今回のデモは、「白紙革命」とも呼ばれています。デモ参加者が白い紙を掲げて抗議の意を示したからですが、「『白紙』には、2つの意味があるという。1つは、政府批判の文言を掲げないことで、検閲や逮捕の対象になるのを避ける作戦。そしてもう1つは、そのことから『白紙』自体が言論の自由がないことの象徴となっているという。デモに参加した人は『白紙は、私たちが言いたいが言うことができないすべてを表している』と、話しているという」
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それに呼応した東京の中国人たちは、新宿で白紙を持って「習近平辞めろ!」と叫んでいました。
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この波は、あっという間に世界中の中国人に広がりました。アメリカや台湾、ドイツなどでも白紙革命を支持し、中国政府を非難するデモが行われました。
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じつは、当初は台湾などでは、このデモに対して冷ややかな見方をする人も少なくありませんでした。というのも、「大陸の中国人は香港で自由を求める人々の声を黙殺、または中国政府の弾圧を支持していたくせに」という思いもあったからです。
ただし、中国国内で厳しい言論統制が行われている現状、中国人が声を上げられなかったのも仕方ない部分もあるのかもしれません。台湾では改めて白紙革命を支持する動きが強まっています。
今回のデモの動きで異例なのは、浙江省政府が人々を擁護する発言をしたことです。以下、報道を引用します。
中国・浙江省政府が「一部地域のコロナ政策は『やりすぎだ』」と批判する異例の文書を発表しました。浙江省政府は29日、「人民が第一であり、コロナ対策が第一ではない」と題した文書を発表しました。
中国ではゼロコロナ政策に反発する一連の抗議活動は報道されていませんが、市民らの不満の声に反応をしたとみられます。
文書では「一部地域でコロナ対策の名目で権力を乱用し、大衆を苦しめている」とし、さらに「新型コロナだけが病気で、他の病気はどうでもいいという暗黙の了解さえある」と踏み込んだ表現で批判しています。
一方で「中国は他国に比べて高齢者の死亡者が少ない」などとゼロコロナ政策の正当性も主張しています。文書は「心を一つにすれば近い将来、平安が訪れる」と結ばれています。
天安門事件が、鄧小平と共産党内部の権力闘争に利用されたように、今回のデモを政治闘争に利用しようとする者がいるのかもしれませんが、習近平の求心力は大きく低下しました。
重慶発と言われているコロナは、世界中を回りまわって、最後に再び中国に戻って、共産党政府を揺さぶっているというわけです。
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