では日欧はどうでしょうか?
国によって負のインパクトの度合いは異なりますが、エネルギー価格の高騰が続き、そこに穀倉とも例えられるウクライナが戦禍にあえぐ中、小麦・食用油の価格の高騰も止まらず、今後、自らの生活の保護と、ウクライナを守れという高邁な思想との間でのバランスに悩まされることになります。
また対ロ圧力として課した在ロ資産の撤退や投資の回収の放棄は、様々な数字が飛び交う中で、最低でも4兆円規模も資産が吹っ飛ぶことになるようで、予測によってはその数値は大幅に増えるとのことです。
コロナ禍にあえぎ、復活しようとしていた矢先の経済への冷や水に、どのような感情が働くか、懸念しています。
ところで今週のもう一つのサプライズと言えば、戦禍にあえぐキエフを電撃訪問したポーランドのモラビィエツキ首相、チェコ共和国のフィアラ首相、そしてスロベニア共和国のセンシャ首相の姿勢でしょう。
ゼレンスキー大統領は「非常に勇気づけられた」と称賛し、多くの国々でも「とても勇敢な行動で、自らの危険を顧みずに連帯を示した姿にリーダーとしての姿を見た」と称賛が寄せられていますが、皆さん、どう思われましたか?
勇敢だったのか?それとも、首相という立場にありながら、向こう見ずな無謀な賭けだったのか?そして、ただの政治的なアピールに過ぎなかったのか?
3名共に「EU首脳との協議の上、訪問した」とのことでしたが、肝心のブリュッセルは「勇気は与えたが、特にEUとして依頼したものではない」と突き放し、一定の距離を置いています。
いろいろと聞いてみると、この3か国はすでにキャパシティーを超える人数のウクライナ人を受け入れており、各国内での友好ムードがその内、反転した場合の混乱に対する懸念を伝え、対ロ戦線で陣頭指揮を執るゼリンスキー大統領に対応を要請した、とのお話もあるようです。
感動に水を差しているとお叱りを受けるかもしれませんが、各国が挙ってウクライナの悲劇を利用しているように見えてなりません。
実際に悲劇に直面し、家族が引き離され、毎日多くの犠牲者を出し続けながらロシアと戦うウクライナの市民に寄り添っているのは、現在は、周辺国で避難してきたウクライナ人を保護している市民“だけ”かもしれません。ちょっと偏った見方かもしれませんし、ちょっと否定的な皮肉に思われるかもしれませんが、何とも言えない違和感を抱いています。
今、テレビをつければウクライナの悲劇が報じられ、いつしかコロナも忘れられたかのようにニュースから消えることもありますが、ウクライナでの悲劇の裏側では、決して報じられることはないようですが、多くの、別の悲劇が現在進行形で進んでいます。
以前、何度かお伝えしたエチオピアのティグレイ紛争は、国内の分断に繋がり、ティグレイ人を中心にさらに死傷者は増え、周辺国(特にスーダン)への難民の数も増える一方です。
紛争ぼっ発からウクライナ危機に至るまでの期間は、スーダンに支援を送るアメリカ政府からのサポートがありましたが、ウクライナへの対応を優先するアメリカは、スーダン国内およびティグレイ州での支援活動が疎かになっていると言われています。
「アメリカの責任じゃない」という声も聞こえますが、しっかりと口出しをし、混乱を助長させた後は、一気に見捨てるアメリカの手法は、イラクやアフガニスタンでの失敗を受けても、変わらないようです。
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