左右対立ではない。安倍元首相「国葬騒動」を引き起こした2つの問題点

 

もっと言えば、孤立とかメンタルの問題というのも、成熟社会の病理に衰退社会の下降が重なって重篤化しているわけです。政治にはその危機感を感じ取る能力がないし、期待もされていないというシステムとしての絶望もあるのかもしれません。

たぶん、多くの人が気づいているのだと思いますが、現在、岸田政権が支持率低下を恐れているのには理由があります。国政選挙は向こう3年はないので、安泰のはずでしたが、来年2023年4月には統一地方選があるわけです。このまま支持率が30%を割っていると、有権者は地方選挙では「簡単に浮気する」ので、自分等が惨敗する危険があります。

そうなると、党の地方組織はガタガタになる、その一方で無償ボランティアを供給していた某団体には頼れない、ということで国会議員を含めた全組織が浮足立ってしまうわけです。つまり、国政に関する選択肢があり、それを間違ったので下野するのではなく、他に選択肢はないのに不人気が極端になるということで、内部から崩壊してしまう危険があるのです。

そこで問題になるのが、政権の受け皿です。前世紀の宮沢政権崩壊、あるいは今世紀初頭の麻生政権崩壊の際には、曲がりなりにも受け皿がありました。ですが、今はもうありません。このメルマガの読者の方が鋭く指摘されていたように、外国勢力に浸透を許した自民党には「極端な浅慮」があったわけです。

ですが「高速道路無料化」をすれば消費者が喜ぶだろうと考え、一方でプロのトラックドライバーへの影響は全く考えなかったとか、旧民主党の「浅慮」については、もっと悲惨なレベルです。政権前期は必死になって原発輸出で「成長戦略」などと言いながら、震災の津波被害で全電源喪失事故が起きただけで、世論の風を読んで「原子力平和利用総撤退」を言う。普天間移設を言いながら辺野古反対にも乗っかって論理矛盾に気づかないなど、とにかく政権担当能力がないのが、現在の野党だと思います。

コロナ禍初期には「完全鎖国とサービス業一斉休業命令」で「ゼロコロナ」を実現し、「その代わり徹底的に金をバラまいて補償する」などと言っていたのが、立憲と共産でした。その後の「鎖国政策」はこれに引きずられて行ったという印象もあります。

とにかく、官僚も能力が細っており、自民党も全体を仕切れない、けれども野党にも任せられないし、そもそも反対のための野党という「昔の顔」がまたぞろ復権しているのですから目も当てられません。

そんな中で、様々な不信感と不安感が渦巻く延長で、例えば五輪反対が出てきたのと同じように、今回の国葬に対する大きな反応が出てきたのだと思います。韓国のろうそくデモとの酷似というのはそういった意味です。

国葬より静岡に対応すべきという声もあるようです。ですが、静岡にしても、浄水場の取水口が流木などで塞がれたのを一気に突破するのは、民間業者ではなく、自衛隊の工兵などの仕事だと思います。上水道はライフラインであり、その辺の迅速な判断が行かなかったというのは、県政の大きな問題だと思います。

そもそも、このメルマガで強く訴えていたように、線状降水帯の危険は気象庁の「公式な警報」を待たずしても、雨雲レーダーで時々刻々と変化する様子を見ていれば分かるはずでした。その意味で、県政は後手後手に回った、これは大きな問題だと思います。徹底検証が必要です。

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