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なぜ岸田首相は参院選終了までコロナ感染拡大の予兆を“無視”したのか?

新規陽性者数が連日過去最多ペースで激増し続けている、新型コロナ感染症。7月第4週には世界で最も多い感染者を出した日本ですが、何がこのような状況を招いたのでしょうか。今回のメルマガ『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』では著者でジャーナリストの伊東森さんが、報じられている様々な情報を元にその背景を考察。さらに欧州での拡がりについても、各種報道を引きつつ紹介しています。

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新型コロナウイルス第7波が到来 なぜ再び感染が拡大しているのか 日本の状況 参院選まで放置? 世界の状況 感染者の半分を欧州が占める

新型コロナウイルス感染者が再び増加、第7波の様相を呈してきた。

今月中旬の16日、国内で新規に報告された感染者は11万人を突破、1日当たりの過去最多を更新する。これまでの最多の感染者は、第6波のピーク時の今年2月3日の10万4,000人だった。

感染者はその後に減少していったが、しかし6月下旬から再び増加傾向に転じる。そして今月に入ってから各地で急速に増加、ピークは見通せない状況が続く。

第6波と比べると重症者は低い水準にとどまってはいるものの、しかし今後、増加する懸念もある。事実、過去の流行の波でも、重症者は感染者の増加から遅れて増えていった。

増加した理由のひとつとして、オミクロン株の新たな派生型である「BA.5」に置き換わりが進んでいることが背景にあると思われる。

厚生労働省の専門家組織に報告された推計では、BA.5の感染の広がりやすさを示す「実効再生産数」は、これまでに流行したBA.2の約1.3~1.4倍という。

政府は15日の対策本部でワクチンの接種や検査、換気を呼びかける基本的な対処方針を決定。ただ、医療体制は維持できるとし、岸田首相は、

「新たな行動制限は現時点では考えていない。社会経済活動と感染拡大防止の両立を維持する。」(西日本新聞7月17日付朝刊)

と語る。

なぜ再び感染が拡大しているのか

感染が再び拡大している理由として、オミクロン株のBA.5の存在が挙げられる。

鳥取大学の景山誠二教授(医学部ウイルス学分野)は、BA.5には感染が広がりやすい「特徴がある」と指摘。

「今までのものよりは、ワクチンを付けた抗体をすり抜けて、ウイルスが細胞にくっ付いてしまう。今までは邪魔していたわけです、抗体を作って、ウイルスが細胞にくっ付くのを邪魔していたんですけれども、BA.5は邪魔している抗体をすり抜けてゴールまで行っちゃいます。抗体量が少ないと十分に対抗できないということですよね」景山誠二教授、(*1)

つまり、BA.5には、免疫をすり抜けて感染する、いわゆる「免疫逃避」が起きやすいという。

島根県では、今月12日に1,271人の新規感染者が確認され、衝撃を与えた。この数は、第6波までの最多である219人(今年4月22日)の実に6倍にまで上る。

BA.5の症状としては、

「デルタ株までの肺炎や味覚異常はあまり見られず、発熱、咳、鼻水、頭痛、咽頭痛、倦怠感などインフルエンザのような症状が多い。ただ、第6波(BA.1、2)と比べて、有病率がやや高い印象です」感染症対策室(*2)

であるという。

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日本の状況 感染拡大の予兆はあったのに 政府は参院選終了まで放置か?

ただ、第7派の予兆はあった。事実、地方では感染の拡大が、6月から始まっていた。

その典型例が島根県。6月28日に1日の新規感染者が過去最多の350人に達し、今月7月14日には3.3倍の1,600人にまで急増。

県の保健環境科学研究所の解析では、4月までゼロであったBA.5の割合が、7月1~5日までの検査分では、8割に達した。

丸山達也島根県知事は、今月7日の記者会見で、

「一番厳しい感染の上昇局面だ。島根県は全国に先駆けて、BA.5の急増県。フロントランナー」東京新聞7月15日付朝刊

と危機感を示す。

県は、4つの市で飲食時の人数を4人以下に、さらに認証店以外での利用は2時間までにするように要請。

それとともに、飲食店などを支援する特典付きチケットである「しまねプレミアムチケット飲食券」の利用期限を来年の1月末まで延ばすなど、対策を急いだ。

それでも政府の対策は鈍かった。このような「何もしない」対策の背景には、参院選対策と見る向きも。

政治ジャーナリストの泉宏氏は東京新聞(7月15日付)の取材に対し、

「岸田首相は、国民に行動制限への拒否感があるのを感じ取っている。選挙の前に国民に嫌われることはしたくない。だからウィズコロナで進めようと心に決め、行動制限もしない方針ありきでここまできた」東京新聞7月15日付朝刊

とする。つまり、参院選終了まで、コロナの「コ」の字も出したくなかったのだ。

世界の状況 欧州の新規感染者、世界の半分 しかし欧州でも検査が縮小傾実際にはそれ以上の数か?

一方、世界ではとくにヨーロッパでの感染の拡大が目立つ。

WHO(世界保健機関)が19日、欧州での新型コロナ拡大への対策を促す声明を発表した(*3)。

WHOは、過去1週間、ヨーロッパでの新型コロナの新規感染者の数が300万人にまで迫り、全世界における新規感染者のほぼ半分を占めたとする。また欧州では新規感染者が6週間前と比べ3倍まで増加、死亡者の数も毎週3,000人ずつ発生しているとした。

WHOのハンス・クルーゲ欧州地域事務局長は同日、声明で、

「今直ちに行動に出ない場合、秋や冬にさらに厳しい措置が必要な状況に直面するかもしれない」中央日報7月21日

とし、

「秋まで待って措置を取れば遅すぎる。急いで対処しなければならない」中央日報7月21日

と警告。

ただ、ヨーロッパはマスクの着用が目立たず、そして日本と同様、検査の縮小も目立つ。そのため、クルーゲ局長は

「欧州のほとんどの国々が新型コロナ検査を中止したり大きく減らしたりしているが、これは危険な死角地帯を作ること」中央日報7月21日

と指摘。

また、Twitterでマスクをつけた自身の写真とともに、

「マスク着用が義務ではないからといって禁止されたわけではない」中央日報7月21日

というコメントを書き込んだ。

(*1)「第7波なぜ急拡大? BA.5が感染力強い理由『免疫逃避』とは」BSS山陰放送 2022年7月13日

(*2)日刊ゲンダイDIGITAL「最大規模の感染爆発『コロナ第7波』の正体が徐々に…冬の第6波を夏に超え、死者激増の可能性」Yahoo!ニュース 2022年7月20日

(*3「『全世界感染者の半分』にも防疫を手放した欧州…WHO『秋がさらに問題』警告」)中央日報 2022年7月21日

(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』2022年7月24日号より一部抜粋・敬称略)

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image by: KenSoftTH / Shutterstock.com

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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