反対にバイデンがやろうとしているのは、
a)どういうわけか、このタイミングでQUAD、つまり対中包囲網。
b)豪州は政権交代期に入ったが、依然として対中警戒モードは変わらず。
c)むしろ、米日豪でインドのモディをロシアから少しでも離反させようと、躍起。
d)対中包囲網には岸田総理も乗っかって、このタイミングで核軍縮の提案も。
e)日本に対しては、常任理事国入りを支持する一方で、防衛費増額を要求。
f)通商に関しては、バイデンはTPP復帰を宣言する度胸はないので、IPEFなるものをデッチ上げて、貿易、供給網、インフラと脱炭素、税や反汚職の4点で交渉しようなどといういい加減な態度。
g)まだ中国抜きで、サプライチェーンを回すとか、そのくせ脱炭素(アメリカ以外は反原発に回ってしまう中で)も載せているので、インフレ解消のファクターはほとんどゼロ。むしろ、インフレ加速要因が加わる。
というように見受けられます。
こうなると、下手をすると次のようなシナリオになってしまう可能性があります。
「米国のインフレは止まらず、このままスタグフレーションに陥る。つまり、物価高と不況が同時進行。失業率が再び増加に転換。株安が加速」
「中国は、それでも李首相派が水面下で躍進。ウィズコロナも強引に進める」
「米国経済が十分に落ち込み、米国政治が十分に混迷したところで、中国はEUと提携して、米国抜きのウクライナ和平に動く。バイデンとアメリカの面子は国内外で丸潰れ」
「その結果として、米中GDP逆転は加速。当初説は2028年、これが習近平の経済自損で33年に延びていたのが、反対に26年ぐらいに繰り上がるかも?」
「経済は再びボロボロで、2027年には韓国は再び左派政権に」
といった悪夢のシナリオが考えられます。そんな中で、バイデンは、諸情勢の一気転換を図って、何らかの軍事的冒険に走るなどということもあり得ます。例えばですが、米軍が直接参加すると第3次世界大戦になるので、急に旧ソ連の中で、ロシアの影響力から離脱しようとしているジョージアを「けしかけて」米国とロシアの代理戦争をさせるなどの可能性が考えられます。
また、ウクライナ戦争は、ドンバス・マリウポリの帰属、東北部の帰属、オデーサの支配をめぐって膠着状態が続き、長期化することが考えられます。その場合に、ドイツはエネルギー政策をめぐって「フランスの核電力の購入拡大」「ロシア以外からの化石燃料の購入拡大」など「不本意な政策」を選択せざるを得ず、ショルツ政権が瓦解などということもあり得ます。
こんな流れが続くようですと、バイデン大統領は、イラン人質救出作戦を強行して失敗したカーター政権が、2期目の選挙で惨敗したようなケースに陥るかもしれません。また、それ以前に、現職大統領でありながら出馬断念に追い込まれたジョンソンのような状況に追い詰められる可能性もあります。
とにかく、現在のバイデン政権の苦境は、アメリカの世論に渦巻いている不満が爆発しそうになっているからです。そして、その不満のほとんどは異常なまでの物価高から来ています。
「ガソリンが以前の倍になった」
「ベビー用のミルクが品不足で、親たちは気が狂いそう」
「中古車が値上がりして新車並みに。新車も手に入りにくい」
「卵が暴騰して、最低でも1ダース3ドル40セント(440円)」
「外食が暴騰して、ファストフードに毛が生えた程度でも一食20ドル」
「衣料品も生活用品も、人気商品に限って品不足」
とにかく、アメリカの世論は怒っています。そして、こうした問題のほとんどが中国との経済関係、そしてウクライナでの戦火から来ているのです。
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