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河野太郎氏が“ネット検閲”を画策? SNSマイナンバー紐付け発言が物議…国民の懸念は本当に「フェイクニュース」なのか

河野太郎デジタル相が12日のテレビ番組で明らかにした「マイナンバーカード認証によってSNS利用に年齢制限をかける」という案が大炎上している。河野氏は一連の騒動を「フェイクニュース」と切り捨てたが、一部では本格的な“ネット検閲”への布石との見方も浮上している。

マイナンバーカードでSNSを規制?河野太郎氏が炎上

河野太郎デジタル改革担当大臣が12日、『日曜報道 THE PRIME』(フジテレビ系)に出演。『スシロー』をはじめ大手飲食チェーンで、醤油ボトルに唾液をつける様子などを動画で撮影しSNSに投稿する迷惑行為が相次いでいることについて持論を展開した。

河野氏は、少年や若者の迷惑動画がたとえ「おもしろ半分」であっても、社会や投稿者の人生に多大な影響を与えるとして、ネットリテラシー向上が急務と指摘。

さらに、悪質な行為への対策として、マイナンバーを活用してSNS利用に年齢制限をかけるのが有効との認識を示し、「いろんなサービスのアカウントをつくるときに、マイナンバーカードで認証を最初にするということにすれば、年齢制限をきっちり守ることができますから。そういうところにも役に立ってくるんだろうと思います」と説明した。

ところがこの発言を、あるまとめサイトが「日本政府、YouTubeやツイッターなど利用にマイナンバーカード登録義務化する方針」というタイトル文言で伝えたことから、「海外企業にマイナンバー情報を渡せと?」「子供のいたずらをダシにネット検閲か」「まるで中国みたいだな」など、河野氏が痛烈な批判を浴びる事態に。

これに対し河野氏はツイッターで、まとめサイトを引用しつつ「フェイクニュースの出元はここか」とチクリ。自分を批判する人々が「デマ」を拡散していることを強くアピールしたが、それでも一連の騒動は収まりそうにない状況だ。

国民の懸念は「フェイクニュース」ではない

現時点の情報を整理すると、日本政府が「ネット利用時のマイナンバー登録を義務付ける方針」を持っているという指摘は事実ではない。河野氏も番組内で、そこまで踏み込んだ発言はしていない。この点はたしかに、まとめサイトのミスリードと言える。

ただし、それでもなお、河野氏に対する懸念の声をすべて「デマ」扱いするのは早計だ。自身への批判を十把一絡げに「フェイクニュース」と切り捨てる河野氏は、与党大臣としての説明能力に欠けている面がある。

「河野さんが言うように年齢制限を設けるとすれば、SNSを利用する日本国民全員が、マイナンバーカードによる初回認証を行うことになるんですよ。投稿を“禁止”されるのは未成年者だけですが、私たち大人も、自分が成人であることを証明するために結局マイナ認証をさせられるわけです。思想・良心の自由を考えると、非常に恐ろしい事態ですね。

河野さんの発言を批判している人たちは、何よりこの点を憂慮しているんです。『YouTubeやツイッターなどの利用にマイナンバーカード登録義務化』は、将来的には十分あり得るディストピア。このような真っ当な懸念を『デマ』や『フェイクニュース』の一言で切り捨てるのは頭が悪い人だけでしょう。

また、『初回アカウント作成時にマイナ認証』というフローも実効性に疑問があります。世界的規模のSNSプラットフォームがマイナ認証に対応する場合、日本からのアクセスとその他地域からのアクセスを区別して画面遷移を変える必要がある。その地域判定にはユーザーのIPアドレスなどを利用しますが、ノーログポリシーのVPNなどを噛ませば海外ユーザーになりすますのは簡単なんですよ。未成年者がそうやって一旦アカウントを作成してしまえば、その後、国内の生IPでアクセスしてもBANされることはない。訪日外国人観光客と区別するのは不可能ですし、寿司テロなどの迷惑行為を抑止することはできません」(ITジャーナリスト)

ザル規制ほど実は危険?ネット検閲への道

SNSアカウントとマイナンバーが紐付けされるのは、ネット上で悪事を働かない一般ユーザーとしても気持ち悪いのは間違いない。

ただ、河野氏の提案する方式が「やってる感」だけの無意味なものだとすれば、私たちが“ネット検閲”を過剰に心配する必要はないとも言えるのだろうか?

