プーチンならやりかねない。負けの生き恥より核投下を選ぶ独裁者の愚

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何の罪もないウクライナ国民の命を、情け容赦なく奪い続けるプーチン大統領。彼はまた核兵器の使用についても躊躇いはないようです。今回のメルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、俄然現実味を増したと伝えられるプーチン大統領が戦術核を使う可能性を検討。さらにその標的となる場所を予測した、モスクワ国際関係大学元教授の見解を紹介しています。

プーチンは核を使うか?

ウクライナのゼレンスキー大統領は、「プーチンが核兵器を使う可能性」に言及しています。毎日新聞4月16日。

ウクライナのゼレンスキー大統領は15日、首都キーウ(キエフ)の大統領府で米CNNの単独インタビューに応じた。ロシアが戦術核兵器を使用する可能性について「世界のすべての国」が備えるべきだとの認識を示した。

「戦術的核兵器」とは、何でしょうか?ウィキを見ると、

戦術核兵器(せんじゅつかくへいき)は、戦場単位で通常兵器の延長線上での使用を想定した核兵器である。戦略核兵器や戦域核兵器(中距離核兵器)に対して射距離が短い。米ソ間の核軍縮協定などでは射距離500km以下のものが戦術核兵器であると定義されている。

私の認識では、「戦闘に勝つために使われる小型核」。プーチンが戦術核を使う可能性については、CIA長官も言及しています。

ロシアが戦術核兵器を使う可能性については、米中央情報局(CIA)のバーンズ長官が14日に「軽視できない」と言及した。ゼレンスキー氏はこの点について聞かれ、「私だけでなく、全世界が懸念する必要がある。本当の情報ではないかもしれないが、真実である可能性もあるからだ」と語った。
(同上)

これ、どうなのでしょうか?ゼレンスキーとバーンズ長官は、情報戦の一環で、プーチンを「悪魔化したい」だけなのでしょうか?

実をいうと、【プーチン自身】も核兵器使用について警告しています。毎日新聞2月8日。

緊迫するウクライナ情勢を巡り、ロシアのプーチン大統領とフランスのマクロン大統領が7日、モスクワで会談した。緊張緩和に向けた対話の継続では一致したが、ロシアが求める北大西洋条約機構(NATO)不拡大などの主要問題では隔たりが大きく、プーチン氏はロシアとNATOの核戦争になれば「勝者はいない」と言及し、露側の要求を認めるよう迫った。

この発言は、2月7日です。2月24日に戦争がはじまった。プーチンは、核攻撃をちらつかせながら、「ロシアの要求を受け入れろ!」とマクロン大統領を脅迫していました。そして、戦争開始3日目の2月27日、プーチンは、「核抑止力部隊を厳戒態勢に」するよう命令した。テレ朝ニュース、2月28日。

ロシアのプーチン大統領は国防相らに対して核抑止力部隊を厳戒態勢に移行するよう命じました。

このように、プーチンは「核兵器」にしばしば言及しています。もちろん、プーチンも、「核兵器を使いたい」とは思っていないでしょう。彼は、世界中で「現代のヒトラー」(プトラー)と呼ばれ、「永遠の悪名」を歴史に残してしまいました。

もし、核を使えば、「ヒトラーをはるかに超える極悪人」として、永遠に人々の記憶に残るでしょう。それでも、「ウクライナとの戦争に負ける」という「生き恥」をさらすより、「核を使っても勝利する道」を選ぶかもしれません(実際は、勝利できないはずですが)。

ちなみに、ロシアのプロパガンディストたちは開戦前、「3日で片がつく」といった発言を繰り返していました。

  • お笑い芸人のゼレンスキーは逃亡し、政権は崩壊
  • ロシアの傀儡政権が樹立される
  • 傀儡大統領は、クリミアは、ロシア領と認める。ルガンスク、ドネツクの独立を認めるNATO非加盟を約束する。非軍事化を約束する

とまあ、こんな楽観的シナリオを描いていたのです。

ちなみに、プーチンは、FSB第5局の情報にもとづいて、楽観シナリオを描いた。誤情報を流し、プーチンに大恥をかかせた第5局は、150人が粛清されたそうです。読売新聞オンライン4月12日。

12日付の英紙ザ・タイムズによると、ウクライナ侵攻の難航を受けて、ロシア情報機関「連邦保安局(FSB)」に所属する職員約150人が追放された。侵攻前に「虚偽の情報」を大統領府に提供した責任を問われたという。

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