私が収録に立ち合ったのは、あるアーティストが“ドラマ初出演”と話題になった回でした。
神奈川にある居酒屋がロケ現場で、何人かいる客のひとりが私だったのですが、その撮り直しは実に10数回を軽く超えてしまったのです。
彼の芝居は私の背中越しでしたから表情は見えなかったものの、台詞を噛んだり、言い間違えがその原因で、現場はNGを重ねる度にどんよりとした空気が重くなっていきました。
スタッフの映像チェックや台本の書き直しがその合間合間にされるものですから、数カットを撮るだけのシーンが半日以上の時間を費やしました。
早朝にスタートし、「お疲れ様でした!」と居酒屋の玄関を出る頃には、湘南の街はすっかり夕陽が西の空に落ちていました。
このアーティストの曲を聴く度、今でもあの湘南の街を思い出してしまいます。
10数回でもどんよりとしたわけですから、賀来の80回なんて撮り直しは本当に尋常ではなかったと想像が易くできます。
賀来をボコボコにした演出家は今、どうしているでしょうね。
名も知られずに消え去ったか、大成しているのか…気になります。
プロフィール:芋澤貞雄
1956年、北海道生まれ。米国でテレビ・映画のコーディネーター業を経て、女性週刊誌などで30年以上、芸能を中心に取材。代表的スクープは「直撃! 松田聖子、ニューヨークの恋人」「眞子妃、エジンバラで初めてのクリスマス」。現在も幅広く取材を続ける。https://twitter.com/ImozawaSadao
記事提供:芸能ジャーナリスト・芋澤貞雄の「本日モ反省ノ色ナシ」
image by:image by: Denis Makarenko/shutterstock.com
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