世界的に人気の韓国アイドルグループBTSが突然「活動休止」と報道されました。後日、活動休止ではないと訂正されることになりましたが、なぜこのような報道に至ったのでしょうか。 今回の『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』ではNY在住の人気ブロガー・りばてぃさんが、アメリカでのBTSの活動休止騒動について語っています。
この記事の著者・りばてぃさんのメルマガ
「BTS」の活動休止をアメリカはどう報じていたか?
1(1)新作アルバムがチャート1位
韓国の人気グループ BTSが6月20日に発表した新作アルバム『Proof』が、6月16日までの週間集計期間にアメリカで31万4,000枚相当の販売量を獲得。その結果、ビルボードのメインアルバムチャート「ビルボード200」(6月25日付)で1位を獲得した。
これでBTSは『ビルボード200』のチャートトップに上がった6作目のアルバムを保有することになったとのこと。
またこの成功により、「アーティスト100」でも50位から一気に1位に浮上。昨年2021年8月以来となる通算21週目の首位に返り咲いたと報じられている。
ご参考:
・BTS Returns to No. 1 on Billboard Artist 100 Chart Thanks to ‘Proof’ Debut
ちなみにビルボードのその他のチャートが表示されているウェブページを見ると、6月22日時点で「ソーシャル50」、「デジタルソングセールス」(新曲の『Yet to Come』)などでも1位を獲得しており、上記したチャートも合わせるとチャート一覧ページのほとんどがBTSで埋まっている状況となっている。
ご参考:
・チャート一覧
とにかく出す曲、出すアルバムは次々とアメリカの音楽チャートのトップにランクインし、YouTubeなどのソーシャル・メディアではBTSの公式動画はもちろんのこと、BTSが出演したアメリカの番組公式動画の再生も軒並み公開直後に数百万回再生されるという大人気ぶりとなっている。
そしてその人気ぶりはアメリカでも当然広く知られている。辛辣なジョークも飛び交う深夜のトーク番組でBTSを取り上げた際に、
「この10年間、岩の下に住んでいたとしても、世界を席巻したK-POPのスーパースターグループ、BTSのことは知っているはずだ。」(Even if you’ve been living in a under a rock for past ten years, you still know who BTS is, the superstar K-pop group that has taken the world by storm)
と説明したシーンがあったが、そう説明しても視聴者は違和感を持たないほどBTSはアメリカで相当に有名なのである。
ご参考:
・BTS Takes a Break & Michael Kosta Tries to Join P1Harmony
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(2)活動休止騒ぎ
そんな BTSについて「活動休止か!?」と衝撃のニュースが報じられた。
日本ではアメリカよりもさらに話題になっていると思うので改めて説明するまでもないかとは思うが、この騒動について簡単におさらいしつつアメリカでの報道はどうだったのか、備忘録がてらご紹介しよう。
まず先週、6月14日にBTSの公式YouTubeチャンネルで「FESTAディナー」という動画がハッシュタッグ(#2022BTSFESTA)をつけて公開された。
1時間に及ぶこの動画は、いわゆる雑談動画のような、ご飯を食べながらメンバーがリラックスした雰囲気で冗談を言い合ったり、時に本音を交えながら活動について話すというもの。
動画冒頭には「台本のない、アーミーに向けた本当の真摯なBTSの姿での食事会です」といった説明が入っている(補足:アーミーとはBTSのファンたちのこと)。
会話はすべて韓国語で進められ、英語、スペイン語などの字幕を選べるようになっていた。
当初、食事会は和やかに始まり、時々大爆笑が起きていたが、21分を超えたあたりから、メンバーの1人SUGAのRMへのとある投げかけがきっかけとなり、日本でも伝えられているように、RMがアーティストとしてのこれまでを振り返りつつ、今後を考えて7人での活動に一区切りつけ、今後はこれまで追求しきれなかったソロ活動に専念する期間にするといった話に発展したのである。
その時の英語字幕に活動休止という意味の「Hiatus」が表示され、グループの解散騒ぎにまで発展したのである。
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しかしこれは英語の誤訳だったそうで、BTSの所属事務所であるHYBEは翌日15日に同グループの活動休止は誤報であり今後もグループの活動は継続するとの声明を出している。
なお、日本のFrontrowの報道によると、誤訳があった箇所は上述したSUGAがRMに投げかけた発言部分。
韓国語では
「僕たちオフの期間に入ったでしょう」
との発言だったそうだが、英語字幕では
「これから休止期間に入るでしょう」
という意味の、
(We’re going into a hiatus now)
と表示されていたのだそうだ。
22日現在では、「Hiatus」ではなく、
「今、一時的にお休みしています」
という意味になるように、
(We are taking a temporary break now.)
に変わっている。騒動を受けて修正したのだろう。
しかし、SUGAの会話はその後も続くが、
「FESTAをやらない理由、コンテンツを作らない理由を話すべき?」
との発言に対する英訳は以下の、
(Should we talk about why we’re not doing the FESTA or making content?)
