安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに、世論の注目を集めている「旧統一教会」問題。日本の政界や法曹界が、教団の教義を実践させるためという理由で汚染され、私たちの想像をはるかに超えたところにまで浸透するなど、日常を脅かす存在になっています。この統一教会問題について30年以上にわたって取材・追及を続けているメルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』発行者でジャーナリストの有田芳生さんと、かつて旧統一教会の信者でメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』発行者でもあるジャーナリストの多田文明さんの対談が、まぐまぐ!LIVEで配信されました。今回のクロストークの模様をテキストにて特別に公開いたします。 (この対談をYouTubeで見る | Voicyで聴く)
● 有田芳生×多田文明 Vol.1
● 有田芳生×多田文明 Vol.2
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有田芳生×多田文明 旧統一教会問題追及の急先鋒2人が、テレビが伝えない教団問題を斬る!
内田まさみ(以下、内田):今回のテーマは「旧統一教会問題追及は魔女狩りではない。元信者・ジャーナリスト視点で斬る、二世信者、霊感商法、高額献金問題と解散命令」という非常に濃い内容でございます。本当に今、政界を揺るがすような問題になってきた、この旧統一教会問題を、有田さんはどう捉えていますか。
有田芳生(以下、有田):安倍さんが7月8日に山上徹也容疑者に銃撃されていなければ、日本の政治だけではなくて、日本社会に旧統一教会が、あえて統一教会って言わせていただきますけれども、これだけ浸透していたことは分からなかった。国会議員や地方議員、地方政界との関わりが深かったっていうのも、びっくりなんだけれども、実はもっともっと我々の身近な世界にも、統一教会ってのはもう何十年も前から、浸透しているんです。
内田:私たちが気づいていないほど、身近に存在していたんですか?
有田:商品や飲み物とかね。あるいは、練馬では塾も経営してるんです。
内田:塾ですか?そうすると、子どもにも身近になっている。
有田:もちろん統一教会の教えを塾で教えるわけではないんだけれども、住所とか名前を知ることによって近づいてくる。練馬でも東京の板橋でもそう。
全国各地で「街をきれいにしましょう。一緒に町の掃除をしましょうよ」って言ったら、「いいですね」って言う人多いでしょ。それが気が付いたら統一教会だったとか…だから掃除すること自体は良いんだけども、そこで名前と住所を知られることによって、だんだん近づいてくるっていうのが彼らのやり方ですよね。
多田文明(多田):やっぱり上手いですよね。私も社会福祉協議会など、色んなところに話を聞きますが、やっぱり「募金しますよ」って(相手から)言われたら、皆さんは「善意なので受け取らざるを得ない」って言うんです。「どうやって拒否したらいいか分からない、その基準が分からない」って言うので「色々こういうふうにして(教団は)お金を集めているんですよ」と拒否する理由を言ったら「そうなのか」と。だから、旧統一教会、私もこれからは統一教会と言いますけど、常に善意を盾にしてやってくるので、みんな拒否できない。ここがポイントです。
有田:私は講演が最近多くて、全国各地、北海道から沖縄まで行ってお話をするんだけれども、統一教会って、今テレビや新聞でやっているのは政治家との関わりとか、あるいは地方議員との関わりっていうのは、よく出ていますけれども、でもそんなもんじゃないんですよ。もう身近にあるんですよと。ある商品を出して「これ、皆さん飲んだことあるでしょう」って言うと、ざわざわざわってするんです。
内田:それぐらいもうみんなが知っている商品なんですか。
有田:もちろん。全国どこのコンビニに行ってもあります。それを右のポケットから出して「それだけじゃありません」。左のポケットからまた出して「これ皆さん飲んだことあるでしょう」と言うと、ざわざわざわってするんです。だけど、それだけではなくて、もっと怖い側面もあって、それは後で多田さんと話をしたいと思うんですけれども、例えば、今、日本からアメリカに一番多くハマチを輸出している会社は、統一教会系企業のものなんです。
内田:水産関連が多いなんて話は、テレビ番組でも見たような記憶がありますけど。
有田:僕は練馬に住んでいて、一心天助っていう一つの心の天助「かわいいかわいい魚屋さん」という音楽を流しながら魚を自動車で移動販売するのを、団地とか住宅街とかでよく見かけたんです。それを東京の講演で話すとざわざわして、「あー」と皆、顔を見合わせるんです。それを大阪でも話したら、大阪でもざわざわ。だから、もう全国でやっているんです。この間も広島でも言ったら、左側にいた女性たちは顔を見合わせていたりした。魚屋さんもやっていたんです。
内田:飲み物もやって、魚屋さんもやって、塾もやって。
有田:英会話教室もやっているし。だから、政治っていうと、ちょっと遠い世界に見えるけども、身近なところにある。多田さんは信者の時に何かやってなかったの?
