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鈴木宗男氏は“プーチンの弁明者”か?度を越した「ロシア寄り発言」の理由

政界きっての親露派として知られ、ウクライナ侵略開始後も一貫してロシア擁護とも受け取れる発言を繰り返してきた鈴木宗男氏。そんな鈴木氏がウクライナ人政治学者のとある発言に見せた「反応」がネット上で伝えられ、現役国会議員らもこれをSNSで取り上げるなど話題となっています。そもそもなぜ鈴木氏は事程左様にロシアに寄り添った姿勢を取り続けるのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、鈴木氏の度を越したロシア寄り発言を改めて取り上げるとともに、彼が親露派を貫く理由を前出ウクライナ人政治学者の著書を引きつつ考察。さらに鈴木氏からアドバイスを受けプーチン大統領との親密度をアピールしていた安倍元首相の「逃げ足の速さ」に対して、否定的な見解を記しています。

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「党内にロシアの弁明者がいる」と言われた維新が国会でとった行動

「日本には、親露派言論人や政治家がかなりいる。彼らのうち何割の人間が自分の意思で親露的言動を行っているのか、何割がロシアの餌に釣られて取り込まれているのか…」

このところテレビ番組でよく見かけるウクライナ出身の国際政治学者、グレンコ・アンドリー氏の著書『プーチン幻想』の一節である。

ロシアの餌とは、スパイ工作の罠を意味する。典型的なやり方としては、ロシア大使館が主催するイベントの無料招待状を送り、様々な形の接待をして懐柔するのだという。

アンドリー氏は参考人として、3月29日の参院外交防衛委員会に出席した。他の2人の参考人とともに意見陳述を終えた後、各党の委員から質問を受けた。

日本維新の会の音喜多駿氏は、テレビ番組でアンドリー氏と意見が対立した維新の創設者、橋下徹氏について「今は党とは無関係」と断ったあと、こう質問した。

「ロシアのスパイの存在と要人買収の問題がある。わが国は諜報活動に弱い。ロシアの諜報活動をどのように把握されているか」

これに対するアンドリー氏の発言が波乱を呼んだ。

「さっき仰った人(橋下氏)は法律上は関係ないんですが、残念ながら、あなたがたの党にロシアの侵略を明らかに弁明している人もいるので、その人についても、そろそろ考えたほうがいいのでは、というのが私の個人的な意見です」

「ロシアの侵略を弁明している人」が誰なのかを明言していないにもかかわらず、音喜多氏の隣に座っていた同党の鈴木宗男議員が激しく反応した。委員会終了後、音喜多氏とともに委員長にねじ込んだのだろう、この部分が不穏当だとして、議事録から削除されることになった。

なぜ、鈴木氏と名指しもされていないのに、維新はアンドリー氏のこの発言にこだわったのか。おそらくは、鈴木氏が自分のことを言われたと信じて疑わなかったからだろう。

アンドリー氏はこの発言のあと、ロシアのスパイ工作について、次のように語っている。

「ロシアは要人に接触してさまざまな接待をしたり、ロシアの企業に採用して高給を支払うことによって手なずけ、ロシアに有利な発言をさせる手段をとっている。有名な事例で言うとオーストリアのクナイスル元外相、シュッセル元首相、ドイツのシュレーダー元首相…。日本ではロシア人によるスパイ事件が昨年、一昨年と発覚したが、外交特権を使って出国している」

シュレーダー元首相がロシアと関係が深く、ガスプロムの取締役をつとめているのはよく知られている。日本では在日ロシア通商代表部の職員のスパイ工作が次々と明らかになっている。

名指しはされなくとも、維新のなかで「ロシアの侵略の弁明者」といえば、鈴木氏以外に思い浮かばない。鈴木氏も自分のことだと感じたから反応したのだろう。加えて、ロシアの対外工作の話である。鈴木氏は見過すことができなかった。

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だが、アンドリー氏の疑念も尤もと思えるほど、鈴木氏のロシア寄りの発言は度を越している。

たとえば、3月24日の現代ビジネスに掲載された田原総一朗氏との対談記事。

鈴木 「2021年10月23日、ゼレンスキーはウクライナ東部に自爆ドローン(無人攻撃機)を飛ばしました。プーチンさんはビックリして、ただちに10万人の兵をウクライナ国境に配備したわけです。ゼレンスキーがドローンなんか飛ばしてロシアを挑発していなければ、そもそもこんな騒ぎにはなりませんでしたよ」

プーチン氏は「プーチンさん」、ゼレンスキー大統領のことは「ゼレンスキー」と呼び捨てなのが、自分の感情に素直な鈴木氏らしく、わかりやすい。

憤懣の矛先は岸田首相にも向けられる。

鈴木 「3月1日、日本はプーチンさんの個人資産を凍結する制裁措置を決めました。これは岸田首相が『我が国はプーチン大統領とは付き合いません』と宣言したに等しい措置です。日本のほうから『お前とはつきあわん』というカードを切るべきではありませんでした。こんなことをすれば、これからの北方領土交渉も平和条約交渉もありません」

