最高200万円。中国「密告報奨金」導入で日本人が標的になる日

 

また、人口350万人の北京市朝陽区では、通行人の監視にあたる市民ボランティアが約19万人(実名登録13万人)おり、月間2万件以上の情報を警察当局に提供しているといいます。彼ら・彼女らは「朝陽群衆」あるいは「朝陽大媽(朝陽おばさん)」と呼ばれています。町中で買い物をしながら、子供を公園で遊ばせながら、不審者がいないかと目を光らせて情報を通報する人たちなのです。

著名人を次々に摘発、監視カメラよりも強力な密告組織とは

2021年10月、ショパンコンクールの優勝者で「ピアノ王子」と呼ばれ人気を集めていたユンディ・リ(李雲迪)という著名ピアニストが、売春容疑で朝陽区警察に逮捕されるという事件がありましたが、これも「朝陽群衆」からの密告がきっかけでした。

「ピアノ王子」も見逃さなかった北京最大の住民スパイ組織「朝陽群衆」その実態とは

朝陽区警察は、朝陽区の住民が気軽に通報できるように「朝陽群衆HD」というアプリまで配布しています。また、2018年には中国国家安全部もオンライン通報プラットフォームのサイトを開設し、通報や密告を奨励しました。

「朝陽群衆HD」アプリがリリース

そして、朝陽群衆や朝陽大媽のような密告集団を中国全土に広げようというのが、今回の奨励制度の法律施行なのです。

とりわけ中国は人間不信社会です。儒教によって伝統的に家族主義が強く、不正も親族ぐるみで行う一方で、同族以外は信じられないために他の一族との権力闘争が絶えず、それが戦乱続きの歴史を形づくってきました。

中国における王朝交代は「易姓革命」と呼ばれますが、これはある姓の王朝が別の姓に変わるということを意味し、どの家族が天下を治めるかをめぐり、血で血を洗う争いを続けてきたというのが中国の歴史なのです。万世一系の日本とはまったく異なります。

毛沢東は中国人の家族主義を、私有財産の温床であるとともに、伝統主義の元凶だとして、家族主義の解体を目指しました。そのために、地主を殺して集団農場である人民公社をつくったのです。しかし、責任が曖昧になり、働いても働かなくても同じだという悪平等が横行、大躍進政策の失敗とともに、生産性が低下してしまったのです。

この大躍進政策の失敗により国家主席を辞任せざるをえなくなった毛沢東が、復権のために仕掛けたのが文化大革命です。学生や大衆を煽動して、政敵を走資派として糾弾して失脚に追い込んだわけです。

また毛沢東は密告を奨励したため、仕事仲間や近隣住民同士のみならず、親族縁者、さらには親子の間でも密告が横行しました。これにより、中国人の相互不信はさらに昂進し、人間不信社会ができあがっていったのです。

そのような土壌があるので、中国人は通報や密告について、躊躇をするところがありません。それどころか報奨をもらえるとなれば、嘘をでっち上げてでも通報・密告するようになります。文革中も、自らの保身のみならず、昇進やライバルを蹴落とすための密告が相次ぎました。

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