中国や北朝鮮と同レベルの人権感覚。日本人の異常な「死刑好き」

 

死刑 “法相命令” 実際は執行数日前

東京新聞は、死刑執行に関する文書を法務省に情報公開請求している(*6)。対象となったのは、東京・秋葉原無差別殺傷事件の加藤智大死刑囚。

それによると、死刑の執行は今年の7月26日だったが、しかし1週間前の19日に法務省の刑事局が起案し、当時の古川禎久法相による執行命令は7月22日付だった(*7)。

葉梨氏は、

「法務大臣というものは朝、死刑のはんこを押し、昼のニュースのトップになるのはそういう時だけだという地味な役職だ」

と発言していたが、実際にはお法務大臣は死刑執行の数日前に命令を出すのが慣例だ。

東京新聞の情報請求により開示された文書は、法相名の「執行命令書」と、法相と副大臣、法務省幹部のサインや押印がある「死刑事件審査結果(執行相当)」と法務省内の決済文書、執行経過などが書かれた「死刑執行報告書」など(*8)。

そもそも、死刑囚は判決の確定後、外部とのやりとりを厳しく制限される。

そして、いつ来るか分からない死の恐怖と向き合い、結果、直前に執行を告げられる。政府は、死刑囚の心情の安定を保つためとして執行を早くに伝えず、厳粛な空気を強調。

しかし今回の葉梨氏の発言は、その説明を揺るがしかねない。

なぜこれほどまでに日本人は死刑が好きなのか 日本の人権は中国や北朝鮮、イランと同レベル

世界的には、死刑廃止はもはや当たり前だ。国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」によると、2021年現在、死刑廃止国は108カ国。また10年以上死刑の執行がない国も含めると、144カ国にのぼる。

一方の死刑存続・執行国は日本や中国、北朝鮮、イランなど55カ国。先進38カ国が加盟するOECD(経済開発協力機構)の中では、日本とアメリカだけ。

そのアメリカでもバイデン大統領が死刑の廃止を公約に掲げ、2021年7月には連邦レベルにおける執行が一時停止(*9)。

それにもかかわらず、日本人の“死刑好き”は相変わらず。2019年の内閣府による世論調査では「死刑もやむを得ない」が80.8%で「廃止すべき」の9%を大きく上回る。

その理由を、2018年に設立された超党派による議員連盟「日本の死刑制度の今後を考える議員の会」の会長である自民党の平沢勝栄衆院議員は、東京新聞(2022年10月10日)の取材に対し、

「国民は執行されたことしか知らない。執行までの間がどうなっているのかなどの情報を提供し、議論する必要がある」

とした。

「放送法第3条第4項」には、

「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」

との記載がある。

引用・参考文献

(*1)読売新聞「葉梨法相を更迭」2022年11月12日付朝刊

(*2)読売新聞「閣僚交代また後手」2022年11月12日

(*3)読売新聞「閣僚交代また後手」

(*4)東京新聞「こちら特報部」2022年11月11日付朝刊

(*5)東京新聞

(*6)小嶋麻友美「秋葉原殺傷 加藤元死刑囚 法相命令 執行4日前」東京新聞、2022年11月12日付朝刊

(*7)小嶋麻友美、2022年11月12日

(*8)小嶋麻友美、2022年11月12日

(*9)「108カ国が廃止した死刑をなぜ日本は続けるのか? 『世界死刑廃止デー』に刑罰の本質から考える」東京新聞 2022年10月10日

(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』2022年11月19日号より一部抜粋・文中一部敬称略)

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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