「まったく逆です。ザル規制だからまあいいか、という考え方がいちばん危ない。初回のみの認証に実効性がなければ、じゃあ毎回マイナ認証を要求しようとか、国レベルでツイッターやTikTokへのアクセスを遮断しようとか、そういう動きに繋がっていくことは容易に想像できます。“日本の中国化”です。

どれほど無意味でも、すでに『初回マイナ認証』が仕組みとして導入されている状態なら、それを少しずつ厳格化していくだけなら国民の反発は生じにくい。そのときは“寿司ペロペロ”とはまた別の社会問題が“ネット検閲”の理由付けに利用されるんじゃないですか?国家は、国民の言論を統制したいという根源的欲求を持っている。このことを決して忘れてはいけないと思います」(前同)

陰謀論ではなく、ごく自然な推論として、マイナンバーカードによるSNSの年齢制限と、国家による本格的な“ネット検閲”は「地続き」と考える人たちが少なくないようだ。

今はそうでなくても、近い将来に懸念される最悪のシナリオ。それに対する不安の声を「フェイクニュース」の一言で一蹴して本当にいいのだろうか。

ネット上の言論とマイナンバーの紐付けは、民主主義を根幹から破壊する危険かつ異常な発想。そう感じる国民が多いからこそ、河野氏への抗議の声がこれほどまでに広がっているのだろう。

ワクチン問題と共通、河野太郎氏の「悪癖」

マイナンバーカードを利用した“ネット検閲”への懸念に対して、並の政治家なら「誤解を与えたのだとしたら謝罪する」などと釈明しそうなものだ。

しかし今回、河野太郎氏はツイッターで、そのような不安の声を「フェイクニュース」と一刀両断している。しかも、具体的に何がどう「フェイク」なのかの説明はどこにもない。

このような河野氏の強気姿勢には既視感がある。今年の正月早々、「運び屋の自分が後遺症の責任を取るなどと口にしたことはない」などと発言して大炎上したコロナワクチン問題だ。

【関連】反ワク派に激怒の河野太郎氏が喧伝した「ワクチンの効果」は正しかったのか?

「大人の常識として、元ワクチン大臣が逃げ支度や言い逃れをはじめたら、それは極めて危険なシグナルですよね(笑)ワクチンの安全性に不安を抱く人が増えるのは当然の流れでした。

ところが、あのとき河野さんは、ワクチンの安全性に懐疑的な人々すべてに『デマばかりの反ワクチン派』というレッテルを貼った。自らの主張に有利に働く極端なデマを都合よく拾い上げて印象操作をする一方、多くの国民が本当に知りたがっている疑問はスルーした。いわゆる『チェリー・ピッキング』型の詭弁を弄しました。

今回の“ネット検閲”騒動での初期対応もそれと共通しています。某まとめサイトの伝え方は確かにミスリードだったでしょう。でも、河野さんが『フェイクニュースの出元はここか』とまとめサイトを批判したところで何になりますか?マイナンバーカードによるSNS年齢制限を打ち出して騒動のきっかけを作った張本人が、“ネット検閲”への懸念すべてをデマ扱いすることなんて、絶対にできないはずなんですけどね」(前同)

極端な一部のデマを発掘してきて、それをもってすべての反対意見に「フェイク」のレッテルを貼ってしまうのは河野氏の悪癖のようだ。

だが、今どきのネット民にそんな屁理屈は通用しないし、瞬時に「論点すり替え乙」と見破られてしまう。火に油を注ぐようなものだ。

河野氏はサクランボを摘む前に、もっと国民ひとりひとりの声を拾い上げたほうがいいのではないか。

image by: デジタル庁公式YouTubeチャンネル

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