アントニオ猪木氏の秘書「電事連から1億円」という“捨て身の告白”の闇

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10月1日、元プロレスラーで参議院議員を2期務めたアントニオ猪木氏が79歳で亡くなりました。故人を偲び、数々の偉業や豪快なエピソードなど“礼賛”が溢れるなか、猪木氏の元秘書が暴露した金にまつわる話をツイッターで紹介し物議を醸したのは、辛口評論家として知られる佐高信さんです。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』では、ツイートの元になった告白本から別の金絡みの逸話をピックアップ。簡単に大金が動く政界の非常識な感覚を呆れたように伝えています。

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「電事連から1億円」猪木の秘書、捨て身の告白

3日にツイッターで

「アントニオ猪木が亡くなって、メディアには礼賛記事が溢れているが、彼について思い出すのは、青森県知事選挙で原発推進候補を応援したことだ。最初に原発一時凍結派の候補から150万円で来てほしいと頼まれた猪木は行くつもりだったが、推進派のバックの電事連から1億円を提示されてそちらに行った」( @satakamakoto 午後5:26 · 2022年10月3日

と発信したら反響があった。

ネタ元は猪木の秘書だった佐藤久美子の『議員秘書、捨身の告白』(講談社)。1993年に出たこれが訴えられなかったから、私も前に『原発文化人50人斬り』(光文社知恵の森文庫)で紹介した。

改めて読むと、いろいろアブナイ話が書かれている。猪木のスポーツ平和党は例の佐川急便の丸抱えだった。自民党の別働隊だったのか、1987年の選挙の時には自民党の森喜朗が「選挙資金として自由に使ってくれ」と言って、桐の箱に入れた100万円の札束を10個持ってきたという。

スポーツ平和党からは元プロ野球選手の江本孟紀も当選して猪木と2名になる。自民党は民社党とスポーツ平和党の江本に院内会派を組ませて操るつもりだった。それを猪木が悪用することを思いつく。

公設秘書となっていた佐藤は猪木からこう言われた。「マスコミから会派のことを聞かれたら、『猪木は、江本を民社党と会派を一緒にするとは限らないと言っている』と伝えておいてくれないか。民社党のやつら、ビビるぞ」

その3年前の参院選直後、参院民社民は9人で、院内交渉団体の資格を得るには1議席足りなかった。この後、猪木は森から「民社党を助けてやってくれないか」と口説かれ、統一会派を組むことになった。

そんな経験があっての江本問題である。猪木のあげた微妙なアドバルーンにあわてて、民社党委員長の大内啓伍の秘書から連絡があった。お膳立てしたのは森である。

2人そろって大内の部屋を訪ねると、民社党と会派を組むことを条件に、猪木には1,000万円、江本には300万円が手渡された。この時、戻って来た猪木は鼻歌を歌い、スキップするような足取りで大変なご機嫌だったという。

幹事長の新間寿が「どんな話だった?」と聞いても「いや、別に」ととぼける。党が借金を抱えているのに猪木はすべて自分のフトコロに入れるつもりだったのである。ところが、江本が新間に連絡をし、50万円を差し出した。新間が猪木にそれを伝えると、さすがに猪木もバツが悪くなったのか、「実は」と白状し、渋々、400万円を党に入れたとか。

それにしても「自民党と会派を組むかも」という記事が出ただけで、1,300万円ものカネがひょいと動くのである。そのタカリの手口にも呆れるが、政界の常識からすれば、1,300万円なんて少なすぎるような気もする、と佐藤は告白している。

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