ロシアに握られているドイツの未来。欺瞞だらけの経済制裁に呆れる国民

 

それにしても、ハーベック氏のやっていることはかなり支離滅裂だ。ロシアのウクライナに侵攻後、ロシアに経済制裁をかけろ、ウクライナに重火器を送れと、大声で言っていたのは彼ら緑の党だった。

そして、ロシアの財源を断つため、ロシアからの石油は今年の終わりで禁輸だと豪語しつつ、しかし、ガスはまだ必要なので24年まで輸入するなどと勝手なことを言っていた。

しかし今、ロシアから送られてくるガスが減った途端、動転し、「ガスを武器として使うのは卑怯だ」と憤っている。何かおかしくないか?

今、ノルドストリームのタービンはカナダで修理を終えており、ロシアは、これが戻って来れば、ガスの輸出量を元に戻せると主張している。しかし、現在、欧米がかけている対ロシア制裁によれば、カナダはこれをロシアに戻すことは罷りならない。

そこでハーベック氏は必死でカナダに働きかけ、そのタービンをロシアではなく、ドイツに送ってくれるように頼み込んだ。つまり、制裁の回避であり、本来ならこれも当然N Gだ。

結局、数日のすったもんだのあと、10日、カナダ政府が一時的な例外措置として、対ロシア制裁を解除し、タービンをドイツに送ることに同意したと報じられた。

カナダの資源担当の大臣は、その理由として、「必要なガスの供給が途絶えれば、ドイツ経済は困難に陥り、ドイツ国民は冬に暖を取ることができない状況になる」。

よって、ヨーロッパが、「安定したエネルギーを手頃な価格で得られるよう」助けたいと言っている。当然、ウクライナ政府は激しく反発。カナダがこの決定を撤回するよう要求している。

それにしても、自分たちで掛けた制裁に苦しみ、回避策を練るなど、笑い話にもならない。ロシア政府のペスコフ報道官はそれを見て、「なぜ、最初からそうしなかったのかがわからない」と皮肉り、ロシアがエネルギーを武器にしているという非難をはっきりと否定した。

ただ、タービンが無事に到着し、それで不都合が解消されたとしても、ロシアがガスの蛇口を握っていることに変わりはない。

ドイツの世帯の半数はガス暖房だ。自治体がガス発電所を運営し、地域の電力供給と暖房を一手に賄うシュタットヴェルケと呼ばれるシステムを取っているところが多い(日本でいうコジェネ=熱電併給)。そして、ロシアからのガスの輸入は、戦時中である現在も、もちろんそのまま続いている。

つまり、ロシアのガスプロム社には、ドイツから毎日、膨大なガス代が支払われ、陸上パイプラインで輸送しているものに関しては、ガスプロム社はウクライナにちゃんとパイプライン使用料を支払っている。

print
いま読まれてます

  • ロシアに握られているドイツの未来。欺瞞だらけの経済制裁に呆れる国民
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け