多田:私は教育担当で、そういったところで教育した人を外に輩出するっていう立場だったので、外の世界まではなかなか見えなくて。有田さんが、ずっと旧統一教会問題をやってきてくださったので、統一教会を辞めてから、その情報に接して、ああそうだったんだと初めて気づきました。中にいると情報統制されているので、必要な情報しかやっぱり教えられなくて。だいたい伝道と献金の話ばかりなので、有田さんの話は、非常に参考になりました。当然、中にいたときは、有田さんは、もうサタン中のサタン。
有田:喜ばないで(笑)。
多田:いやいや。辞めてから会った時に、どこがサタンなんだって。全然サタンでもなんでもないじゃないですか。カラオケで小指を立てていたら指摘してくれるぐらいの方ですからね。統一教会の中では有田さんがサタンだって言うんだけど、有田さんが何を言ったか知らないんです。
内田:知らされてないんですね。
多田:絶対言わないんです。内容を見ちゃいけないし、サタンの物には触れちゃいけないんだけど、上の人がサタンだって言うから、有田さんはサタンの一派としか思っていないんです。だから、内容を知らないんです。
有田氏を名誉毀損で訴えた統一教会の「暴力性」
有田:この間も統一教会が僕を名誉毀損で訴えたんだけれども、その記者会見を見ていると、合同結婚式に参加した信者の弁護士で福本っていう人がいて、その横にいた統一教会の幹部が、僕のことを「有田は」って言ったんだよね。
内田:呼び捨てですか?
有田:呼び捨てですよ。だから、社会性が無いんです。いい大人が本当に恥ずかしいっていうか。昔の話ですが、渋谷の地下鉄から階段を上がっていこうとしたら、向こうから来た背の低い男が、僕の肩を思いっきり殴りつけたんです。今じゃ無いですよ。
多田:昔ですね。
有田:もう思いっきり殴りつけて、「俺の顔を覚えとけよ!」って言われたんだけど、統一教会の本部は渋谷区の松濤にあるので、そういう人達だなと思った。その怖い話はまた後で。
内田:とっておきのものはね。
有田:統一教会の信者は、たいてい経済活動をやらされるんです。珍味売りとか、ハンカチ売りとか、魚屋さんとか。多田さんは経済活動はやらなかった?昔。
多田:私は教育部門で伝道と講師をやっていましたけど、その中の青年支部っていうところだったので、当然、珍味もやりました。あと、一番やったのが、偽ボランティア。
内田:「偽」が付くんですか?
多田:偽なんです。
有田:やっている時は本物なんだけど、カンパはいかないっていう。
多田:「しんぜん会」っていう団体があって、この団体に所属しているというメンバーカードがあるんですけど、それを持って一軒一軒家を訪問します。「今、車椅子を寄贈するためにボランティアで回ってます」と言って、ハンカチとか靴下を売ってお金を集めて、なかには募金と聞いた人が、これまで貯めていた貯金箱を渡してくれることもあるのですが、それは必ずもらってくるようにと言われていました。「ホーム」っていう住んでいるところに帰って来たら、集めたお金を上の人に全部あげて。まだ入りたてだった時「このお金はどうするんですか?」って聞いたら、「これは家賃か献金に全部回る」と。車椅子なんかには1円も回らないという現実を、そこで初めて知りました。
内田:それはやっぱり詐欺になるんですか?
