28年の歴史に幕を下ろしたPHS。超えられなかった「500万の壁」とは

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日本発の通信規格「PHS」が、3月末日をもってサービスを完全に終了。28年の歴史に幕を閉じました。定額通話やスマートフォンの先駆けとも言えるような端末など、その歴史を懐かしむのは、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さん。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、PHSがメジャーになり切れなかった理由として、日本のユーザーが一番に求めるものが利用料の安さではなかったと指摘。加えて通信市場には、楽天モバイルもまだ超えられない「500万の壁」があるとの見方を示しています。

PHS、進化と紆余曲折を経ながら28年の歴史に幕──日本の通信市場にうっすらとある「500万の壁」とは

2023年3月31日、PHSがサービスを終了した。すでに個人向けは2021年1月末にサービスを終えているが、今回、機器向け通信も終えることとなった。

これまで様々な通信規格があったが、28年間もサービスを提供し続けてきたというのはかなりまれだ。ケータイWatchにも関係者インタビューが掲載されていたが、コアネットワーク部分において改良が続けられ、時代に合わせて生き延びてきたという感じが強い。先日、寺尾さんと話す機会があったが、「当時はNTTはとても協力的だった」ということだった。

個人的にも、学生時代にPHSに出会ったことが、通信に興味を持つきっかけだったかも知れない。当時、日経トレンディでは「PIAFS」という通信規格を熱心に取り上げていて、食い入るように読んでいた記憶がある。

外ではPHS通信、自宅ではコードレス電話的に固定回線につながったりするのが魅力であった。NTTドコモ「P-in Comp@ct」といった通信カードとPDAを組み合わせて遊んでいた。

その後、ウィルコム「W-ZERO3」なんかも登場し、とにかくPHSは世間的にはメジャーになれなかったが、個性的な端末と、通話定額や「W-SIM」など世界の先を行くサービスで、楽しい印象しかない。

やはり、キャリア自身が技術を開発し、改良を加えつつ、ネットワークを生かす端末を自社で企画してしまうという「垂直統合型」だったというのが、面白いサービス、端末が出てきた理由なのだろう。

ただ、PHSの歴史を振り返ってみると、とにかく日本のユーザーはどんなに通信料金が安くても、とりあえず「通信がつながるか」という品質重視だというのがよくわかる。DDIポケットやウィルコムも出力を上げて電波を飛ばしたり、ハンドオーバー時の瞬断をなくそうと努力してきたが、やはり料金が高めでもしっかりとつながる携帯電話には勝てなかった。

ウィルコム時代、「HONEYBEE」や音声定額で勢いを復活させるものの、500万弱というところで頭打ちとなってしまった。ちなみに、ウィルコムと同じくソフトバンク傘下となったイー・モバイルも、契約者数で見ると400万台で、あっさりと売却された。

そう考えると、日本における第4の勢力は500万契約を超えるかどうかが、結構な壁と言えるかも知れない。日本のユーザーを分析すると、コストパフォーマンスが良ければ飛びついてくれる「賢いユーザー層」が500万弱ぐらいいるものの、そこを超えるのが大変だ。

イノベーター理論みたいなものだが「500万の壁」を超えられれば、一気にメジャーな存在になれるのではないか。その点、楽天モバイルも2023年1月末現在で452万契約と言うことで、この「500万の壁」を早期に超えられるかが、ポイントと言えそうだ。

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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