自転車ヘルメット着用「努力義務」では不十分?「免許制にしろ」の声が上がるワケ

2022.12.21
by たいらひとし
shutterstock_1325623505
 

2022年4月に交付された「改正道路交通法」によって、2023年4月1日から全ての自転車利用者が「ヘルメットの着用」を義務付けられることが決定した。ただし、これは罰則のない「努力義務」となる。この決定に対してネット上では驚きや戸惑いから大賛成の声まで様々な意見が飛び交っている。自転車を使う人全てにヘルメット着用が「努力義務」となると、一体これまでとどこがどう違ってくるのだろうか?

今は罰則無しも「ヘルメット完全義務化」の可能性は?

今回改正されるのは、道路交通法の第十三節にある「自転車の交通方法の特例」で、

「(児童又は幼児を保護する責任のある者の遵守事項)第六十三条の十一 児童又は幼児を保護する責任のある者は、児童又は幼児を自転車に乗車させるときは、当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない」

と、従来は13歳未満の子供が対象だったが、この部分の年齢が拡大され、

【自転車の運転者等の遵守事項】

  1. 自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならない。
  2. 自転車の運転者は、他人を当該自転車に乗車させるときは、当該他人に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。
  3. 児童又は幼児を保護する責任のある者は、児童又は幼児が自転車を運転するときは、当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。

となった。

これによって、来年4月から自転車に乗るときはヘルメットの着用が「努力義務」となる。

罰則はないとされているが、飲食店の受動喫煙の防止が年を追うごとに厳しくなり、喫煙可能店が激減したように、ヘルメット着用も段階を追って厳しくなるとみられている。「努力義務」が「義務」にならないとも限らないのだ。

「ヘルメット警察」登場の懸念も?

以前から警察庁・都道府県警察のポスターでは「大人も子供も自転車とヘルメットはセットです」と呼びかけている。

ポスターに記載されているデータによると、令和2年の「ヘルメット非着用の死亡事故」の原因のうち56%が「頭部損傷」によるものだった。

その上、ヘルメットする・しないの致死率の差は「約3倍」だという。大人になったからといって、急に頭部が固くなるわけではない。ヘルメット非着用の危険度は年齢に関係ないのだ。このデータをみるとヘルメットの着用の義務化は当然だといえるだろう。

ヘルメットの着用を義務づけた場合、どんなことが想定されるだろうか?

たとえば、もし交通事故に遭遇した場合でも、「ヘルメット非着用だと保険金がおりない」という状況が出てくるかもしれない。

また、ルールに厳格な企業や役所であれば、自転車通勤をしているサラリーマンは通勤時にヘルメット着用が義務付けられ、着用していなければ「社内の評価が落ちる」といったこともあり得る。

また、コロナ禍で出現した「マスク警察」同様に、ヘルメットの着用・非着用を厳しく見守る「ヘルメット警察」も生まれそうだ。

自宅前で喫煙し側溝にポイ捨てされたのを盗撮されて、減給になる「監視社会」の今、誰が自分の行動を見張っているか分からない。

ただ、ヘルメット「努力義務化」の実効性には疑問の声も多いようだ。

 

危ない自転車の運転。クルマのドライバーから「免許制にしろ」の声

 

ネット上には、ヘルメットの「努力義務」を前に、危険な自転車の運転を問題視する声が多くあがっている。

クルマのドライバーにとって、車道のすぐ横を走る自転車は危険極まりなく、平気で車道側にはみ出して走る自転車も多い。

また、「車道を逆走してくる自転車ウザい」「車道と自転車専用レーンをフラフラ行き来する自転車ってマジやめてほしい」「急にブレーキかけたりカーブするママチャリ、予測不可能すぎ」「車道に出てくるチャリあやうく轢きかけたわ」など、ドライバーにとって迷惑な運転をする自転車による危なっかしい事例も報告されている。

そんな危険な自転車に対して、ネットでは「今は無法地帯。自転車が交通ルールを守るように」「個人的には危険運転を防止する対策を優先してほしい」「自転車の一時停止無視が多すぎる。何度轢きそうになったか……」と、いっそのこと「自転車の免許化」を望むような声が多く出ている。

また、路上における自転車の危険度を高くしているのが「電動アシスト自転車」の存在だ。

「電動アシスト自転車」は免許不要で、時速24kmの制限が設けられているが、普通の自転車よりもスピードが出る。自動車のドライバー側にしてみると、想定以上のスピードを出すアシスト自転車の動きは予測しづらいようだ。自動車にとっても、歩行者にとっても、自転車は迷惑な存在といえるかもしれない。

一方、ヘルメットの着用義務化で「かっこ悪いから自転車乗るのやめた」「髪をセットした女性・男性には抵抗がある」という声が多いのも事実だ。

クルマ側からも、乗る側からも嫌われている自転車。このまま自転車は路上から姿を消してしまうのだろうか? 

print
いま読まれてます

  • 自転車ヘルメット着用「努力義務」では不十分?「免許制にしろ」の声が上がるワケ
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け