近年、韓国の技術力が中国に追い越される事態となっているようです。今回のメルマガ『キムチパワー』では、韓国在住歴30年を超える日本人著者が、すべて「逆転」されてしまった韓国の焦りと今後について紹介しています。
AIも宇宙航空も防衛産業も… 中国が韓国を追い越す
7月25日、朝鮮日報が尹錫悦(ユン・ソンニョル)政府の「未来の7大産業」の(韓国・中国の)技術競争力を分析した結果、エネルギー・防衛産業・宇宙航空・バイオ・人工知能など5分野の技術競争力が中国に平均1.2年ほど遅れていることが分かった。
技術格差が最も大きい分野は宇宙航空分野で両国格差は3.5年だった。続いて防衛産業は1.7年、人工知能0.5年、エネルギー0.2年、バイオ0.1年だった。韓国がリードしているのは炭素中立対応(環境・気象)、スマート農業の2つだけだった。それぞれ0.9年、2年を中国を上回った。
7大未来産業は4月、安哲秀(アン・チョルス=当時の大統領職引継ぎ委員長)が発表した。これを政府傘下機関である韓国科学技術企画評価院(KISTEP)、情報通信企画評価院(IITP)が昨年と今年、それぞれ発表した国別技術水準評価報告書(2020年基準)に基づいて韓・中技術格差を分析した。
中国は先端技術分野に対する米国の牽制にもかかわらず莫大な人材プールと巨大な内需市場、大々的な政府支援を土台に毎年技術力を急速に成長させている。エネルギーとバイオ分野は2018年までは韓国の技術力が中国をリードしたり似た水準だったが、2年経った今、全て逆転したことが分かった。
青瓦台経済科学特別補佐官を務めたソウル大学工学部の李廷東(イ・ジョンドン)教授は「産業先進国が100年かかることを中国は巨大市場で10年で多くの経験と試行錯誤を繰り返し急成長している」とし「韓国はこれまで先進国の概念設計を受けて生産してきたが、今後は中国から設計図をもらって生産した後、再び中国に納品する状況が起きかねない」と話した。
IT強国コリアを自負していたICT(情報通信技術)でも、中国が韓国を追い越す状況が起きている。今年1月、情報通信企画評価院が発表した報告書によると、AI・自動運転車・クラウド・ビッグデータ・ブロックチェーンなど18大ICT重点分野の技術全般で、韓国の技術力は中国に0.3年遅れていることが分かった。
特に、量子情報通信(1.5年)、自動運転車(0.7年)、人工知能(0.5年)、ビッグデータ(0.5年)、知能型半導体(0.4年)、次世代セキュリティ(0.4年)などの分野では平均より格差が大きかった。
評価対象5か国(米国・欧州・韓国・中国・日本)の技術水準は、先導国米国を100とした場合、欧州(93.3)、中国(91.5)、韓国(88.6)、日本(88.4)の順だった。中国が韓国を初めて追い越したのは2018年で、当時0.2年だった技術格差は0.3年に広がった。
科学技術専門家たちは、中国の深センは単純な技術力追い越し以上の意味があると診断する。ソウル大学の李廷東教授は「中国の技術力が上がり、市場シェアが高まる裏面で『中国式標準』が次第に『世界標準』になっていることに注目しなければならない」と話した。
代表的なのはCATLやBYDのような中国バッテリー企業が拡散させたリチウムリン酸鉄角型バッテリーだ。角型バッテリーは国内メーカーが主力とするポーチ型バッテリーより技術水準が一段階落ちるとして知られているが、中国がエネルギー効率を大幅に向上させ、今はフォルクスワーゲン・現代自動車・ベンツなどグローバル完成車企業がほとんど採択している。バッテリー業界の関係者は「原材料からバッテリー生産、電気自動車製造まで全過程で中国がグローバル影響力を拡大しようとしている」と述べた。
中国専門家である西江大学技術経営専門大学院のチョン・ユシン院長は「韓国が中国対比技術力で遅れている部門はあるが、応用技術分野の強みや先端新産業分野のテストマーケットとして競争力をよく生かして世界と連係した成長戦略を組まなければならない」と話した。
日本(88.4)が、米国・欧州・韓国・中国・日本の中でビリに位置している。これをなんとかせんとあかんと思うのだけれど…。
(無料メルマガ『キムチパワー』2022年7月27日号)
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