岸田・バイデン両氏も当事者。日韓「慰安婦合意」で日本が持つ“切り札”

 

解説

日韓で従軍慰安婦問題を「最終的かつ不可逆的に」解決するために結んだ協定が破棄された事は、日本では当たり前の知識ですが、実際この問題を詳しく解説した海外新聞の記事は日本人が期待するほど多くありません。

以前にも紹介しましたが、ニューヨークタイムズなどはいまだに従軍慰安婦について以下のように書いていたりします。

歴史家によれば、1930年代から終戦までの間、日本はアジアと太平洋地域の軍が運営するレイプセンターに、推定20万人の女性を強制的に、あるいは誘い込んだという。

 

歴史家によれば、日本は1930年代から終戦まで、推定20万人の女性を強制的に、あるいは誘い込んで、アジアと太平洋地域の軍が運営するレイプセンターに入れた。これは、国家が支援した性奴隷の歴史上、最大の例の一つである。

(2021年10月21日記事)

解説

この記事、従軍慰安婦への日韓合意の事は何も記されていません。もちろん、その協定を韓国が一方的に破棄したことなど、書かれているはずもありません。今でもこのような記事がニューヨークタイムズのような世界的新聞に掲載されているのです。

その意味で、このフォーリン・アフェアーズのような権威ある雑誌が書いてくれたという事は非常に大きな事です。

逆に言えば、日本は自らの立場の海外広報について全く劣っているともいえます。さらにフォーリン・アフェアーズは今回のバイデン大統領の関わりについても記しています。

バイデン氏は、この問題に対して無縁ではない。副大統領として2013年に自ら介入して、二国間関係の修復を目的とした2015年の安倍・朴会談の土台作りに着手しているのである。

解説

2015年従軍慰安婦の合意については、バイデン氏自身が副大統領としてかかわっています。立ち合い人のようなものです。そして岸田総理も当時、安倍政権下の外務大臣でした。

つまりこの合意については岸田総理もバイデン大統領も当事者だったのです。その意味で日本側は有利な状況にあります。岸田氏は当事者としてユン大統領に「話が違う」という事ができますし、韓国はバイデン大統領の手前、それを否定することはできない状況なのです。

つまり従軍慰安婦問題については、日本はあえて話を大きくして問題化してもよいのです。それを例にして韓国の「協定」「約束」に対する意識が間違っていると批判してよいのです。

遠からず岸田総理とユン大統領の直接会談が行われるでしょう。「私は交渉の当事者だったので言えるのですが…」と岸田総理は会談の後の記者会見で語ることはできるでしょう。

こういったカード、むやみに切っていいものではないです。しかし、その気になれば切れるという気概ももって岸田総理は日韓関係の再構築に踏み込んでほしいものです。(この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』5月22日号の一部抜粋です。この続きをお読みになりたい方はご登録ください。初月無料です)

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▼2022年4月
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▼2022年2月
・プーチン大統領の目的は何か(2/27)
・スパイ防止法 中国と日本(2/20)
・武器輸出を増大させる韓国(レッテルの怖さ)(2/13)
・ウクライナ危機の本質、ブタペスト覚書(2/6)

2/22号のテーマは、主要国の中で日本だけが未制定かつ現実を見据えた議論すらなされない「スパイ防止法」。我が国においてはいくらスパイを逮捕しても無駄となる現実や、スパイ容疑で拘束した邦人を獄中死させている中国が、日本国内で常識を超えた情報収集活動を行なっている事実を紹介しています。2/6号では、ウクライナ危機の本質をニューヨークタイムズの記事を引きながら詳細に解説。さらに危機に至った歴史的経緯を伝えない報道機関を批判的に記しています。

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▼2022年1月
・自作自演の罠にはまったプーチン(1/30)
・日本に入る中国の電気自動車(1/23)
・カンボジアのインターネットゲートウエイ法(1/16)
・中国からのメッセージ(1/9)
・如何にして海外報道に疑問をもったか?(1/2)

このままでは近い将来、日本の電気自動車市場を中国が席巻することに? 1/23号では、日本の大手物流企業が、次々に中国製の電気自動車を導入している実態を紹介。1台50万円以下という圧倒的な価格競争力を背景に攻勢を強める中国メーカーに、日本はどう立ち向かうべきか?大澤氏の提案は、自動車に限らず多くの日本企業にとって参考になりそうです。1/2の新年特別号では、朝日新聞の歪んだ報道姿勢や著者の原点についても。