鈴木氏の言う通り、ロシアは日本を「非友好的な国・地域」に指定し、北方領土交渉の中断を通告してきた。

むろん、岸田首相としては、そうなることを承知のうえでの苦渋の決断だった。4月4日付の朝日新聞に、岸田首相が結論を出すまでの経緯が描かれている。

日本政府は今回、米欧の求めに応じ、ロシア政府関係者の資産凍結など、原則足並みを合わせる方針をとっていた。ただ、プーチン氏への制裁は次元が異なり、外務省や自民党内には慎重論が根強くあった。首相は逡巡した。(中略)首相は、外務省幹部らと複数回にわたって協議。「腹をくくるかどうか」と自らに語るように繰り返し、最終的にこう伝えた。「G7と足並みをそろえる。中途半端なことをやってどう評価されるか考えたら、もうやるしかない」

 

首相は、安倍晋三元首相の携帯電話を鳴らした。北方領土交渉を「戦後日本外交の総決算」とアピールした安倍氏への「仁義」だった。首相の判断を、安倍氏も受け入れたという。

安倍親露外交との決別。それは、岸田首相にとっては、外交の主導権を官邸から外務省に戻すという選択である。

安倍時代の官邸外交について、朝日の同記事はこのように書いている。

主導したのは、経済産業省出身者を中心とする官邸官僚。「外務省にはアイデアがない」と言い放ち、共同経済活動などの経済協力を推し進めた。外相の岸田氏と外務省は蚊帳の外に置かれた。

あくまで、官邸と外務省という組織の対立図式でとらえている。一方、アンドリー氏は著書『プーチン幻想』のなかで、安倍氏の属人的問題としてその親露姿勢を分析してみせた。

安倍氏自身にプーチン幻想、自信過剰、実績欲しさがあること。そして、安倍氏に影響を与えた人々がいることを指摘する。

安倍総理の周りにいる日本の親露派の影響である。某元首相や某地域政党代表を始めとする親露利権屋は、総理大臣に対露接近を強く勧めている。彼らは日本がロシアと関わりが深くなることによって、自分が金儲けできると思っている(あるいはロシアに思わされている)ので、総理にロシアと接近することがいかによいことか、と説得していることが想像できる。そして真に残念なことに、安倍総理は彼らの話を真に受け、勧められたとおりにしている。

某元首相は森喜朗氏、某地域政党代表はもちろん鈴木宗男氏のことを指すのだろう。維新の音喜多氏は、鈴木氏のためにアンドリー氏を問い詰めようとして、逆襲されたというところか。

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鈴木氏はアエラ22年3月14日号のインタビュー記事で、こう語っている。

「今の日本のメディアを見ていると、『ウクライナが善、ロシアが悪』という構図の報道ばかりが目につきます。これはちょっと短絡的すぎる」

“善悪二元論”に陥りやすい日本のメディアが欧米の報道を鵜呑みにしているのは確かだが、それなら欧米よりロシアの報道が信用できるのかと問いたい。少なくとも欧米メディアは、ロシアのような政治権力の統制を受けていない。

21年にノーベル平和賞を受賞したムラトフ編集長率いるロシアの独立系新聞「ノーバヤ・ガゼータ」も、活動の一時停止に追い込まれている。ロシアの国民の何割かは、旧ソ連時代や、大本営発表を垂れ流した戦前の日本と同じように、ウソを事実と信じ込まされているのだ。

鈴木氏はプーチン信者であり続けようとして、泥沼にはまり込んでいる。アンドリー氏がつきつけた疑惑は、議事録からの削除でフタをしようとしても、晴れるとは思えない。

一方、鈴木氏にアドバイスを受けてきた安倍元首相は、「ウラジーミル、君と僕は同じ未来を見ている。ゴールまで駆け抜けよう」と世界に向かって固い男の約束をしたにもかかわらず、プーチン大統領に向けて心情のこもったメッセージを送ろうとはせず、評論家のようなコメントを繰り返している。

「ロシアのウクライナ侵攻でそもそも(北方領土を)交渉できる環境ではなくなった。責任は日本ではなくロシアにある」(産経新聞インタビュー)

北方領土をめぐって27回も会談し、信頼関係を深めていたわりには、他人事のようではないか。プーチン氏を諌めてこそ、友であろう。それとも、もう友ではないというのか。

プーチン・ロシアに一途な鈴木氏と、逃げ足の速い安倍氏。言動は正反対に見えるが、損得勘定で政治的な立場を守ろうとする姿勢は変わるところがない。彼らの視界に欠けているのは、独裁者の一存で無辜の市民の命と生活が破壊されていくウクライナの現実ではないだろうか。

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image by: 鈴木宗男 - Home | Facebook

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