プーチンに“恩を売る”習近平の思惑。「無礼」な米国の要請を拒否する隣国

 

いろいろと思うところはありますが、今回のウクライナ戦争・紛争は、間違いなく、これまでに報じられてきた中では最悪と言っていい状況を生み出しています。そして、まだ、それがいつ止まるのか、だれにもわからない状況です。

3月16日現在、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によると、ウクライナから周辺国に避難したウクライナ人は300万人を超え、それは全人口の7%を占めるレベルにまで悪化しました。

そしてあまり報じられませんが、自宅を追われても国内に留まっている国内避難民(Internally Displaced People)の数は、伝えられているだけで130万人から140万人に上るそうです。

難民となって逃れた人たち、そして国内にとどまった人たちの大多数は、子供や子連れの女性(母親)、61歳以上のシニア層とのことで、18歳から60歳までの“現役世代の男性”は母国のために戦っています。

そしてこの国の特徴ですが、戦闘訓練を受け、実際に戦闘に出ている女性の数は、恐らく他国で例を見ない数に上っています。

それはここにきてロシア軍が民間施設を無差別に攻撃している状況が強く疑われる中、悲劇の拡大は加速度的に起こっています。

マリウポリの産院へのミサイル攻撃、キエフのアパートへのミサイルの着弾、あえて誘導装置を付けない爆弾を投下して無差別に広範囲を破壊することを意図した攻撃。そして、原子力関連施設への攻撃。

これらは超えてはいけない一線をロシアが越えてしまったことを表す内容ですが、これにより、ウクライナ軍の抗戦意識は高まり、そして欧米や国際社会からのシンパシーも一気に盛り上がってきました。

非難覚悟でちょっと穿った見方をしますが、これらの一部が自作自演の攻撃でないことを祈ります(かつて調停に携わった紛争ケースで、何度も繰り返し自作自演を目撃してきたので…)。

しかし、それがどうであれ、ウクライナの一般市民や家族が非常につらい状況にあっていることは疑いようのない事実で、ポーランドをはじめとする周辺国は、押し寄せるウクライナからの避難民に対して、本当に手厚いサポートをしていますが、そのポーランドでは、すでに130万人以上の受け入れが行われており、実際にはそろそろキャパシティーの限界にきているという情報も入ってきています。

ルーマニア、チェコ、スロベニア、モルドバ…それぞれすでに数十万人単位で受け入れを行っていて、“人々のやさしさ”のクローズアップの裏では、ウクライナから逃げてきた非ウクライナ人、特にアフリカ系移民とアジア系移民に対する冷遇の情報もあり、UNHCRおよび国連人権高等弁務官事務所も懸念を表し始めています。

我が国日本も、国際的な流れに沿って、特例措置でウクライナ人の難民受け入れを行っており、個人的に非常に素晴らしいと感じますが、これまで“難民に冷たい国”として知られている日本の難民受け入れ態勢は、今後、これを機に転換していくことになるのでしょうか?ウクライナの悲劇が収まった後、しっかりと議論されなくてはならない問題だと考えます。

シリア難民のケースでも、アフリカでの紛争の多くでも、難民の移動問題は、新たな紛争や紛争の拡大の要因になることが多くなっています。

それが人種差別という社会問題に発展することもあれば、民族ベースでの迫害行為への発展というおぞましいケースも多く引き起こしてきています。

今回のウクライナ難民危機が、新たな火種を作らないことを祈りますが、残念ながら、欧州にとっては、多少なりとも今後の火種となると思われます。欧州委員会もそれに気づいたのか、今週に入って、ウクライナ後の欧州地域のintegrityの維持について対策を練り、どの時点で線引きをするのかを検討しだしたとのことです。

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