2025年には65歳以上の実に5人に1人が罹るとされている認知症。その発症を予防する術はないものなのでしょうか。2018年の開院以来、「温もりのある精神医療」を実践し続けてきた「もりさわメンタルクリニック」さんが日刊で配信する無料メルマガ『精神医学論文マガジン』では今回、10年間に渡る調査で証明された「認知能力低下を予防する6つの生活習慣」を紹介。高齢になってから生活を改めたとしてもその効果はあるという、希望に満ちた研究結果を取り上げています。
6つの良い生活習慣と認知症予防効果
食生活や運動習慣、社交的傾向など、様々な生活習慣(様式)について、認知症予防との関連が指摘されています。
今回は、特に認知症予防に有効と言われている6つの生活習慣について、高齢期における効果を確認した研究をご紹介します。
認知能力低下のない60歳以上の男女29,072人(平均72.23歳、女性が48.54%)が対象となりました。
6つの良い生活習慣について、
- 健康的な食生活(12種の摂取が望ましい食品のうち、少なくとも7種の摂取)
- 運動習慣(週に150分以上の中等度、または75分以上の高度の運動)
- 頻繁な社会交流(週に2回以上)
- 頻繁な認知活動(週に2回以上)
- 喫煙歴がないか、中止
- 飲酒歴がない
以上のように定め、認知能力の低下について10年以上の経過で調べました。
結果として、以下の内容が示されました。
- 良い生活習慣を持っている場合(上記のうち、4つ以上が当てはまる場合)には、良い生活習慣が少ない場合(上記のうち、当てはまるのが1つ以下)に比較して、明らかに認知能力低下が抑制されていました(今回採用した評価法で、年あたり0.028ポイントの差異)。
- アルツハイマー型認知症を発症しやすい遺伝子型であるAPOEε4のキャリアであっても、上記の傾向は一貫していました。
要約:『良い生活習慣は、高齢期であっても認知能力低下を抑制し、遺伝子の影響があっても効果がある』
生活習慣のうち、満たすのが難しいものもあるかもしれませんが、できることから変えてみると認知能力低下を少しずつ遅くできる可能性があると思われました。
(無料メルマガ『精神医学論文マガジン』2022年2月6日号より一部抜粋)
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