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習近平の怒りを買った韓国。中国の「魔の手」から逃れられるのか

親中、親北姿勢を取り続けてきた前政権から一転、日米との連携強化路線を突き進む韓国のユン大統領に対して、不快感を隠さない中国。習近平政権はこの先、韓国にいかなる対応を取るのでしょうか。外務省や国連機関とも繋がりを持ち、国際政治を熟知するアッズーリ氏は今回、中国が韓国に経済攻撃を仕掛ける可能性が高いと指摘。ユン政権がその魔の手から逃れられるかが大きな問題になりつつあると分析しています。

激怒の習近平。日米に急接近の韓国に中国が仕掛ける経済攻撃

中国と韓国の関係が悪化している。昨年5月大統領に就任したユン大統領は前政権で冷え込んだ米国や日本との関係改善に舵を切り、この1年の外交はそれ一色だった。最近では、ユン大統領は4月に米国を訪問してバイデン大統領と会談し、核ミサイル開発を進める北朝鮮に対して日米韓3カ国で連携していくことで合意した。また、緊張が高まる台湾情勢についても意見を交わし、台湾海峡の平和と安定の維持が地域の安全と繁栄に不可欠であり、力による現状を変更しようとする行動に反対する認識を共有した。そして、その後ユン大統領は米メディアのインタビューに応じ、現状変更を進める中国の立場に反対する認識を示した。

また、ユン大統領は同時に日本へも急接近を図っている。3月下旬、韓国のユン大統領は日本を訪問して岸田首相と会談し、経済安全保障や先端技術、対北朝鮮などで日韓の協力を強化し、未来志向で建設的な日韓関係を構築していくという認識で一致した。そして、それから間もない中、今後は岸田総理がソウルを訪問してユン大統領から強く歓迎を受け、ここに日韓シャトル外交が形となって再開した。

韓国の関係改善姿勢を本気と受け取った日本

2回の会談で注目されるのは、上述した分野の中でも経済安全保障分野で、サムスン電子が横浜に半導体製造工場を作ることが報じられるなど、今後はAIや先端半導体などハイテク分野を中心に日韓の協力がいっそう強まるだけでなく、先端半導体の強固なサプライチェーン構築を目指して日米韓の結束がさらに深まる可能性がある。ユン大統領は就任当初から岸田総理への接触を図ってきた。

昨年7月、ユン大統領は岸田総理も参加したNATO首脳会合に参加し、その際に開催された晩さん会で両者は初めて対面で意見を交わし、ユン大統領は岸田首相に日韓間の懸案事項を速やかに解決し、両国関係を未来志向に進める考えを持っていると伝えた。両指導者は昨年11月のAPEC首脳会合の際にも会談を行い、それが最近の日韓シャトル外交の再開に繋がった。日本側もユン政権の誕生を歓迎したが、岸田総理は日韓関係の改善は待ったなしとの認識だったが、本当に韓国が真剣に関係改善を求めているかという慎重姿勢は崩さず、この1年あまりはユン政権の真剣さを注視していたと思われる。今日では、ユン大統領の気持ちは本物だと日本側もそれを認めている。

台湾問題に口を挟んだ韓国に激怒の中国

こういったユン大統領の行動や姿勢に、中国は反発を強めている。4月の訪米でユン大統領が台湾問題に言及したことに、中国政府は台湾は内政事項であり、他人が口出しすることはできないと強く反発した。また、昨年11月、習近平国家主席とユン大統領はAPEC首脳会合に合わせてインドネシア・バリ島で会談した際、北朝鮮への対応で日米韓の連携を重視するユン大統領に対し、習氏は韓国が率先して北朝鮮と関係を改善するよう求めるなど、双方の考え方の違いが浮き彫りとなり、昨年5月に両国の外務大臣がオンラインで会談した際、中国側が韓国に対して米国か中国かなど陣営に分かれて対抗するべきではないと韓国をけん制するなど、ユン政権以降両国関係は悪化していった。

ユン大統領のこの姿勢は残りの任期4年間変わらないだろう。ユン大統領はそれどころか自由で開かれたインド太平洋の価値観を共有し、日米豪印で形成されるクアッドに参加する意欲も示している。中国が嫌がることをどんどんしようとしており、中国と韓国の関係悪化は既に避けられないところまで来ている。

韓国を襲う経済攻撃という中国の魔の手

両国間で軍事的緊張が高まるわけではないが、中国の韓国への不満は高まるばかりで、中国が経済攻撃を韓国に加える可能性がまず考えられる。近年、中国はいじめっ子のように何かあるごとに経済攻撃で相手を苦しめている。たとえば、中国は関係が悪化した台湾(パイナップルや高級魚など)やオーストラリア(ワインが牛肉など)からの輸入を突然一方的に停止したり、日本に対しても2010年の尖閣諸島衝突事件(中国漁船と海上保安庁の船が衝突し、日本側が中国人船長を逮捕した)の際、報復措置として日本向けのレアアース輸出禁止に踏み切った。

今日、韓国にとって中国は最大の貿易相手であり、正に中国による経済攻撃の餌食となる。何が餌食の対象になるかは分からないが、韓国の中国依存度が高い品目などがその対象となろう。その危険性に気付いているユン大統領は、韓国経済の中国依存からの脱却に動き始めた。ユン大統領は輸出戦略の転換を主張し、たとえば大手企業のサムスン電子や現代自動車など財閥大手に対して工場建設などを米国や日本などで進めることを提唱するなど、軸足を中国から移し始めた。中国の魔の手から逃げられるか、これが極めて大きな問題になりつつある。

image by: 首相官邸

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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