他方、萩生田氏の発言について、「選挙公約になかった増税をいきなり言い出した岸田首相に対する党内の不満はかなりのものです。増税するなら選挙で問うべきという萩生田氏の主張はもっともで、岸田首相は分が悪い。世論も味方につけ、党内の増税反対派にアピールすることが狙いでしょう。ただし、テレビに出て花火を上げるだけでなく、実際に党内の増税反対派をまとめることができるのか。萩生田氏を頼る増税反対派からは、党内議論も玉虫決着で結局は萩生田氏は腰砕けになったと見られています」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)(*8)との見方も。
退陣に追い込まれる可能性も 2023年の政局は?
一方、「総理は萩生田さんに安倍派と党内を増税容認でまとめるよう頼んだのに、政調会長が反対論をあおるようなことをして、党内は紛糾し、収拾がつかなくなってしまった。党をまとめられないどころか、増税反対派を勢いづかせた萩生田さんに総理は激怒し、政調会長を交代させると息巻いていました」(官邸関係者)(*9)との見方もある。
とはいえ、“伝家の宝刀”である「解散権」はもろ刃の剣。結果的には自らの首を絞めることにもなりかねない。事実、公明党のある幹部は、「なぜ自分の手足を縛る発言をしたのか理解に苦しむ」(*10)と話す。
野党の国対幹部も、「萩生田氏は増税が選挙の争点になると揺さぶり、国債発行への政策転換を狙ったんだろう。乗せられた首相は自ら外堀を埋めたようなものだ」(*11)と語る。
過去には、1991年に海部俊樹首相が政治改革関連法案の廃案をめぐり、「重大な決意で臨む」と衆議院の解散を示唆。しかし後ろ盾だった竹下派の同意を得られず、退陣を余儀なくされた。
2023年の政局はどうか。論点は国民民主党の与党への“合流”話だ。与党入りをうかがう国民民主党に対し、自民党は組織・団体の集票力の低下を補いたいとの狙いが。対して、公明党は影響力の低下を危惧する。
■引用・参考文献
(*1)~(*3) 時事通信(2022年12月28日)「「増税前解散」岸田首相が初言及=求心力回復へ引き締めか」
(*4)~(*7)西日本新聞(2022年12月29日)「首相、異例の「解散」言及に波紋」
(*8)~(*11)日刊ゲンダイDIGITAL(2022年12月27日)「“岸田降ろし”勃発?萩生田政調会長「増税前に解散・総選挙」発言が波紋…揺さぶりの狙いは」
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