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報じられぬ山上容疑者「統一教会への献金で破綻」と「自衛隊入隊」の因果関係

事件から二週間以上が経過した今もなお、その余波が日本はおろか世界中にも拡がっている安倍晋三元首相銃撃死事件。手製の銃を発砲した山上徹也容疑者(41)の供述内容が少しづつ報じられていますが、母親の入信していた旧統一教会への多額の献金で一家が「破綻」した事実などが明らかになってきています。今回のメルマガ『uttiiジャーナル』では著者でジャーナリストの内田誠さんが、山上容疑者の実家が統一教会への献金で「破綻」した時期と、海上自衛隊へ「任期制自衛官」として入隊していたことの因果関係について言及。このことをマスメディアが取り上げないことを疑問視しながら、今後の捜査や報道に期待を寄せています。

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メディアが言わぬ山上容疑者「統一教会への献金で破綻」と「自衛隊入隊」の因果関係:「デモくらジオ」(7月15日)から

あの事件に関して、統一教会が関係しているということが出てきましたので、問題は統一教会と安倍氏が実際にどのような関係にあったのかについての検証とか、そのようなことが避けられないですよね。

お祖父さんの岸信介さんと統一教会、今取り上げられているのは旧統一教会という言い方で、統一教会の名はなくなり違う名前になっているわけですけれど。お祖父さんとの関係はかなりハッキリしているわけですが、お互い政治的に利用し合うということだったのかと思いますが、これは本当に複雑で、あの教団の始祖というか開祖というか、文鮮明という方がおられましたけれど、北朝鮮の出身者なんですよね。

で、北朝鮮との関係もあるはずですので、あと、あまり言われていないですが、韓国と日本という関係の中での教義上の問題もあって、日本はサタンの国で、韓国がメシアの国だから、日本は韓国のために膝を屈し、金を出さなければならないという理屈も確か「原理講論」のなかにあったのではないかと思います。そういう関係にも及ぶことですね。

そのような団体との間で様々な政治的思惑が背景にあったにしても、岸氏が熱心な関係を深めていったのはどういうことだったのか、よく考えるべきだと思うんですね。その人の孫である安倍さんは、今「家庭連合」ですか、その別組織の大会にビデオメッセージを寄せて、そこでその団体のトップである文鮮明の奥さんに賛辞を送る、高く評価していると言っているビデオがテレビなどで紹介されていますけど、そういう関係を見せてしまったところで今回の被疑者があのような行動に及んだということがあるのだと思いますね。もちろんそれを良しとするわけではない、当然違いますが、それが動機につながっているということ。今の段階ではそれくらいのことしか言えないので、もっと深いことがきっとあるのだと思いますけれどね。

それから、あの事件に絡んでいうと、山上という被疑者、メディア的には容疑者ですかね、その母親が統一教会の会員で、少なくとも1億円の献金をして、土地を売った代金とか、本来、会社の経営資源であるようなお金をつぎ込んで経済的に破綻する。一家離散の憂き目に遭うということが背景にあったということなのですが、その年限が確か2002年という話ですよね。

これ、あまりメディアで言われないので、どういうことなのかなと思うのですが、山上容疑者が任期付きの自衛官になったのは翌年、2003年からですよ。だから破綻したことと、一家離散になったことと、彼が自衛官になったこと、そこは直近の出来事ですからね。関係があるというふうに考えるべきだと思うのですが、その辺の動機だとかについては、自衛隊筋からはもちろんないですし、捜査関係者の話としても伝わってきていないようですね。いずれその辺のことが出てくるのではないでしょうか。

何しろ、自宅で鉄パイプを切ったり、様々な技術を駆使したりして手製で散弾銃を作ったわけですよね。普通の人に出来ることではない。自衛官であれば、銃を分解し、さらに組み立て直し、実際に発砲するところまですると聞き及んでいますけれど、2003年のその時点、自衛官になった時点で既に復讐のための道を歩み出したと言えるのか言えないのか、その辺のことも是非知りたいなと思うことです。

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それから、自民党、政府、あるいは岸田さんでもいいのですが、安倍さんを「国葬」にすると言い出すのではないかと確か申しましたけれど、実際言い出しました。というか決定したようですね。これ、「国葬」というのは、直近だと中曽根さんが亡くなったときに、あれは内閣と自民党の合同による葬儀だったんですね。まるで226事件かと言いたくなるような格好をした警察官がダーッと並んで不気味な光景だったのを覚えていますが。一般の人は入れない形でした。そういうのはありましたが、「国葬」は戦後、ただ一件だけで、皇室以外で国葬が行われたのは吉田茂さんだけ。これ、実は私よく覚えていまして、私が若くないことは当然皆さんご存じだと思いますが(笑)、昭和42年。私が小学校6年生の時でした。