となっている。
この動画自体がFESTA動画であり、FESTAを作っているわけなので間違った英訳になっていると思われるが、おそらくそれだけ慌てて修正したのだろう。
ご参考:
・「BTSは活動休止はしません」所属事務所が声明、英語字幕が原因で言っていない言葉が言ったことに
・当該のBTS公式動画21分から
https://youtu.be/1t0iJ7F_k9Q?t=1260
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(3)欧米メディアの報道は?
BTSの事務所が訂正発表をする前、アメリカではエンタメ専門メディアのデッドラインが、
「韓国K-POP界のスーパースターBTSが解散を発表、しかし『いつか戻ってくる』と誓う」
(Korean K-Pop Superstars BTS Announce Split But Pledge “To Return Someday”)
との速報を出した。記事タイトルには活動休止の「Hiatus」ではなく、解散という意味になる「Split」を使ったことでよりセンセーショナルなイメージを与えているが、記事内容は前述したとおり一時的な活動とソロ活動の追求、動画でRMによる感情的な発言シーンがあったことなどが伝えられた。
ご参考:
・Korean K-Pop Superstars BTS Announce Split But Pledge “To Return Someday”
また驚くことに主要メディアの1つであるABCが夕方のニュース番組でも取り上げていた。ABCは昼間のエンタメ情報番組でも取り上げているので、かなりの注目度の高さである。
ご参考:
・BTS hiatus
・ABCの夕方ニュースのシーンは以下
https://youtu.be/UbNQ2C734cY?t=18
ちなみにABCは主要メディアの中でも女性の視聴が比較的高いと言われており放送するドラマは女性視聴者をターゲットにしているものも多い。おそらくそういった背景もあり、多くの女性ファンを抱えるBTSのニュースは取り上げるべきものだったのだろう。
さらに主に政治・世界のニュースに強いワシントン・ポスト紙や硬派な内容でお馴染みのNPRも言及していた。
・K-pop supergroup BTS announces hiatus to pursue solo projects
・BTS’ hiatus announcement shocked fans and global music industry alike
とにかく多くのメディアが活動休止について、ツイッターでの反応、ファンの落胆ぶり、中には「1つの時代が終わった」といった同じような内容の報道ではあったが続々とBTSニュースを報じていた。
こうした各種報道を踏まえて大人気の深夜トークショーも活動休止について言及するといった状況だったのである。
ご参考:
・Who Will Fill The Boy Band Void Left By BTS?
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そして騒動の翌日に出たBTSの所属事務所による「活動休止ではありません」との発表を受けてフォローアップ報道に移行。NYポスト紙は誤訳であったとの報道をしている。
ご参考:
・BTS not going on hiatus, manager says confusion due to mistranslation
例えば、イギリスメディアのBBCは、同国の大人気男性グループで2016年に活動休止しソロ活動に移行したワン・ダイレクションを引き合いに出し、欧米アイドルグループと韓国アイドルグループの事情の違いを解説。
ワン・ダイレクションはグループとしての活動は今後ないだろうと思われるほどの「活動休止」状態であり、主要ボーカルのハリー・スタイルズは昨年の「ウォーターメロン・シュガー」に続き、今年も「アズ・イット・ワズ」など大ヒット曲を連発している。
なのでBTSもワン・ダイレクション同様に活動休止になるということは、つまりはグループとしての活動を見れなくなるのではないか?と心配する声が出ているようで、「K-POPの世界では、7人、8人、9人という大所帯のグループでも、ソロ活動しながら、グループとして活動は続けることが多い」といった説明をしている。
ご参考:
・BTS hiatus ‘not as severe’ as One Direction
ちなみに上述した他メディアでもBTSは過去にもソロ活動に専念する期間を短期で作り、「Hiatus」(一時的に)活動休止していたとの補足もしている。
実際、BTS Hiatus でグーグル検索すると過去にもお休み期間についての報道をアメリカのメディアが「Hiatus」と表現し報じているのがある。
以下のNBCニュースの記事は、2021年12月のもので、エネルギーを充電するためクリスマスの休みの期間を家族で過ごす「Hiatus」を設けるとの内容だ。
ご参考:
・BTS announces hiatus for time to ‘recharge’
そう、「Hiatus」自体は過去にも使っていたので、動画を英訳した人も特に問題ないと考えていたのかもしれない。なのでなぜ今回はここまで大きな騒動になったのかは不明なのである。
いろいろわからないけども、BTSの今後の活動については韓国の兵役なども関係するため以前から動向を注視する声も出ており、今回の予想外の誤解や反応に様々な要因と合わせて繋がったのかもしれない。
ちなみにこの活動休止報道があった時期、ニューヨークではBTSの新作アルバムを記念したポップアップ展が開催。事前予約の無料チケットは即完売で行くことはできなかったが、韓国街にある有名書店ではBTSはじめK-popアイドルのグッズや韓国コスメを良い感じに展示・販売していたので、動画でその様子をお伝えしているので以下よりどうぞ:
・NYC Walk: Korean Town Must see Book Store & BTS Merch. 4K Ultra HD
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日本のアイドルグッズもこれくらい展示・販売しても良いのでは?と思うほどの充実ぶりだった。
image by: Kathy Hutchins / Shutterstock.com