激怒のアメリカ。停戦探る米露会談にウクライナが呼ばれない理由

 

あまり米国をはじめとする国々を今、刺激したくないと思ったのか、または3期目を確実にした余裕からなのか、アジアにおける首脳会談ウィークをはしごし、アメリカや日本と久々の首脳会談を受け、非常に珍しくにこやかな表情をしてみせたのは、習近平体制による対外的、そして対国内勢力に向けたアピールだと考えています。

対外的には融和をイメージさせつつも、実際には一歩も退いていない姿勢を誇示し、【台湾や南シナ海における中国の“国内”利害に手出し・口出しした場合は徹底的に対処する】という脅しをかけています。

対国内については、これまでアメリカとの対立を高めて不可逆的にしたのではないかとの非難が向けられていますが、緊張緩和に努めつつも、中国の核心的利益の確保のためには一歩も退かない姿勢を示したと思われます。

これでまた台湾はもちろん、南シナ海沿岸諸国との対立と緊張が再度激化することになり、インド太平洋地域はまた大きな安全保障上の危機に直面することとなります。

ロシアによるウクライナ侵攻と核兵器使用の可能性が消えないことで生まれる広域ユーラシア大陸(欧州からウラル山脈西に至るエリア)での大きな安全保障上の懸念に加え、中国による勢力拡大への野望と台湾併合に向けた覚悟の再確認によって広域アジア(北東アジアから南アジアに至るエリア)にも緊張が生まれることで、国際情勢をめぐる状況はとても緊迫したものになると思われます。

それは同時にすでに世界各国を苦しめるエネルギーと食糧供給の危機をより深刻化させることとなると思われます。

特にウクライナでの戦争は、世界の穀倉庫とも位置付けられるウクライナ国内の穀物(小麦粉など)の作付けが出来ないことによる危機を本格化させることになりますし、まだロシアへの依存から脱却できないエネルギー供給でも、決定的なカードをロシアに握られ、協力国によって開けられる制裁の穴が拡大することで、エネルギー価格は高騰し、持てる者がさらに富む構図が固定化することになります。

エネルギー危機、食糧危機、コモディティの供給危機が2023年に本格化すると恐れられる中、それらの資源を今、ごっそりと買いあさっているのが欧米諸国に代表される“先進国”と中国です。

日本がこの買いあさりグループに入っているかは分かりませんが、この買いあさり行動により、世界における持つものと持たざる者の格差がまた拡大することになり、2023年はglobal unrestが起こるかもしれません。

それが戦争という形式をとるのか。予想だにしない国が核使用に走る暴挙に出るような事態になるのか?完全なる分断の下、持たざる者たちが徒党して持つものを襲うような恐ろしい事態になるのか。

なかなか予想ができませんが、何とか2022年は持ちこたえても、欧州各国の2023年の冬は大変厳しいものになるでしょうし、南アジア、アフリカ諸国、ラテンアメリカ諸国などは非常に厳しい生存のための戦いに明け暮れることになるかもしれません。

ウクライナでの戦争が長期化の様相を強め、アジアにおける中国とその他の対峙が激化する中、2023年に私たちが迎える国際情勢は、非常に予測が難しく、かつ改善の道が見えづらいものになりそうな気がします。

さてどうそれを防ぐか。またいろいろと知恵を絞る必要がありそうです。

以上、国際情勢の裏側でした。

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