その前からご病気だったのだと思いますが、データを調べてみましたら、10月20日に亡くなっているんですね。で、国葬が行われたのが10月31日、わずか11日後なんですよ。11日後に国葬が行われたということになります。安倍さんの例で言えば、事件から二週間たっていますから、もう国葬…というくらいのタイミングなんですね。もちろん、亡くなり方が全然違いますから、病気で高齢でなくなった吉田さんと演説中に銃撃されて亡くなった安倍さんとでは違いますから、そう簡単な話ではないのですが、しかし、岸田さんは「秋」だと仰いましたでしょ。なぜそんなに先にするのか。

確かに先に伸ばすことについて、理由は色々付けようがあると思います。新型コロナのオミクロン株のBA5がとんでもない勢いで感染を拡大させていますので、そんなときに大勢が集まるようなものを政府がやるのはおかしいと、観光に関する支援策さえ先延ばしになっているにもかかわらず、国葬を慌ててやる必要はないと説明がつくでしょうし。

ただ、ちょっと思うのは、この間の時間を、旧安倍派は派の会長がいなくなったんですね。自民党内で最大の派閥、最大も最大。圧倒的多数を持っている派閥のトップがいなくなった。こんなことを言ったら岸田さんに怒られますけれど、自民党の、政府の、事実上の最高権力者といってもおかしくないくらいの力を発揮していた、しかも活動的に行動していた安倍さんが突然亡くなられた。という状態を前に、安倍派内部は分裂の危機ですよね。安倍派は分裂してその後にどのような形になるかということと、岸田さんが政権をどう運営していけるのかということの間には関係があると思うのですね。

ということになれば、国葬のタイミングがずれればずれるだけ、安倍派内部は新しい代表を簡単に決められなくなるのではないでしょうか。そのあたりは政治評論家の方にお任せした方がいい話なのでこれ以上は申しませんけれど。岸田さんにとっては自民党内の、どうあっても反対できないというか、その人にこうしてくださいと言われたらなかなか無理とは言えない、無碍に断れない、否定できない、拒否できない…それだけ大きな安倍派の存在がどうなるかは、政権の中での求心力、岸田さんの求心力が強まるか弱まるか、非常に大きな岐路というか。それは色んなことがあると思いますね。

見えないところで色々なことが起こるでしょう、今、まるで旧田中派に7人いた幹部が「七奉行」なんて言われていたのに準えて、いつの時代かよって感じがしますが、今回も「旧安倍派の七奉行」というのですが、奉行というか、全然ぱっとしない人たち…などというとなんですが、巨大派閥を率いていけるような良い意味でも悪い意味でも実力を備えた人がおられるようには思えないのです。

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もうごく普通に考えて、それでもまとまることで力を発揮してきた、そこに味を占めている人たちも当然いるわけですから。みんなでできるだけ大きな塊で、できるだけふさわしい人を会長に選んでやっていきましょうと。ですが、本当はその人は総理大臣候補にならないといけないのですね。2年後ですか、総裁選があるまでにその人を押し上げていくことをしなければならないわけでしょ。上に立ちたい人は何人かいるわけですよね。そういう要求はもちろんあるのですが、でも、じゃ2番手3番手くらいの人たちは1番にくっついていくのがいいのか、あるいは岸田さんにくっついていくのが良いのかという判断を強いられるのでしょう。(岸田さんからしたら)これは手を突っ込むところだよね。

それに付随した事件が起こるかもしれないので、ちょっとそんな目で見ていたらいいのかなという気がしております。自民党内の勢力図が大きく変わる可能性があるわけで、それはとりもなおさず、これから焦点になる防衛費増額の問題、財政の問題、経済政策。思い出しますよね、岸田さんは自民党総裁選の時には格差を是正すると言い、金融所得への課税をすると言っていた人でしたが、当選したら全部スルッと抜けてしまったと。

それ、もう一回、戻すチャンスじゃないですか。

それはどれくらい強い力をこれから安倍さんの国葬までの間に、次の総裁選までの間に力を蓄えることが出来るのか。そこに掛かっているわけですね。今言ったようなことに加えて防衛費増額の問題がありますよね。まだ大きい問題がいくつもあるような気がしますけれど、何より憲法改正の問題。こういうところに岸田さんが本来持っている方向性を出すために、どうやって力を蓄えていくのか。そんな目で見ていただくと、ちょっと興味がわくのではないかなという気がします。国葬を巡っても、権力を巡る離合集散の舞台になりますので、注目していただけたらと思います。

(『uttiiジャーナル』2022年7月17日号より一部抜粋。全てお読みになりたい方はご登録ください)

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image by: JoshuaDaniel / shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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