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日本の自衛隊「単独」では不可能。北ミサイル乱射に無力な反撃能力

国内でも賛否両論渦巻く「反撃能力」の保有。同盟国アメリカは歓迎の意を示しましたが、近隣諸国はどのような反応を見せたのでしょうか。今回のメルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』では宮塚コリア研究所副代表の宮塚寿美子さんが、朝鮮中央通信が発表した北朝鮮外務省報道官の談話を紹介。さらに日本における「反撃能力」の運用についての考察を記しています。

※本記事は有料メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』2022年12月20日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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今年35回目のミサイル発射 金与正氏ICBM通常発射を示唆

12月も下旬に入り、今年もあと少しになった。ゆっくり今年を振り返ろうとしたが、北朝鮮はそうさせてくれないようだ。

18日に北朝鮮は弾道ミサイル2発を排他的経済水域(EEZ)の外側の日本海に発射したのである。北朝鮮は先月11月18日にも大陸間弾道ミサイル(ICBM)級を1発発射しており、1か月ぶりで、ミサイル発射は今年35回目にもなる。これについて、韓国軍合同参謀部は、ミサイルの種類は、「準中距離弾道ミサイル」ではないかと報道し、韓国の専門家には「固体燃料によりミサイルの発射実験」という見方をしているとも報道した。韓国の「国防白書」によると、準中距離弾道ミサイルは、射程が1,000~3,000km未満とされている。

また、固定燃料を使った北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の「北極星」や地上配備型に改良されたとされる「北極星2型」がこれに分類されている。

しかし、本日20日の北朝鮮の朝鮮中央通信は金与正(キム・ヨジョン)党副部長の談話を発表し、韓国軍と専門家を“傀儡(かいらい)”とし、「軍と専門家が北朝鮮の大陸間弾道ミサイルの大気圏突入は検証されておらず、高角度で発射では立証できないため、実際の角度で打ってみないとわからないと言い続けている」と批判し、「我々の戦略兵器の能力を貶そうけなそうとすることは明らかである」とした上で、「時機にしてみれば良いことで、もうじき見ればわかることではないか」と、近いうちにICBMを高角度でなはなく、通常の角度で発射することを暗示したのである。

また、朝鮮中央通信は、北朝鮮の外務省の報道官の談話を発表し、「日本が事実上、他国に対する先制攻撃能力の保有を公式化する新たな安保戦略を採択することにより、朝鮮半島と東アジア地域に重大な安保危機をもたらしている」と強調した。

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また、日本が主張する「反撃能力」は、主権国家の合法的な自衛権保有とはまったく関連がなく、他国の領土を打撃するための先制攻撃能力だとし、「日本の新しい侵略路線の公式化で東アジアの安保環境は根本的に変わった」と述べた。

さらに、「我々は日本の不当かつ欲深い野望の実現の企てに対し、朝鮮民主主義人民共和国がどれほど憂慮し、不快に感じているかを引き続き実践の行動で示す」と威嚇した。その上で、「日本は近く感じることになる身震いする戦慄(せんりつ)によって明らかな誤りとあまりに危険な選択をしたことに気づくだろう」と警告したのである。

北朝鮮はミサイル発射の報道にも最近変化があり、しばらく報道しなかったのに、金正恩(キム・ジョンウン)委員長の娘を発射の視察に同行させたり、今回は妹の金正与党副部長が談話を発表しているのである。金正恩委員長自身が触れていないのが気になる。

しかし、北朝鮮はあくまでも有言実行の体制である。12月末には重要会議が開かれる。その前に今年の成果、来年の目標をまた何日も話し合われるだろう。北朝鮮が予告しているように、年内にあと1回は何かしら軍事挑発をしてくる可能性がある。

これを受けて日本はどう対応できるのか。残念ながら、現在の日本は独自に反撃能力を行使することはほとんど不可能である。反撃に向けて敵国のミサイル発射の兆候や他国の軍事領域内の軍事目標を把握しないといけないが、米軍の情報に頼らないわけにはいかないのである。

また、反撃能力を運用するには、日米の共同作戦を前提とし、標的の探知、追尾、攻撃の効果の判定などは、自衛隊単独では難しい。岸田文雄首相は、来年1月に訪米し、バイデン大統領と安保関連3文書改定による「反撃能力」の運用に向けて協議を本格化するとされている。これと前後し、北朝鮮の反応についても来年も引き続き注視しなければならない。

宮塚コリア研究所副代表・國學院大學栃木短期大學兼任講師 宮塚寿美子

※本記事は有料メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』2022年12月20日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。各月550円です。

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image by: 朝鮮労働党機関紙『労働新聞』公式サイト

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元山梨学院大学教授の宮塚利雄が、甲府に立ち上げた宮塚コリア研究所から送るメールマガジンです。北朝鮮情勢を中心にアジア全般を含めた情勢分析を独特の切り口で披露します。また朝鮮半島と日本の関わりや話題についてもゼミ、そして雑感もふくめ展開していきます。テレビなどのメディアでは決して話せないマル秘情報もお届けします。長年の研究対象である焼肉やパチンコだけではなく、ディープな在日朝鮮・韓国社会についての見識や朝鮮総連と民団のイロハなどについても語ります。

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