あからさまな見返りも。カタールW杯で露呈したFIFAの腐敗体質

 

懸念される点 飲酒や同性愛 「現代の奴隷制」

中東初の大会は、新型コロナの規制も大幅に緩和され、期間中は全世界から120万人の来訪が見込まれている。

カタール政府は9月、大会期間中に酒類の購入に関する方針を発表。

通常、公共の場での飲酒は最高3,000カタール・リヤル(約12万円)の罰金または最高6カ月間の禁錮刑が科されるが、今大会は試合チケット保有者に限り、スタジアム内の指定された場所で、試合開始3時間前と試合後1時間に、ビール購入を可とした。

首都であるドーハに設置されるエリアでも、午後6時半から飲酒が可能。ただ、在カタール日本大使館は、

「トラブルになれば身柄が拘束される可能性もある」

と警告する。

同性愛も違法。今年公開された『バズ・ライトイヤー』が、キャラクターの同性愛描写を理由に上映が禁じられた。しかしロイター通信によると、大会最高責任者は

「国の文化を尊重すれば誰もが歓迎される」

と言及。虹色の旗を掲げることも可能で、同性愛のファンが処罰されることはないとした。

他方、カタールの労働環境は、「現代の奴隷制」にたとえられてきた。開催国に選ばれた2010年以降、カタールでは南アジア出身の出稼ぎ労働者6,500人が死亡したとも。

専門家はこれらの死者について、多くが大会のための建設工事により亡くなった可能性が高いと指摘する。

物議も醸した招致 オリンピックと同様、腐敗するFIFA

そもそも、カタールの招致は物議も醸した。たとえばフランスがカタールへの支持票を投じて間もなく、カタールのスポーツ持株会社が、パリ・サンジェルマンFCを買収。

同じころ、別のカタール企業が、フランスのエネルギー・廃棄物大手の株の一部を取得(*2)。

あるいは、カタールの政府系投資ファンドと関係する企業は、欧州サッカー連盟(UEFA)の前の会長ミシェル・プラティニ氏の息子を雇用するなど、露骨な縁故主義が見え隠れする。

このような背景に対し、代表チームも反応。欧州予選の初戦で、ドイツ代表とノルウェー代表は、「HUMAN RIGHTS(人権)」と書かれたシャツを着用した。

結局のところ、私たちはFIFAもオリンピックと同様、“腐敗”だらけの組織であると再確認し、それが生み出した「サッカー」という産物を目撃させられるだけだ。

2015年5月、スイスの高級ホテルに警察が乗り込み、FIFAの幹部が一斉に逮捕されたことは、もはや風化している。

FIFAの力の源泉となっているのが、オリンピックと同様の放映権。とすると、もはや日本のテレビ局も“共犯者”だ。

引用・参考文献

(*1)井田仁康「『カタールってどんな国?』2分で学ぶ国際社会」DIAMOND online 2022年5月31日、

(*2)ロジャー・ベネット「カタールW杯、その実態に非難の声を上げよう」CNN 2022年11月4日

(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』2022年11月12日号より一部抜粋・文中一部敬称略)

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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