萩生田政調会長の口車に乗せられた?岸田首相「解散」発言で自ら締める首

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昨年末の12月28日、岸田首相はメディアのインタビューに応じ、防衛増税前の解散総選挙の可能性に言及しました。この発言を巡っては、その真意や解散するなら時期はいつかなど、年をまたいでさまざまな議論や憶測を呼んでいます。今回のメルマガ『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』では、著者でジャーナリストの伊東森さんが解散時期についていくつかのシナリオを提示。複数のメディアの記事を引きながら、萩生田政調会長の発言に反応してしまったがために、首相自身の首を締めることになりかねないと伝えています。

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岸田首相、防衛増税前の「解散」発言が波紋。萩生田氏の口車に乗せられて?自らの首を絞めるのか

岸田文雄首相は12月28日、共同通信などのインタビューに応じ、防衛費増額にともなう増税を開始する前の衆議院の解散・総選挙について「可能性はあり得る」と表明。求心力を回復させたいとの意向も。(*1)

発言について、首相に近い閣僚経験者は、「党内の引き締め、野党のけん制、増税をする考えを貫くという国民への宣言だ」(*2)と解説。

自民党の中堅議員も、「いつでも解散できることをアピールし、党内の緊張感を高める狙いだろう」(*3)との見方を示す。

増税について、政府は23日に閣議決定した税制改正大綱で「2024年以降の適切な時期」と幅を持たせる。衆院議員の任期満了は2025年の10月だが、同年の夏には参院選もあるため、首相発言を、「増税の是非について解散・総選挙で国民の信を問う」と解釈すれば、参院選より前、2024年までの解散を念頭に置いている可能性も。

いつ ? 総裁選前? 衆参同日選? それとも今年のサミット後?

それでは、「増税前の衆院選」とはいつのことを指すのか。首相は2024年9月に自民党総裁としての任期切れを迎える。さらに衆議院議員の任期満了は2025年の10月。

通常の政策の決定過程に沿って考えれば、2023年12月に与党の税制論議を経て、防衛増税の実施時期が始まり、2024年3月中には改正税制法が成立する(*4)。法人税とたばこ税は早ければ2024年4月から増税が開始。

所得税は暦年単位が基本なので、早くとも2025年1月(*5)から。ただ、いずれも政策判断により開始時期を遅らせることは、十分にあり得る。また2024年の政治日程をみると、9月に首相の自民党総裁としての任期が満了し、総裁選が実施される。すると2024年度の予算成立後の春から総裁選前までの衆院選が一つ想定される。

この選択肢を選んだ場合、岸田氏は総裁選を有利に運ぼうとする思惑も絡む。総裁選後なら2024年秋などが有力。また2025年夏の参院選と同日の衆参同日選も選択肢の一つ。

他方、首相は今年中の選挙実施を否定したものの、与野党には今年の5月のG7(先進7カ国首脳会議)後を予測する向きも(*6)。

萩生田発言に口車に乗せられて

今回の岸田首相の「解散」発言は、自民党の萩生田光一政調会長による“増税前解散”を意識したとみられる。萩生田氏は、25日に上記の発言を行った。安倍派の萩生田氏は安倍晋三元首相と同様、防衛増税に慎重な立場で国債の発行を訴えてきた。それだけに、自民党内は「政局発言か」と色めき立つ。

このために、官邸内は、今回の首相の解散時期をめぐる発言について、「萩生田氏の立場と齟齬はないと言いたかっただけ。それ以上の他意はない」(*7)と鎮静化にやっきに。

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