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劇場版スラムダンクが“大炎上”?往年のファンが「声優交代」以上に許せなかった理由が判明

声優が交代したことで大炎上している、大人気漫画「SLAM DUNK」(スラムダンク)の新作映画「THE FIRST SLAM DUNK」。しかし、炎上の「真の理由」は、そこでは無かったようだ。「キャンセル不能」の前売りチケットを販売した後にフルCG化を発表したり、今回の声優交代の発表など、長年のアニメ版ファンから総スカンをくらっている本作だが、一体何が一番問題なのだろうか。

ズルいプロモーション手法に批判も

「SLAM DUNK」は、1990年から約6年間にわたって『週刊少年ジャンプ』に連載された井上雄彦原作の人気漫画。1993年からはテレビアニメ化されたが、意外にも放送期間は2年間と短い。今回27年振りに原作者自身が自らメガホンをとり、アニメ化されるということで、アニメファンから期待がかかっていた。

27年を経っても「SLAM DUNK」という作品がファンの「見たい」を刺激するのは、漫画もアニメも、ストーリーが完結しないまま尻切れトンボで終わっていることが、その理由の1つだろう。

漫画版では、全国大会に出場した主人公・桜木花道所属の湘北高校が全国大会に出場。二回戦の山王工業の試合に勝利すると、あっさり次の試合で敗退し幕を閉じた。これは作者の強いこだわりで、「ダラダラ連載を続けるより、一番盛り上がったときに終了したい」という意向だったという。

一方、アニメの方は連載が終了した1996年、クライマックスの「山王戦」が描かれないまま放送終了している。アニメファンは「幻の山王戦」を見ることのないまま、「長いお預け」をくらっていたのだ。

27年ぶりのアニメ「SLAM DUNK」製作発表があると、往年のファンは「あの山王戦が見れるかも……」と期待したのも無理はない。その期待を煽るように、東映動画のYouTubeチャンネルでアニメ版の無料再放送がおこなわれた。ここでファンはてっきり、アニメの最終回からの続き「山王戦」が見られると勘違いしたはずだ。

前売り券が発売された後になって、11月に解禁になった予告にて、以前のアニメの絵柄とは程遠いフルCGであることが判明。さらに、テレビ版の声優が一新されていることも判明する。テレビアニメの続編を期待したファンは、冷や水を浴びせられた気持ちになったに違いない。ファンの中で、アニメのキャラクターと声優の声はガッチリと固定されており、これには違和感をおぼえずにはいられない。

百歩譲って、絵柄やキャストが変わるのは構わない。しかし、大問題なのは「続編が見られるかも、という期待をさせておいて、前売り券を売る」という姑息なプロモーション手段だ。この方法を、原作者であり監督である井上氏は知っていたのだろうか? たとえ山王戦が見られることになっても、声優交代とフルCG化を後出しするのはズルいと言わざるを得ない。

声優交代に「誰が見に行くの?」厳しい声も

今回の声優交代で特に問題になっているのが主人公の声だ。花道の声が草尾毅から木村昴に変更されており、「ドラえもん」のジャイアンや「呪術廻戦」の東堂葵など「既存キャラのイメージが強すぎて入りこめない」と批判の声が多くあがっている。しかも、SNSには今回の予告映像を、オリジナルのキャストの声に入れ替えた動画が広く拡散する始末だ。ネット上には「誰が見に行くの?」と、厳しい声があがっている。

今回の声優交代の炎上で、映画「THE FIRST SLAM DUNK」の公式サイトはコメントを発表。

「私たちは、スラムダンクを昔から愛してくださってる方も、はじめて見る方も、とにかく楽しんでもらいたい、という思いで制作を続けてきました」

としている。しかし、アニメが放送されていたのは27年以上前であり、当然、現在の10代、20代でその存在を知っている人は少ない。とすれば、わざわざ前売り券を買う人はリアルタイムで見ていた「昔から愛してくださってる」30代、40代であることは明白だ。

最初からフルDGの製作であることや、声優交代の情報を公開していれば、この大炎上は防げていたはずである。

炎上の一方、声優交代に「擁護派」も。その理由とは?

一方、この声優交代に憤る声を「単なる老害だ」と一刀両断する声も。

確かに、アニメファンには声優で見る映画を選ぶ人も多いため、人気声優をキャストに据えるのは観客動員の重要な要素だ。そもそもオリジナルを知らない若い世代は、キャラの声に先入観はない。登場人物は高校生なので、声に老いを感じるとイメージにも合わないのは当然だ。

今回の声優交代やフルCGでの製作は、井上監督の意向が強いといわれている。そもそもテレビアニメ版は原作をすぐ消化してしまうため、オリジナルエピソードも多く作られていた。作品に対してこだわりが強い井上氏が、そうしたアニメ製作の姿勢に不満を持って打ち切りになったという噂まである。再アニメ化に際して、テレビアニメのイメージを払拭するために、フルDGと声優一新を推し進めたのかもしれない。しかし、テレビアニメ版は井上氏の手を離れて、既に「ファンのもの」になってしまったのだろう。

スラムダンクは「第2のAKIRA」になるか?

ディズニーに憧れて自らプロダクションを立ち上げ、テレビアニメ第1号「鉄腕アトム」を作った手塚治虫氏は例外として、漫画家が自らの原作を監督し、成功した例は数少ない。

その中でも、大友克洋氏は漫画「AKIRA」を自ら監督して映画アニメ化し大成功している。その後、大友氏はアニメ製作に活動をシフト。大友氏の漫画は元々映像的であり、アニメ化に適していたのだろう。

「SLAM DUNK」だけでなく「リアル」「バカボンド」など井上氏の作品も非常に映像的で、わずか1分弱の予告だけで、その非凡な映像感覚に驚かされる。炎上しても映画館に足を運ぶのは、作品やそのダイナミックな絵に惚れた本当の井上雄彦ファンに違いない。いくら炎上しても、作品さえ良ければまわりは黙る。今回の作品が、炎を蹴散らす傑作であることを期待したい。

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image by: Quercus acuta, CC0, via Wikimedia Commons

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