中島聡氏「ガチャは悪徳商法、結婚は現実世界への扉」世界的エンジニアが語る技術・仕事・人生の答え

DSC07040
 

Windows95を設計した日本人として知られる世界的エンジニア・中島聡氏のメルマガ『週刊 Life is beautiful』より、毎号大好評の読者Q&Aコーナーを再構成してご紹介します。仕事術からテクノロジー、はたまた結婚まで、中島氏の頭の中を覗いてみませんか。

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

この記事の著者・中島聡さんのメルマガ

初月無料で読む

世界的エンジニアの中島聡氏が「ビジネスから結婚生活まで」読者の疑問に全部お答えしますスペシャル

【読者からの質問】

中島さんはNTT研究所を経てマイクロソフトに転職され、その後UIEなどを起業されたかと思いますが、独立(起業)しようと思われたきっかけ、動機などをお聞かせいただけないでしょうか。

マイクロソフト時代もWindowsの開発などで十分実績を残され、そのままマイクロソフトに在籍されていても、さらにご活躍され、将来を約束されていたのではと思ってしまいます。(むしろ会社としては辞めてほしくなかったのでは?)

ずっと以前から、いつかは起業という想いをお持ちだったのか、マイクロソフトでずっと働くという選択肢はなかったのか、起業に際して、不安に思うことなどなかったのかなど、ぜひ、ご参考にさせていただきたく。

【中島氏の回答】

マイクロソフトを辞めて独立した一番の理由は、会社が大きくなりすぎて、ソフトウェア・エンジニアとして「全力で走ること(もの凄い勢いでプログラミンをすること)」が難しくなったことにあります。

同時に、会社の中での自分の地位があまりにも安定したものであったため、そのまま会社に残ると「エンジニアとしては不満足だけど、待遇だけはやたら良い」という、会社と私のどちらにとっても好ましくない状況に陥ることが目に見えていました。

私のように、少数精鋭で猛スピードでものづくりをしたいエンジニアにとっては、大会社は居心地が悪い、というのが私が至った結論で、その決断は今でも正しかったと思います。

 

【読者からの質問】

個人開発した Web サービスの集客に関して「どういった方向でやっていくべきか・もしくはやらないべきか」を悩んでいます。

Web サービスの主な集客方法としては、SNS・SEO 対策・広告(Web 広告・SNS広告)・コンテンツマーケティングが挙げられると思いますが、個人開発のサービスの場合どういった道筋で頑張っていけばよいのか悩んでいます。(Webや書籍に何冊で調べてみても、なかなかプロモーションのよい策が見えてきません…ただ現時点では、技術記事などのアウトプットを通して長い目でSNS 上でプレゼンスを獲得していくのがよいかと考えています。)

もしくは、開発者個人では頑張らず Web マーケティングが得意な人を探して、その人と協業するといった策を取るべきでしょうか?

【中島氏の回答】

個人開発サービスに限ったわけではありませんが、何よりも大切なことは、そのサービスが十分な価値を使う人に対して提供することです。なので、まず最初にすべきことは、少人数でもよいので、サービスを使ってもらい、そこに価値を見出してもらえることを確かめることです。マーケティングにお金や労力をかけるのは、その後で十分です。

特に個人サービスの場合、マーケティングにそれほど大きなコストをかけられるわけではないので、実際に使っているユーザーからの「口コミ」が何よりも大切で、そんな形のバイラル・マーケティングが自然に起こるような形を作ることに開発労力を割くべきだと私は思います。

市場によっては、「ある程度の数のユーザーがいないと価値が生まれない」ものもありますが、その手の市場は大資本の会社が圧倒的に有利なので、そこは個人が戦うべき市場ではないと思います。

 

【読者からの質問】

ウォルマートやコストコなど小売業界の未来の展望があれば知りたいです。

もう一つ質問があります、中島さんは将来この企業が上場したら株を買いたいと思うとこはありますか。

【中島氏の回答】

小売業界は私の専門ではないので、なんとも言えませんが、コストコに対するメンバーの信頼度は非常に高いものがあり(私もメンバーの一人です)、Amazon がいくら頑張っても、コストコから全てを奪うことは不可能だと思います。

