『はだしのゲン』の作者が語った「戦後の少年犯罪1位は広島」のワケ

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原爆による被爆体験が描かれた『はだしのゲン』を広島市教育委員会が平和教材から削除しました。広島を選挙区とする岸田文雄氏が首相のときの出来事として“象徴的”と評するのは、辛口評論家として知られる佐高信さんです。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』では、『はだしのゲン』原作者の中沢啓治氏が別の著作で語っていた衝撃の内容を紹介。佐高さんは、広島の原爆孤児6000人が7年も放っておかれたことなど、岸田首相は知らないのではないかと疑っています。

「岸田晋三」はヒロシマを語るな

広島市教育委員会が『はだしのゲン』を小学3年生の平和教育教材から削除するという。それを講談にした神田香織が怒っているが、広島が選挙区の岸田文雄ならぬ岸田晋三が首相の時にそうなるのも象徴的だろう。原爆を落としたアメリカに忖度しまくっている岸田がそれを止めるはずもない。

広島サミットなどと言っても、岸田は広島が地元と名乗る資格はないのである。多分、『はだしのゲン』の原作者の中沢啓治が『はだしのゲンはピカドンを忘れない』(岩波ブックレット)で語っていることなど、まったく知らないに違いない。

中沢は1938年に広島で生まれ、小学1年生の時に被曝する。そして漫画家になり、『はだしのゲン』を発表したが、これは24ヵ国語に翻訳されている。

前記のブックレットは読むのも辛い被爆体験を描いているが、とりわけ衝撃的なのは、奇跡的に助かった中沢の母親が1966年に亡くなった時、焼いたら頭蓋骨も骨もまったくなかったということである。

それだけではなく、母の死を知ったABCC(米国原爆傷害調査委員会)がすぐに駆けつけてきて、内臓をくれとしつこく食い下がった。これには中沢の兄がこう言って怒りを爆発させたとか。「何をぬかすか、原爆を落とした上に、おふくろの体まで取っていくのか」。

中沢はこんな驚くべき指摘までしている。

「広島の医者がなぜ被爆者をABCC機関に紹介するかといえば、被爆者を紹介するとアメリカのいい医療品がタダでもらえるからです。その医療品を、今度は被爆者とか一般の人に売りつけて、もうけるわけです。だからせっせと被爆者をABCCはその生き残った被爆者のデータを全部とりまくるのです。そして、その大事な部分は、日本人にはまったく公開せずに、ワシントンにある研究所に全部送って、自分たちの核戦争に備え、利用しているのです」

このブックレットは1982年に発行されているが、中沢は2012年に亡くなった。

中沢は原爆孤児についても語っている。焼け野原の広島におよそ6,000人の原爆孤児が生まれた。盗みもできず、まじめでおとなしい孤児たちは広島の駅前に集まる。栄養失調で死を待つだけだったが、元気のいい孤児は悪とされた世界に入った。生き延びるためにである。だから、戦後の少年犯罪のトップは広島だった。中沢の悲鳴のような声を引こう。

「孤児たちに救いの手が伸びてきたのは、なんと原爆投下後7年もたってからでした。7年後になって、原爆孤児を何とかしようという運動がやっと起きだしたのです。それまでの間、救いの手は何にもありませんでした。私も母親が生きてなかったら、あの集団の群れの中にまちがいなく入っていたはずです。一歩間違ったら、私はヤクザか、人殺しか何かやって、野垂れ死にしていたでしょう。栄養失調で死んでいくか、犯罪者になって生きるかどっちかの道を選ばなければならなかったのです」

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