激怒のアメリカ。停戦探る米露会談にウクライナが呼ばれない理由

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世界が懸念するロシアの核兵器使用ですが、ここに来てその可能性がさらに高まりを見せているようです。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、「非常に不気味に感じる」という、核使用に繋がりかねないロシア軍のとある動きを紹介。さらに核の脅威は欧州圏にとどまらず、すでにアジアにも及んでいるという事実を併せて記しています。

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複雑化を極める国際情勢:包囲網が生み出す緊張と分断

「ロシアをテロ支援国家指定する」

そう欧州議会が発表したのは11月23日だったかと思いますが、この“テロ支援国家指定”の宣言は、また新たな緊張をユーラシア大陸に生み、また疑問を生む対応と受け取られました。

「ロシアをテロ支援国家指定することで、ロシア包囲網を作り、対ロシア制裁を強化するのだ」

ブリュッセルの友人たちはそう説明してくれましたが、この対応は大西洋の対岸(アメリカ)ではあまり賢明な策だとは捉えられていないようです。

どの口が言うんだと正直反応したくなりますが、「実際にどの行為を指して、テロ支援国家指定するのだろうか」という疑問があるようです。

そのきっかけは恐らく、今週に入って行われたロシアによる攻撃によってウクライナ全土がついに停電することになり、それはまた、これから厳しい冬を迎えるウクライナの生命線とも言えるエネルギーインフラを破壊して凍えさせるという“狙い”が見られ、欧州各国がその非人道的行為に対して非難を強めると同時に、恐らく“明日は我が身”という恐怖感も背景にあるようです。

英国(EUではないですが)ではインフレーションに歯止めが効かず、エネルギー価格も、食糧価格も、そして生活必需品の価格も供給も大きな影響を受けており、戦争の長期化は自国経済の破滅的な影響に繋がり、英国民の生命の危機が訪れるとの恐れがあるようです。

程度こそバラツキがありますが、フランスでもドイツでも、オランダやベルギーでも、そして北欧諸国でも、スペインやイタリア、ポルトガル、そしてギリシャなどの南欧諸国でも、じわりじわりと真の危機が迫っているとの認識で一致しており、いち早くロシアを止めないといけないとの思いがあるようです。

一説にはこれまでスカスカだった対ロ制裁の網の穴を埋めることを狙っているとのことですが、その効果のほどは未知数と言われています。エネルギー資源を握るロシアと欧州各国の我慢比べと思われますが、問題は今回のテロ支援国家指定をあまりアメリカが前向きに支持していないことです。

ウクライナでの戦争の長期化は、アメリカやトルコの軍需産業を潤す効果が期待できますが、それ以上に国民への経済的に負の影響の大きさを懸念し、戦争の終結のために水面下でロシアと協議を続けていますが、その最中、話し合いの雰囲気を潰しかねない宣言が出されアメリカ政府は困惑しているとのことです。

「かつての古き賢明な欧州はどこにいってしまったのか?」

バイデン政権の外交・安全保障担当の補佐官がふと呟いた言葉ですが、今回のテロ支援国家指定は、プーチン大統領やロシアのハードコア層の対話への機運を潰しかねず、一層、ポジションを固くさせるのではないかと懸念され、欧米の結束に緩みが出るのではないかと感じているそうです。

ロシアとしては当然のことながら、欧州各国に対して敵対的な心理を高めることになるでしょうから、ウクライナのエネルギーインフラを破壊して凍えさせるという企ては、恐らく欧州各国に対しても仕掛けられ、ロシアとの我慢比べを行う欧州の窮状にアメリカが引きずり込まれたくないとの懸念が見え隠れします。

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