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▼2021年12月
・原子力潜水艦を渇望する韓国(12/26)
・「中国式民主主義」に対する各国報道(12/19)
・ビッグデータの覇権を狙う中国(12/12)
・中国政府とオリンピックを揺るがすテニス選手の行方不明(12/5)

日本はおろか米国をもはるかにしのぐ、中国の「ビッグデータ収集」が12/12号のテーマ。米アップルやテスラですら中国共産党に従わせる、中国の老獪なやり口とは? 20世紀が石油の時代だとすれば、21世紀はデータの時代。「情報はタダ」と軽視しがちな日本に大澤氏は強い警鐘を鳴らします。また12/26号では、韓国のムン・ジェイン大統領が、北朝鮮との終戦を国連で強く訴える一方で、「北朝鮮に対抗するために」原子力潜水艦を渇望している真の理由を考察。隣国の日本も、決して無関係ではいられません。

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▼2021年11月
・軍事的な結びつきが強まる日本とベトナム(11/28)
・中国政府を揺るがすテニス選手の性的暴行告発・消息不明(11/21)
・「日本は信頼できない」韓国大統領候補(11/14)
・日本の戦略を高く評価するシンガポール新聞(11/7)

11/28号では、日本とベトナムの安全保障協力を詳しく解説。南シナ海で中国の脅威が高まる中、日本はベトナム沿岸警備隊向けに約400億円を投入、「かが」「むらさめ」2隻を海軍基地に寄港させ「親善演習」を実施しました。大澤氏はこの日本政府の取り組みを「場当たり的ではない長期的な国家戦略」として評価しつつも、「肝心の日本国民に説明できない」ところに大きな課題があると指摘します。
11/7号では「最近、日本は目立たないながらも主導的な役割を果たすようになった」とのシンガポール紙の記事を紹介。これもまた「なぜか日本で報道されない」日本に肯定的な意見のひとつです。

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▼2021年10月
・世界EV電気自動車バッテリー覇権戦争(10/31)
・今もNYタイムズで追悼される従軍慰安婦(10/24)
・海外からの日本への投資、北朝鮮に次ぐ最下位(10/17)
・日本が核武装を決断する日(10/10)
・中国の情報操作に対抗するシンガポール(10/3)

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▼2021年9月
・オーカス(AUKUS)の各国反応(9/26)
・米国の国境に殺到するハイチ人の悲劇(9/19)
・鳩山由紀夫氏に問う(9/12)
・中国で日本テーマパークが閉鎖(9/5)

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▼2021年8月
・韓国 従軍慰安婦記念式典(8/29)
・アフガンに入り込む中国の戦略(8/22)
・仮想通貨 恐ろしい騙しの手口(8/15)
・暗号通貨の未来~シンガポールの取り組み~(8/8)
・忍び寄るインフレ、バイデンフレーションの恐怖(8/1)

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▼2021年7月
・オリンピック開会式、NYタイムズ厳しい報道(7/25)
・グーグルが国有化される日(7/18)
・無観客オリンピックの報道(7/11)
・タイトル42が廃止される時(7/4)

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▼2021年6月
・海外のオリンピック報道は?(6/27)
・テキサス州がトランプの壁を独自建設へ(6/20)
・今、香港に報道の自由はあるか?(6/13)
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▼2021年5月
・カマラ・ハリス副大統領の沈黙(5/30)
・海外は従軍慰安婦問題をどう報道しているのか?(5/23)

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大澤 裕この著者の記事一覧

・株式会社ピンポイント・マーケティング・ジャパン 代表取締役社長  ・情報経営イノーベーション専門職大学 客員教授 ・法政大学大学院イノーベーションマネジメント研究科 兼任講師 慶應義塾大学を卒業後、米国バンカーストラスト銀行にて日本企業の海外進出支援業務に従事。カーネギー・メロン大学でMBAを取得後、家業の建築資材会社の販売網を構築するべくアメリカに子会社を設立。2000年、ピンポイント・マーケティング・ジャパンを設立。海外のエージェントとディストリビューターを使った販路網構築・動機づけの専門家として活動を行っている。2015年「中小企業が『海外で製品を売りたい』と思ったら最初に読む本」を、2017年「海外出張/カタログ・ウェブサイト/展示会で 売れる英語」をダイヤモンド社から上梓。

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