やってる感バレバレ。岸田首相「4万5千円軽減策」という印象操作

 

そして、このケースの世帯であれば、来年1月から9月まで毎月5,000円程度、計4万5,000円程度の負担軽減策が受けられると、岸田首相は述べたのです。つまり、日本で最多の単身世帯、夫婦だけで子どものいない世帯、ひとり親世帯、高齢者だけの世帯など、多くの世帯は、岸田首相が示したモデルケースよりも遥かに低い金額しか軽減されないのです。

今回の負担軽減策を具体的に説明すると、電気料金は、一般家庭は1キロワット時あたり7円、企業は1キロワット時あたり3.5円を国が補助するというもの。岸田首相がサンプルとした月300キロワット時の世帯では、現状で電気料金は基本料金などを加えた総額で約1万円になります。1キロワット時あたり7円の補助が受けられれば、7円×300=2,100円が減額されるので、約2割の負担軽減になります。これは、岸田首相の説明の通りです。

また、ガス料金については、都市ガスを1立方メートルあたり30円補助すると言うので、岸田首相がサンプルとした月30立方メートル使用する世帯なら、900円ほど減額されます。これで、電気とガスで計3,000円安くなりましたが、「月5,000円安くなるんじゃなかったの?」と思ったそこの奥さん、あとの2,000円は「ガソリン代の補助」なのです。国がガソリン元売り各社にバラ撒いている補助金はすでに3兆円を超えましたが、岸田首相は補助の期限を来年以降へと引き延ばしたのです。これが「標準世帯」の1世帯あたり約2,000円だと言うのです。

あまりにもツッコミどころが満載で、どの料理からお箸をつけようか迷ってしまいますが、上から順番に行くと、まずは電気料金。岸田首相は「月300キロワット時」というサンプルを方策の指針としましたが、日本で最多の単身世帯を始め、夫婦だけの世帯やひとり親世帯などで、こんなに電気を使う世帯などメッタにありませんよね。ちなみに、単身世帯の電気の使用量の平均は月150キロワット時なので、岸田首相が示したモデルケースの半分、約1,000円しか補助されません。

そして、ガス料金にしても、岸田首相が「月900円ほど減額」の根拠とした「月30立方メートル」という使用量は、電気と同じく「標準世帯」の平均値なのです。単身世帯の平均は月5平方メートル、2人世帯の平均は月10平方メートルなので、単身世帯は月150円、2人世帯は月300円しか補助されません。

さらには、これが驚きなのですが、岸田首相は「ガス料金についても電気料金と同等の措置を行なう」と言っておきながら、補助するのは都市ガスだけなのです。全国にはプロパンガスを利用している世帯も多いのに、都市ガス利用世帯だけを補助して、プロパンガス利用世帯のことは見て見ぬふりって、これ、憲法第14条が定める「法の下の平等」に違反していると思いませんか?

ちなみに、資源エネルギー庁の公式データによると、全国の都市ガスの需要は約2,900万世帯で全体の53%、プロパンガスの需要は約2,500万世帯で全体の44%です。都市ガスのほうが若干多いとは言え、44%を占めるプロパンガス世帯を丸ごと無視しておきながら、岸田首相は一体どの口で「国民の暮らしを守る」などと抜かしたのでしょうか?

さらには、岸田首相が「総合経済対策」を発表したその直後に、大手都市ガス4社が12月からガス料金を値上げすると発表したのです。東京ガスは289円、大阪ガスは337円、東邦ガスは295円、西部ガスは379円の値上げです。これだけ値上げされた翌月から、単身世帯は平均150円、2人世帯は平均300円を減額されても、ほとんど「焼け石に水」と言うか、補助額より値上げ額のほうが大きい世帯も出て来ます。

それから、月2,000円と試算されている「ガソリン代の補助」です。ガソリンは1リッターあたり30円の補助なので、月に67リッター以上、毎月1万1,000円以上のガソリン代を使っている人しか「月2,000円の補助」は受けられていません。あたしは原チャリしか持っていなくて、月に2回ほど給油して計8リッターほどなので、月240円しか補助されていません。そして、車やバイクを持っていない人は、当然、1円も補助されていません。

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