有田:正確には詐欺でしょうね。だからインチキカンパって多田さんは言ったんだけど。昔はキャラバン部隊っていうのがあって、車を改造して6~7人が車の中で寝泊まりして、朝4時半とかに起きて、公園で顔を洗ってお祈りして、一日のノルマは2万円だ、3万円だっていうのが出されて。それで一軒一軒ピンポンして、「ハンカチどうですか?靴下どうですか?」と回る。ノルマが達成できないと深夜まで活動する。
有田芳生氏の家に来た信者が「訪問販売」で浴びせた言葉
有田:僕のところにも来たのよ。アパートに住んでいる時にピンポンって来て。開けたら若い女の人一人だったんです。「会社が潰れて今大変で、3枚1000円でハンカチを売って歩いているんです」と言われました。僕はもう統一教会を取材していたので、統一教会が来たなと思いました。そしたら、その女性が「どんなお仕事されているんですか?」と聞くわけ。「出版関係の」って言ったら、その女性が「良いお顔されていますね。芸術関係のお仕事ですか?」みたいなこと言うわけ。うわあ、これは統一教会の「讃美のシャワー」だ。相手を褒めて褒めて褒めあげる手法だと思いましたね。でも僕、買いました。ハンカチ。
多田:優しい。
内田:買ったんですね。
有田:1000円で。
多田:買ってもらわないとノルマを達成できなくて、帰った時に怒られるんです。「なんだー!これはー!」って。必ず出発前に「1万円以上、2万円以上は必ずやります」って言っているから。
内田:それで成績を上げたらお給料貰えるんですか?
多田:貰えません。成績を上げたら、文鮮明教祖とか神様のために自分が精誠(せいせい)を尽くしたっていうことで、いわゆる天国に入るための条件を積んだとでも言うんですかね。そういう感覚です。
有田:珍味の話が今あったけど、珍味っていうと、例えば昆布とかホタテを売って歩くんです。ノルマ達成ができなかったら、夜も飲食街に行く。統一教会の中では、飲食街のことを「B街」と言っていて、これはバーの“B”の意味ですね。酔っぱらいがいるドアを開けて、いきなり若い女性が入ってきて「りんごの歌」を「昆布の歌」に替え歌にして歌ったり、踊り出したりしたら、それは統一教会だよね。
多田:そうです。実績が出ないとB街。私の場合は何かの修練会でやらされたりとか。あと、どこかのB街に行ってお茶なんかも売りましたね。
有田:そこでカラオケ上手くなったんじゃないの(笑)。
多田:いやいやいや(笑)。
内田:私もそうなのかなって今思いました。
多田:カラオケは昔から上手いんじゃないかな(笑)。統一教会によって封印されてたのかもしれないです。統一教会って、カラオケもやっちゃダメなんです。この世の歌なので歌っちゃいけないので、カラオケは基本的には行っちゃいけないんだけど、何回か、霊の親って言って、紹介者の上の人に連れていかれました。
有田:霊の親って言うのは簡単に言うと上司。
内田:上司をそういうふうに呼ぶんですね。
多田:私を伝道して引き入れた人です。上の人が良いって言えば行けるんです。
内田:お許しが出ないとダメ。
多田:そうなんです。許しがあった時に、一緒に1~2回やりました。東京では絶対カラオケはダメなんですけど、私は仙台教会に戻ったんですが、あそこはカラオケしていいんです。びっくり、この地域差。たまたま仙台教会の人たちと一緒に東京に来る機会があったんですが、仙台教会の人はカラオケの話をするんです。そしたら東京にいる人たちは「歌っていいの!?」っていう感じで、すごい顔がこわばっていて。地域差も結構ある。
有田:統一教会に入って10年で辞める方、15年で辞める方がいるとしたら、10年間統一教会に入って辞めた人は、自分が統一教会だった10年間の流行歌は知らないんです。知っちゃいけないって。
内田:世間からすっかり切り離されたみたいな感じなんですね。
有田:例えば、10年で脱会してカラオケに行くと、10年前の歌を歌う。知らないもんね。
内田:浦島太郎みたいなね。
多田:確か僕が歌ったのは、『シクラメンの香り』じゃないですかね。おっしゃる通り間が抜けているので、昔の歌じゃないと歌えないんです。ちょうど私の場合は1987年から96年ぐらいですから、その間の歌はすっぽり抜けているんです。その後から森高千里を一生懸命覚えたっていう記憶がありますけどね。
内田:ただ多田さんの場合は、二世信者とかではないわけですよね。なんでそこまで世の中から切り離されて、色んな制限を受けるまで信じられたのでしょうか。そこが私にとってすごく不思議なんです。
Vol.2 「我が子が統一教会に勧誘されている」危険な兆候とは?「親に相談せぬ子は全員入会」元信者の本音 につづく
有田芳生×多田文明 特別対談アーカイヴ
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