バイデンが危惧。プーチンが触手を伸ばす新たな国、米との関係悪化で最悪の事態も

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アメリカの外交問題の中で、今後の世界秩序形成においても重要で、原油市況のカギを握るサウジアラビア。今アメリカとは史上最悪の関係と言われ、アメリカを完全に無視し、ロシアの国益に繋がる原油市況高騰状態を維持していますが、その関係悪化の原因と今後予想される動きについてお話をしたいと思います。

歴史上最悪の関係修復の為に送り込まれたウィリアム・バーンズ氏

先週アメリカでは、CIA長官のウィリアム・バーンズ氏が、4月中旬にサウジを極秘訪問していたとの報道が注目されました。

バーンズ氏は、外交官出身者として初のCIA長官に就任した方ですが、外交官として最初の赴任地がヨルダンでアラビア語を話すことができ、しかも中東との関係も深いということで、歴史上最悪と言われるサウジアラビアとの関係修復の為に送り込まれたと思われますが、その成果は今のところ不透明という段階です。

アメリカとサウジアラビアの関係

アメリカとサウジアラビアは、1933年の外交樹立以降、一貫して良好関係にありました。サウジにとっては、イランやイエメンなどの近隣諸国との慢性的な軍事緊張の中で、アメリカの軍事支援と資金援助を得ることは極めて重要です。

一方でアメリカとしても、サウジはかつては中東に於ける安全保障の拠点であり、特にイラン革命以降はイスラム原理主義者との闘いに於ける重要なパートナー、事実上の軍事同盟国です。

そして、最大の産油国という見方からすると、歴史的に原油の安定供給と市況安定という意味でも、非常に重要なパートナー国と位置付けてきました。

因みに日本も、原油が輸入品目の中で最大金額の商品、全輸入額の8.2%を占めていますが、その中のなんと40%を、現在サウジアラビアに頼っています。

アメリカとサウジアラビアの関係が悪化した2つの理由

アメリカがバイデン政権下でここまでサウジとの関係をこじらせた理由は大別すると2つです。

1つ目はオバマ政権時から開始された、中東への関与縮小の流れで明らかにアメリカはいくつもの失敗をしています。

イラクからの拙速な撤退、エジプトでのアラブの春への不味い対応、リビア政変時の介入、シリアでのロシアやイランへの主導権を渡した結果の酷い内戦誘発、そして、イランとの核合意締結と、サウジの信用を失墜させるに十分な外交を重ねてきました。

トランプ政権時は友好関係を取り戻しつつありながらも、バイデン政権になるとアフガンからの撤退、イラン核合意の復活画策などでまたアメリカの中東政策は、サウジからの信頼失墜の方向に加速しています。

そして、2つ目は、実質的支配者であるムハンマド皇太子に対するバイデン大統領の「否定」「軽視」にあります。

2018年にサウジ人ジャーナリストのカショギ氏がトルコで殺害された事件ですが、これにムハンマド皇太子が関与しているとバイデン政権は断定し、大きな人権問題だと攻撃していること。

さらに、バイデン大統領は飽くまでも父親のサルマン国王との関係を重視してムハンマド皇太子との関係構築を拒絶してきましたが、これは、カショギ氏殺害事件だけではなく、「史上最悪の人道危機」と呼ばれているイエメン内戦問題、今は完全にサウジとイランの代理戦争となっていますが、こちらも絡んできます。

しかし、ムハンマド皇太子からすれば、自分を認めないバイデン政権に対して、なぜ従わねばならないのかという思いは強く、昨年秋のオースティン国防長官、今年初めのブリンケン国務長官の訪問はキャンセル、3月のバイデン大統領の電話会談は拒否しました。

現在はOPECプラスで協力関係を構築してきたロシアと、今や最大の石油輸出先である中国へとパートナーを変えつつあると言って良いと思います。

サウジアラビアがアメリカに期待してるコト

中露と対立関係にあるバイデン政権は、サウジとの関係修復は絶対条件であって、必死に裏で動いていますが、これが奏功するかどうかはこれからの世界秩序の方向性、そして日本の将来に大きな影響を与えます。

まだ、ムハンマド皇太子がアメリカに期待していることはあり、例えばイエメン内戦への支援、原発などへの開発協力、カショギ氏殺害に関連する自身への訴訟撤回などです。

こういった要求を上手く利用しながら(今回バーンズCIA長官を送り込んでいるのは、カショギ氏殺害の調査や黒断定したレポートなどは全てCIAが行っていますのでここでのディールがある可能性もあります)、アメリカがサウジとの友好関係を早期に修復することに期待をしたいと思います。

出典:メルマガ【今アメリカで起こっている話題を紹介】欧米ビジネス政治経済研究所

image by : BiksuTong / Shutterstock.com

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