拡大した訳ではないとの見解を示した」。

沖縄のコロナ拡大は「東京由来」 国立感染研所長、“米軍発”説を否定(THE PAGE) – Yahoo!ニュース

2020年8月の感染研所長発言は公開データが無いので、いまだにエビデンスレベルが不明である。アウトブレイク発生当初の感染陽性者総数からウイルスゲノム解析するケースの対象規準と人数などの詳細な情報提供がないからだ。感染経路不明者は原則全員ゲノム検査を実施しなければ「米軍株は無い」と断言できない。感染研ゲノム解析は科学的に不十分であった。米軍基地からの感染リーク説は否定され、そのためこの1年半の間、米軍基地内は感染源として注視されてこなかった。つまり、ノーマークになってしまったのだ。

再度の米軍基地内感染爆発と沖縄の感染拡大

しかし、2021年12月に感染状況は急展開した。在日米軍基地内で同時期に多発する感染爆発が起き、沖縄県民である基地従業員やその家族にも感染が拡大した。オミクロン株とデルタ株の二重拡大だ。2022年元日は、1日で235人もの感染者が米軍関係者から出た。

当時の米国では1日数十万人もの感染者が出ていた状況にもかかわらず、そこから移動してくる兵隊に対して、沖縄入り前後のPCR検査や厳重な隔離を行なっていなかったことが発表された。韓国やオーストラリアの米軍基地では、検査と隔離を継続実施していたことから、明らかに日本や沖縄軽視といえる。

今回の感染急拡大で引き金になったのは、明らかに米軍基地だ。米軍はワクチン接種を機に対策を緩和していたが、現行ワクチンの2回接種のみではオミクロン株の重症化を防ぐ効果があっても感染予防には弱い。若くて体力のある軍人は感染しても軽症のことが多く、感染が広がりやすい。

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後手になった日本政府の対応

軍隊としては感染情報を他国に知られたくない事情があるのだろうが、それなら外出を禁止するしかない。日本政府は、ただちに外出規制を求めるべきだった。キャンプ・ハンセンでの感染が広がってから正式に要求されるまでの間に県内で感染が広がった。政府対応が後手に回った結果、県内での過去最多の新規感染者数につながった。

今後も新規の変異株や感染症で同じ事が起こり得る。コロナ禍に限らず、米軍基地を抱える沖縄は常にパンデミック(世界的大流行)の危険を抱えている。今回の感染拡大もこれから徹底的に検証すべきだ。米軍の感染状況について感染経路や検査数等の情報がなく、実態が見えない。根本には日米地位協定の問題がある。しかし、米軍が情報を発信しないなら県や日本政府が積極的に情報を取りにいくべきだ。

もう一度2020年7月を振り返る。その時の沖縄でのアウトブレイクの際、感染経路不明者に対して全数ゲノム検査を実施していたならば、米国株感染者も当然みつかっていたであろう。その後の基地感染リーク対策に生かされていたはずだ。沖縄の人々には、米軍の検疫の科学的妥当性と倫理だけでなく、政府に付属する研究機関の科学的妥当性と倫理についても監視と検証を続ける必要がある。

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image by: EQRoy / shutterstock.com

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