激怒のアメリカ。停戦探る米露会談にウクライナが呼ばれない理由

 

プーチン大統領とロシアの孤立が高まっていると思われますが、これはまた一度は弱まった“ロシアによる核兵器使用の可能性”が高まるきっかけを作ったように思われます。

12月初旬にまだ親密な同盟国として残るベラルーシがロシア側について参戦するのではないかと噂されていますが、その効果はあまり期待できないとされ、同じように戦争の対応(対ウクライナ攻撃)のレベルを上げるのであれば、より簡単で通常兵器使用の延長戦上の措置として戦術核兵器の使用に気持ちが傾くのではないかと考えます。

そのカギを握るのが【フィンランド・スウェーデンのNATO加盟の進捗度合い】と【ロシア軍による支配地域および併合地域からの相次ぐ撤退の意味すること】です。

フィンランドとスウェーデンに至っては、これまでは中立的な立場ゆえに、核兵器の保有および配備については考慮されてきませんでしたが、今、隣国ロシアからの脅威が実際にも心理的にも増す中、NATO加盟申請と相まって、核配備への心理的なハードルがかなり下がったように思われます。

隣国にNATOの核が配備されることは、確実にロシアの国家安全保障上の脅威として認識されることになり、ロシアのレッドラインを超える恐れがあります。超えた場合、アメリカとの間で始められている水面下のエンドゲーム協議も停止するでしょうし、ロシアによる対欧州核の脅威も高まる恐れがあります。

そしてこれはまた新たな核兵器の拡散も意味することになります。スウェーデンとフィンランドですので、核の管理はしっかりと行われるものと信じますが、確実にロシアを刺激することに繋がり、その結果としての核の脅威の増大に導かれる可能性が高まります。核をめぐるユーラシア大陸の緊張は高まっていると言えます。

私が非常に不気味に感じているのが【Mr.アルマゲドンの方針で進められているとされるロシア軍による支配地域からの相次ぐ撤退が意味するもの】です。

繰り返しになってしまいますが、彼がシリアのアサド政権と組んで反政府勢力の撲滅に従事した際、実際に支配地域から一旦ロシア軍を退かせた後、当該地域に化学兵器を使用したという情報があり、同様に核兵器か化学兵器をウクライナに用いるのではないかと懸念しています。

“ロシアの核兵器”について、少しポジティブな動きがあったとすれば、アジアでの首脳会談ウィーク中(G20、APEC、ASEAN+3)、中国の習近平国家主席に繰り返し【ロシアによる核使用を支持しない】という言質が取れたことでしょう。

もし本気でかつプーチン大統領にプレッシャーをかけることが出来るのであれば、戦争のエスカレーションに楔を打ち込むきっかけになります。

しかし、“核兵器の使用は支持しない”としつつも、もし欧米諸国が台湾情勢に土足で踏み込んでくるようなことを継続する場合、台湾という宿願と南シナ海における影響エリアの拡大を目指す姿勢という“国内マター”を邪魔する企てと特徴づけて、台湾情勢に土足で踏み込んでくる各国に対して使用することを排除していませんので、核の脅威がアジアにも及んできていると言えるでしょう。

そのような動きを受けて、アメリカとその仲間たちは中国包囲網の強化を再始動させています。

今週に入って行われたASEAN拡大国防相会合では、中国の防衛大臣も出席していましたが、ロシアによる核兵器使用の可能性の提示を非難する半面、中国による核の使用可能性や領土拡大への野心が見え隠れした中、各国から中国による台湾と南シナ海の支配と強引な行動に対する懸念が表明されましたが、実際の対応では牙が抜かれた内容になっていたと感じます。それは中国に対する恐怖心の半面、隣国中国が地域各国に及ぼす経済的な恩恵の確保というデリケートなバランスが重視された結果だと考えます。

これによって、各国の対ロ制裁の抜け道のごとく、中国に対する包囲網にも強弱が生まれ、そこに付け入るスキを与えることになるのではないかと懸念しています。

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