ウォルマートに関しては、私自身は好きでもないし利用することはほとんどありませんが、それなりのターゲットセグメントは(コストコと同様に)しっかりと掴んでいると私は理解しています。

未上場の株で、是非とも株を欲しいと感じているのは、SpaceX、Sprite、OpenSea、Dyson の4社です。それぞれの魅力を説明していると長くなるので、ここでは割愛しますが、どこも非常に魅力的な会社です。

 

【読者からの質問】

私は、GameFiやパチンコ等のギャンブルビジネスにかなり否定的です。理由は、何の生産性もない業界を作り、搾取ビジネスをしているだけではないか?と感じるからです。もちろん、ビジネスとしてではなく娯楽として楽しみたいのであれば、否定はしません。

また、YouTube等で広告費を稼ぐビジネスモデルにも懐疑的です。結局は、テック企業や広告主が儲け、そこで稼ぐ日本人プレーヤーが増えれば増えるほど、日本の生産性は減って自分達で弱い国にしているのではないかと考えました。

仕事とは、誰かに価値を提供し、その対価をもらう。とてもシンプルなものだと思うのです。中島さんにとっての仕事はどのようなものか、教えて頂きたいと思いました。

【中島氏の回答】

私もGameFi ・ガチャ・パチンコには否定的です。ねずみ講やマルチ商法と同じ類の、楽して儲けたいと考える「人の弱さ」に付け込んだ悪徳商法だとすら思います。

広告ビジネスに関しては、それほど否定的ではありませんが、そんな会社にとっては、顧客は広告主であり、ユーザーではないという点が「ユーザー体験」の面でマイナスになると感じています。FacebookやGoogleが、いつまでたってもユーザー体験で Apple に追いつけないのは、そこに理由があります。他でも書きましたが、GPT-3(言語AI)のようなビジネスに足元を救われてしまう可能性すらあると思います。

私にとっての仕事は、プログラミングにしろメルマガにしろ、「世の中に価値を提供すること」「人々に喜んでもらうこと」に尽きます。より多くの人に私のソフトウェアを使ってもらうこと、メルマガを読んでもらうことが、私にとっての「生きがい」であり喜びです。

 

【読者からの質問】

もし中島さんがプログラミングスキルがない状態でUnreal Engineを使ってゲームを作ろうと思ったら、どのような学習をしてからUnreal Engineでゲームを作りますか?

僕はゲーム(シューティング系)を作りたいと強く思っているのですが、どうすれば成果物を作れるのか参考にしたいです。

【中島氏の回答】

プログラミングの経験なしに Unreal Engine でゲームを作るのは無理です。それでもどうしてもゲームを作りたいのであれば、今ならRobloxがオススメです。Unreal EngineやUnityと比べると、はるかに敷居は低いので、プログラミング経験のない人にはとても良い開発環境です。

 

【読者からの質問】

以前に中島さんは、「起業→VCから資金調達→上場や買収でエグジット、という回り道をせずに、開発→デプロイ→継続的な収入、というストレートな道が開けるのがWeb3だと考えていただいて良いと思います」と仰っていました。

この「継続的な収入」とは、例えばスマートコントラクト上にサービスの手数料として5%のETH(イーサリアム)が設計者のアドレスに振り込まれるようにコードを書いておくみたいなイメージで合っていますでしょうか?

【中島氏の回答】

はい、その通りです。NFTの二次流通における手数料が良い例で、その仕組みにより人気のあるNFTを作った開発者はアーティストには継続的な収入が入ります。

NounsDAO が採用している、「オークションで9個売れるたびに、1個のNFTを開発者に配布する」仕組みも、とてもよく出来ていると思います。今の相場だと、開発者一人当たり、年間5千万〜1億円相当のNFTが配布されている計算になります。

ちなみに、私が先日リリースした Pride Squiggle は無料ミントで配布した上に、二次流通における手数料はすべてチャリティに寄付する設計になっていますが、ミントのプロセスで20個に1個は開発者である私のWalletに配布される仕組みになっています。

Pride Squiggleの時価総額が最終的にどのくらいの規模になるかは分かりませんが、その5%が私に対する成功報酬、という設計です。

この記事の著者・中島聡さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 中島聡氏「ガチャは悪徳商法、結婚は現実世界への扉」世界的エンジニアが語る技術・仕事・人生の答え
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け