経済戦争を活発化させる中国
そして、それは中国も同様だ。近年、中国は関係が悪化する台湾やオーストラリアに対して経済戦争を仕掛け続けている。石破元防衛大臣などが台湾を訪問し、中台、日中関係がさらに冷え込むなか、中国は6月、台湾産の高級魚ハタの輸入を一方的に停止した。
中国側は、台湾から輸入されるハタから複数の禁止薬物が検出されたためと明らかにしたが、蔡英文政権の政策に苛立ちを強める中国側からの攻撃とみるべきだろう。そして、中国は同様の思惑で昨年3月、台湾産パイナップルなど果物3種を相次いで輸入停止した。
ウクライナ侵攻で、中国側もこれまで以上に軍事的オプションには慎重になっていると考えられることから、その分台湾への経済戦争を活発化させている。また、中国は同様に、オーストラリア産の牛肉やワインなど重要品目の輸入制限に踏み切った。中国とオーストラリアは、新疆ウイグルの人権問題や新型コロナウイルスの真相解明などを巡り、関係が急激に冷え込んでいる。
これも日本にとって対岸の火事ではない。台湾やオーストラリアに経済戦争を仕掛けるが、日本にはしないという保障はどこにもない。中国側も日本にとっての最大貿易相手が自分であることを承知済みであり、どの分野へ経済制裁を実行すれば日本にダメージが及ぶかを慎重に考えている。
台湾にとってのパイナップル、オーストラリアにとっての牛肉やワインはどれも主要輸出品であり、中国には両国を経済的に締め付ける狙いがあったはずだ。これを日本に応用すれば、半導体など重要物品で日本へ輸出規制などを仕掛け、日本経済を締め付けてくる恐れがまずは考えられる。
欧州や台湾、オーストラリアなどは既に中露からの経済戦争に直面している。日本もそれに対して対策を練っておく必要がある。
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