プーチンに“恩を売る”習近平の思惑。「無礼」な米国の要請を拒否する隣国

 

各地で激しい戦闘が繰り広げられ、ロシア軍による無差別攻撃も目立ってきている中、和平協議も両国間の間で開催されています。

当初はベラルーシ仲介での協議でしたが、明らかにロシア側に付いていると思われるベラルーシでは公平性が欠けると判断されたのか、それとも外交的な駆け引きなのか、今はトルコ政府による仲介努力がされています。

最新情報によると、ロシア・ウクライナ双方共、「妥協に向けた進展あり」との認識を示しているそうですが、その内容についていろいろとメディアで報じられているものの、本当の内容についてはなかなか明らかにはなりません。

まあ、当事者は両国で、私も含めた大多数は、直接的な当事者ではありませんので、協議の本当の中身が外部には伝わらないのは、紛争調停官的な視点からは、当然のことなのですが。

ラブロフ露外相やクレバ外相などから出てきている“前向きに聞こえる”内容が共通の認識であることを祈ります。

しかし、どうしてここまでウクライナにおけるロシアの試みは長引き、ロシアはあきらめないのでしょうか?

「ウクライナ側の抗戦がロシアの予想をはるかに上回っていた」
「欧米諸国が挙って提供した軍備が、ロシアの戦意を挫いている」
「欧米主導の制裁がロシアに効いてきている」
「中国からの支援が、思いのほか、乏しい」

といったものから、

「ロシア軍は数でも装備でも凌駕しているが、攻撃に統率がない」
「戦端を開き過ぎて、兵站がうまく機能していない」

といった内容まで、いろいろと理由が“専門家たち”によって挙げられています。

実際にはどうなのでしょうか?

確かにロシア側が意図し、協力国のベラルーシや、2月4日にプーチン大統領自ら仁義を切りに行った中国に伝えたとされている「数日でウクライナ全土を掌握し、3月6日までに占領を終結させる」という当初のプランが大崩れし、予想以上にロシア側に被害を出しているのは、“計算外”だったと思われます。

また幾重にも課される欧米諸国と日本やその他の国々からの対ロシア制裁、特にロシアの国際社会と経済からの排除を目的とした制裁措置は、じわりじわりとボディブローのようにロシア経済に効いていることは確かなようです。

実際に、親プーチン大統領のオリガークの中からも、対ウクライナ戦争への非難が出だしたことは、情報戦として仕組まれているアレンジでない限りは、ショックでしょう。

しかし、ロシア経済の息の根を止めるには至っておらず、まだプーチン大統領の行動を変えるまでには至っていない理由は、対ロ制裁は、制裁を課す側にとっても諸刃の剣と呼ばれるほど、ネガティブな影響が大きく、G7内でもconcerted actionsと呼べるほどの一体感は得られていません。

例えばSWIFTからのロシア系金融機関の排除も、欧州各国へのエネルギー安全保障の観点から、最大のズベルバンクへの制裁は見送られています。

そしてエネルギー関連では、米英がロシア産原油の禁輸措置に出る半面、他のG7各国にまでその輪は広がっていません。例えば、今回、安全保障政策を大幅に転換したと言われるドイツ政府内では、財務大臣が「天然ガスはドイツ人のエネルギー安全保障上必須であり、自国民の日常を犠牲にしてまで、制裁に出ることは賛同できない」と発言していますし、緑の党出身のベアボック外相も、忌み嫌うはずの石炭火力発電所の廃止年限の先送りを示唆し、今年末までの全廃を目指す原子力発電所についても、立場を曖昧にしだしました。

日本については、エネルギー安全保障上、ロシアからの天然ガスは、割合こそ少ないものの、すぐに転換できるものではないとのことですし、イラン核合意関連時に、米政権からの圧力で泣く泣く手放したイランの油田の利権を、すぐさま中国に持っていかれた苦い記憶から、サハリン1と2からの撤退圧力に対し、二の足を踏む状態になっています。

欧米との連帯とロシアへの抗議は否定しませんが、ここで手を退いたら、また中国に吸収されるだけという状況になるでしょう。現実的な判断が、日本政府および企業には期待されます。

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