それでも安倍晋三氏を支持するのか?北方領土2島返還への転換を認めた元宰相の「売国」ぶり

2022.01.15
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しかし外交は、一つの政権で軽々しく成果を得るようなものではない。外交には相手がある。だから、大きな外交課題は複数の政権にわたり、焦らずじっくりと取り組む。政権交代があっても急激な路線転換はせず、継続性を重視することが求められてきた。「保守」と呼ばれる政治家こそ、こうした積み重ね姿勢を堅持すべきだろう。

対露外交において、それは「北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する」ことのはずだ。実際、過去にはこうした外交方針のもとで、1993年の東京宣言(細川政権)や98年の川奈提案(橋本政権)のように、日露間に四島の帰属の問題が存在することや、四島の北側で国境を画定させることを外交交渉のテーブルに載せた例もあった。

外交環境の変化で従来の政府方針を貫けなくことなることもあるだろう。しかし、だからと言って首相の一存でこれまでの積み重ねを軽々しく壊して良いはずがない。それこそ安倍氏の好きな衆院解散で国民の信を問うなりして、国民的合意を形成する最低限の努力をすべきではないだろうか。

しかし、安倍氏はそれをしない。一度手にした権力は、何者にも縛られず自分の判断で行使できる、とタカをくくっている。だから、これまで国民に説明されてきた政府方針を勝手に変更することにも、何の躊躇も感じないのだろう。

百歩譲って「2島返還への変更」に大義があったとしても、従来の政府方針を支持する国民からは、大きな反発も出るはずだ。誠実に説得を重ね、理解を得るよう努めることは、政治指導者として不可欠だ。

そして、それだけの決断をしたのなら、責任を持って自らの手で結果を出すべきではなかったのか。任期中に2島返還を実現し、結果として残る2島を事実上放棄することで生じる不利益に対する補償などの手立てを講じ、国民を納得させるところまでやり切る。そこまでして初めて、安倍氏はリーダーとして責任を果たしたと言えるのではないか。

ところが安倍氏は、任期途中で自ら政権を投げ出してしまった。コロナ禍のさなかの辞任にも驚いたが、この領土問題も、積み上げてきた歴史をひっくり返しておきながら、何一つ「成果」も出さず、後始末もせずに去ったと言っていいだろう。そして、責任を負わなくていい立場となった今、外野から岸田政権に対し、安倍政権の方針の踏襲を求める。

いったい何様のつもりなのか。

このような権力行使のありようを日本の政治から払拭し、当たり前の政治に戻すことが、岸田首相と2022年の政界全体に与えられた使命だと思う。

それにしても理解に苦しむのは、こうした安倍氏の姿勢を、支持者は許すのだろうかということだ。

安倍氏の「雑な権力行使」は前述したようにさんざん見てきたが、仮にもこれは領土問題だ。返還を待つ国民もいる。「国家の三要素」に深くかかわるこうした問題で、たやすく日本固有の領土を手放すかのような外交を自分勝手にやられても、安倍氏の支持者は平気なのだろうか。

もし安倍政権以外の政権が同じ政治判断をしたとしたら、彼らは間違いなくその政権を「売国奴」と罵るに違いない。安倍氏のやることならば、これほどの「売国」的な方針であっても、苦もなく賞賛できるのか。全く不思議でならない。

 

image by: 首相官邸

尾中香尚里

プロフィール:尾中 香尚里(おなか・かおり)
ジャーナリスト。1965年、福岡県生まれ。1988年毎日新聞に入社し、政治部で主に野党や国会を中心に取材。政治部副部長、川崎支局長、オピニオングループ編集委員などを経て、2019年9月に退社。新著「安倍晋三と菅直人 非常事態のリーダーシップ」(集英社新書)、共著に「枝野幸男の真価」(毎日新聞出版)。

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