もう一つ、安倍さんという人に関しては、自民党では最大の功労者という見方をするわけですから、国葬にするというような話が多分出てくるんじゃないですかね。国葬にするのが怪しからんと言っているわけではないですけど。もっと手前のところで言うと、明日一日、どういう選挙戦を戦うのかということ。事件が起きて夕方になる前くらいまでは自民党も他の与党野党も、街頭演説を止めると言っていたように思うんです。それが夜になって、やる方向に変わってきたようですね。というのは、こういうテロというか暴力によって攻撃された選挙。で、その街頭活動をやめてしまったら攻撃者、テロリストの望み通りになってしまう。負けるわけにはいかない。ただ、選挙運動をしている人と聴衆。この人たちの安全は100%確保しながら土曜日一日選挙運動をやりましょう、こういう話になりそうですね。
これ、リアルに見て何が起こるかというと、日本全国の警察の大動員ということになるのではないでしょうか。安全確保の上でそれが必要ならば直ちに悪いこととはいえませんが、例えばこれ、安倍さんがこれまで色んな選挙の時にヤジに対して「この人たちに負けるわけには行かないんです」なんて言ったりしていたこと、覚えてますけれど。ヤジを飛ばすのも民主主義の一部としてあるわけですよね。これについては議論があるかもしれませんが。そんなときに、実際にそのようなことが過去にもありましたけれど、自民党に対する批判のプラカードをもっているだけで、何人もの警察官がその人を取り囲んで言葉が出せないようにしてしまう、やがては街頭演説会場から排除してしまう、こんなことがこれまでありましたけれど、そういうことが大っぴらに全国で起こるかもしれない。「安全のためには少々きついことをやってもいいんだよ」という気分が醸成されるのは、あんまり良いことではないように思いますね。そういうことが相まって、さらに選挙結果、これは次の衆議院の選挙、あ、衆院選は早まるかもしれませんね。もしかしたら。そういう色々な形で政治日程に影響があるのではないかという気がしています。
安倍さんは直接お話ししたことは、かつて『サンデープロジェクト』という番組にご出演になったときに一回あっただけですが、特に政治取材を志していませんでしたので。そのときは国立の追悼施設を作るべきかという議論。そのときにスタジオに来ていただきました。当時、安倍さんの肩書きは何だったのかな。党の役員か何かだったかもしれませんが、靖国問題なら安倍さんを、ということでお出になったのだと思います。その後、総理大臣になられて実に色んなことをおやりになった総理大臣であることは間違いがないですね。
えーと、ウクライナの話をしようとずっと思っていたのですが、また…。そうですね、ウクライナでは毎日、いったい何人の方が亡くなっているのか。銃撃や砲撃、地雷に…あるいは突然窓から飛び込んでくるロシアのミサイルによって。いったい何人の方が亡くなっているんだろうと思うと、日本は本当に平和だなあ…と思っていたら。なんと密造拳銃で安倍元総理が殺されるという衝撃的な事件が起きてしまいました。多分、この事件を色んな形で総括しなければならない。それはこの事件もそうですし、安倍さんあるいは安倍内閣という時代をどういうふうに見ていくかということは、これからやっていかなければならないことになるでしょうし、あるいは事件そのものの性質ですね。これ、やっかいな事件ですよね。できるだけ深く考えていくようにしなければ、亡くなった人にも申し訳ないような気がします。
(『uttiiジャーナル』2022年7月10日号より一部抜粋。全てお読みになりたい方はご登録ください)
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