東京五輪のレガシーのすぐそばにあるゴミの山から目をそらす社会

 

私がここで問題にしたいのは、ごみを捨てる不徳さではなく、それが放置されてしまっている社会のシステムの機能不全である。

清潔と衛生を保つことにより、病気の蔓延などを防ぐのが社会システムの役割であるが、私たちは目に見えるもの以外に反応するのはなかなか難しい。

湾岸地域のごみはその象徴であり、それが長じて市民サービスを阻害しても何ら悪びれないシステムとそのシステムを運用する方々の存在が広がっていくことになる。

例えば、私が住む江戸川区では工事に着手したままで長年放置されたようになって、通れなくなっている堤防の遊歩道がある。

地域の人が安心して通行できるその遊歩道は工事用の柵が立てられたままここ数年通行できないままだ。

最近では私が定期的に任意で清掃していた堤防も工事が「はじまる」とのことで立ち入り禁止になってしまった。

この工事の柵の向こうの一画にはラベンダーが咲いていた。

私が毎日のランニングで目にするその淡い紫色は堤防の片隅に力強く根を張っているようで、ランニングのゴール地点で疲れ切った私を癒してくれた。

誰かが手入れすることなくても、咲いていたそのラベンダーは、工事によりそこに立ち入れられなく、誰にも見られることも声を掛けられることもなくなった。

今は遠くから見ることしかできなくなり、紫の花弁も薄緑の茎と葉も茶色に変色し、明らかに枯れているようだった。

私にとって「ごみ」への無関心とラベンダーへの鈍感さは機能不全の社会システムという見方でつながっている。

東京五輪を開催し、レガシーを残し、活かすということは、この大きな町を誇りを持ち、好きになるということだと私は受け止めているが、それは路傍にも目を向け、心を配れる場所であることから始まるのだと思う。

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大きなレガシーを残したのだから、今後は持続可能な市民の想いを小さな一歩、心配りから始めたい。

image by: Urbanscape / Shutterstock.com

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