旧統一教会トップとの深い関係について、「記憶にない」との答弁を繰り返す山際大志郎経済再生担当大臣。本人の“予告”通り次々と新たな事実が明らかになり、更迭や辞任を求める声が高まった結果、ついに24日、山際大臣自ら「辞意」を表明しました。なぜ岸田首相は更迭をすぐ決断できずにいたのでしょうか。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』では、山際氏が甘利明前幹事長の側近であり、岸田首相誕生を後押しした麻生派に所属していることを指摘。麻生、甘利、岸田という世襲のボンボン議員たちは、利権維持を容易にしたい勢力が担ぐ“神輿”にすぎず、政治の劣化の最大原因であると批判しています。
この記事の著者・佐高信さんのメルマガ
ミコシは軽くてパーがいい 利権の維持のために世襲議員をかつぐ者たち
岸田文雄はなぜスパッと山際大志郎のクビを切れないか。それは山際が関係の深い統一教会に対して及び腰であることもあるが、何よりも山際が甘利明の側近であり、甘利と共に麻生(太郎)派に入っているからだ。
山際を切るのは甘利と麻生の了承を得なければならない。岸田は甘利の言うがままに山際の大臣再任を決めたし、麻生は岸田の最大の後盾である。
岸田が自民党の総裁になったのは、当時、幹事長として権勢を誇っていた二階俊博の留任を実質上ストップした作戦の成功によるものだった。党役員に任期制を導入する策を考えたのは、もちろん岸田ではなく、あるいは甘利だったかもしれない。
これによって流れは岸田に傾き、その諭功行賞で甘利は幹事長になった。しかし、衆議院の小選挙区で落選し、辞任せざるを得なくなる。
いまは亡き岸井成格は私との対談『保守の知恵』(毎日新聞社)で、安倍晋三の信頼度は菅義偉がナンバー1で、甘利がナンバー2だと言っていた。ただ、菅が「玄人受けする政治家」なのに対し、甘利は「腰の軽さを生かした御用聞き」だという。
当選回数も岸田より多い甘利は岸田を子分扱いし、「チーム甘利の一員だ」と言っていたこともある。とすれば、岸田は「御用聞きの御用聞き」ということになる。要するに安倍や麻生、そして甘利と同じ世襲議員で、現実知らずのボンボンなのである。
甘利はTTPの交渉の当事者だったが、大臣室で疑惑のカネを受け取るような甘利が、まともな交渉をしていたはずがないだろう。私はこの国の政治の劣化の最大原因は世襲の拡大だと思っている。岸田が息子を秘書にしたのも世襲を前提にしてのことであるのは間違いない。
世襲議員について「彼らには存在は許されても行動は許されていない」と喝破したのは田中秀征だった。
「ミコシは軽くてパーがいい」とヤユされるが、利権の維持のために議員をかつぐ者にとって議員が自分の判断で勝手に動き回っては困るのである。田中はその著『自民党解体論』で「彼らは、維持者としての使命を忠実に果たすために、何かしているふりをしながら、『何もしない』ことを厳しく要求される」と書き、「彼らが、選挙区や国会の廊下を足しげく動きまわるが、それは本質的に、新聞配達と同質の行動である」と続けている。
首相になる前だったが、ある所で私は岸田のスピーチを聞き、その迫力のなさに驚いたが、世襲でなければ議員にはなれなかっただろう。
宗教法人は公益性があるから認められてもいるのだが、その統一教会と自民党は手を切ると言っているのに、宗教法人としての解散は求めないというのは極めておかしい。つまりは世襲集団の自民党に公益性がないということである。
この記事の著者・佐高信さんのメルマガ
image by: やまぎわ大志郎Facebook