ドローンを攻撃するドローンまで開発。韓国が急ぐ対北朝鮮「軍事作戦」の中身

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核実験やミサイル発射など、依然として予断を許さない北朝鮮情勢。お隣の韓国では、北の「無人機」による恐怖にさらされており、対抗措置として軍事ドローンが出番を迎えようとしています。韓国在住歴30年で韓国の大学に勤務する日本人教育関係者が発行のメルマガ『キムチパワー 』で、韓国が創設した合同ドローン司令部について紹介しています。 

恐ろしい軍事ドローン。韓国が合同ドローン司令部創設

北朝鮮の相次ぐ挑発で「9・19南北軍事合意」が事実上無力化したと判断し、尹錫悦大統領は4日「合意効力停止検討」まで言及し、再び対北朝鮮発言の水位を高めた。

尹大統領は先月27日の閣議で「北朝鮮の善意と軍事合意だけに依存した対北朝鮮政策がどれほど危険なのか国民がよく見ただろう」とし、9・19軍事合意に対して否定的な立場を表明したのに続き、同日の合同ドローン司令部創設とステルス無人機年内生産など攻勢的な軍事措置まで言及した。

大統領室はこれまで「9・19軍事合意」が死文化されたとしながらも、これを公開的に言及することには慎重だった。しかし、北朝鮮の挑発にこれ以上ネガティブ(守勢的)に対応できないと判断し、合意効力停止カードまで取り出した格好だ。

特に、北朝鮮の無人機がソウルと首都圏上空を堂々とこれ見よがしに侵犯し、韓国軍はこれを撃墜することに失敗し国民の叱責をかう状況も影響を及ぼした。

大統領室関係者は「今回の低強度無人機挑発によって国民が感じる不安がないよう国軍統帥権者として断固たる態勢を注文した」と説明した。

尹大統領が合意「廃棄」や「破棄」ではなく「効力停止」を取り上げたのは、「南北関係発展に関する法律」(南北関係発展法)による現実的な制約のためだ。南北関係発展法第23条は「大統領は南北関係に重大な変化が発生したり、国家安全保障、秩序維持または公共福利のために必要と判断される場合には期間を定めて南北合意書の効力の全部または一部を停止させることができる」と規定している。

南北合意書の効力を停止させるのは大統領権限だが、破棄は関連規定自体がないため、合意書を破棄することは法的に不可能だ。ただ、効力停止期間を延長し続けることで、事実上破棄に他ならない効果を演出することができる。

9・19軍事合意効力が停止すれば事実上文在寅政府以前に戻るという意味になる。一部では、軍事境界線(MDL)一帯の「対北朝鮮拡声器放送」再開の可能性なども取り上げられている。これに対して大統領室関係者は「(拡声器放送再開が)別途議論されるかは分からないが、今回発表した内容とは関係ないと思う」と線を引いて「強力な意志を明らかにしただけに、北朝鮮が無謀な挑発をしないことが重要だ」と話した。北朝鮮が一番嫌がるのがこの「拡声器放送」と「ビラ作戦」なのだ。

尹大統領はこの日、無人機対応戦力に対する報告を受けた後、イ・ジョンソプ国防部長官に多目的任務遂行合同ドローン部隊創設と小型ドローン年内大量生産体系構築、ステルス無人機開発、「ドローンキラー」開発などを指示した。特にドローン部隊の創設とステルス無人機の生産時点を今年に釘を刺した点は、今後の北朝鮮挑発に直ちに対応できるよう急ぐことを注文したものと分析される。

国防部によれば合同ドローン司令部はドローン・無人機戦力を拡充すると同時に監視・識別・打撃体系を強化する役割を担当することになる。軍関係者は「低被探(探知が難しい)小型無人機を年内大量生産できる体系を構築し、ステルス無人機も年内生産できるよう開発に拍車をかける」とし「ドローンキラードローン(ドローンを攻撃するドローン)体系も迅速に開発する」と明らかにした。北朝鮮が無人機挑発をすれば、韓国も小型無人機を北朝鮮に大量に侵入させ、有事の際に攻撃型無人機で主要目標物を直接打撃することができると警告する意味と見ることができる。

注)「9.19南北軍事合意(2018.9.19発効)」の主な内容は以下

  1. 一切の敵対行為を全面中止
  2. 非武装地帯の平和地帯化
  3. 西海北方限界線一帯の平和水域化
  4. 交流及び接触活性化のための軍事的対策を講じる
  5. 相互軍事的信頼構築措置を講じる

(無料メルマガ『キムチパワー』2023年1月5日号より一部抜粋)

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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