北朝鮮に80階建て“タワマン”出現の謎。大規模な住宅建設を進める金正恩の思惑

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4月14日、北朝鮮の国営メディアは、金正恩総書記が北朝鮮を代表するアナウンサーの李春姫(リ・チュニ)さんに新居を贈呈する様子を報じました。その3日前の11日には80階建ての“タワマン”の竣工式が行われたとの報道もありました。今回のメルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』では、北朝鮮研究の第一人者である宮塚利雄さんが、大規模住宅建設を進める金正恩氏の思惑を解説。タワーマンションができても電力や水の供給に不安があり、有力者ほど低層階に住みたがるという北朝鮮の住宅事情を伝え、誰が住むのか?と疑問を呈しています。

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平壌に出現した80階建てタワーマンションは砂上の楼閣か張りぼてか?

北朝鮮は4月15日に故金日成(キム・イルソン)主席の生誕110周年を迎えた。金日成の誕生日は北朝鮮最大の祝日とされ、「太陽節」として「最大限の祝賀行事」が演出される。北朝鮮メディアによると、平壌の金日成広場では15日夜に大規模な祝賀公演が開催され、花火も打ち上げられた。

金正恩(キム・ジョンウン)は、金日成主席の誕生日に合わせて、昨年3月に「普通江川岸段々式住宅区」建設とともに打ち出したプロジェクト「平壌市1万世帯住宅」建設で、平壌市郊外の寺洞(サドン)区域の松新(ソンシン)・松花(ソンファ)地区など5つの地区に2025年までに毎年1万世帯ずつ、全体で7万世帯の住宅を建設するプロジェクトの1年目の成果として、13日に普通江川岸段々式住宅区の竣工式が行われ、金正恩がテープカットに臨んだと、「労働新聞」は14日付で報じた。

この住宅区は「金正恩総書記自ら発起し、設計主・建設主・施行主になって建設の全工程を直接手配し、指揮した」とされ、同紙は、「世にうらやまないもののない最上の物質的・文化的福利」「新時代の誇るべき創造物」と誇示し、その住宅を「国の富強・発展に寄与した功労者に与える」と記した。

その対象者として取り上げているのが、朝鮮中央放送委員会責任アナウンサーの李春姫(リ・チュニ)、崔(チェ)ソンウォンの両氏と、労働新聞論説委員のトン・テグァン氏で、中でも李春姫さんについては厚く報じられた。その中身を見ると…。

「『あまりにも素晴らしい住宅をいただきました』と感謝のあいさつをささげる李春姫アナウンサーの手を、金総書記はやさしく取り、彼女が暮らすことになる瓊楼洞(キョンルドン)7号棟に向かった」

「金総書記は李春姫アナウンサーの家を訪れて、家族部屋をはじめとする居間を1つひとつ見て回りながら、家族の感想を肉親になった気持ちで情け深くお聞きになり、高齢の彼女(78歳)が家の中の階段を上り下りるのに不便な点はないかと細かく気配りしながら、恩情に富む措置も講じた」

李春姫さんは「生活上のあらゆる便宜が、最高レベルで保障された素晴らしい住宅。まるでホテルのようだ。党の恩恵があまりにもありがたく、家族みんなが感激の涙を流した」と“遠慮のない話”を語ったとのこと。

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