学級崩壊ならぬ「職員室崩壊」の現実。管理職のために仕事をする教師の悲鳴

Kagawa,,Japan,-,November,28,,2017:,View,In,The,Junior
 

教師不足対策の一環として、来年度からの教員採用試験を約1ヶ月ほど前倒しする方針を示した文科省。しかしながらこのような小手先の対応では、現場が直面している難局を乗り切ることは不可能なようです。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、10年以上前から人材不足に陥ることがわかり切っていたにもかかわらず、今の今まで何一つ有効な手を打たなかった日本の教育行政を強く批判。さらに教師が子供たちのために仕事ができない現状を紹介するとともに、政府に対して「異次元の学校対策」の実施を強く求めています。

プロフィール河合薫かわいかおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

管理職のための仕事?教師たちの悲鳴

学校の教員不足が止まりません。

朝日新聞の調査では判明しただけで、1,494人が不足(4月時点)。兵庫県教委と兵庫教職員組合の調査では(神戸市を除く5月1日時点)小学校73人、中学校61人、高校で18人、特別支援学校で12人と、いずれも前の年より不足人数が増え、合わせて164人が不足しているいう状況が明らかになったそうです。

政府は、給与体系を改善して賃金の引き上げを実現するほか、学級担任などを念頭にした新たな手当の創設などを、「骨太の方針」に明記することで調整していますが、現場の声に耳を傾ければ傾けるほど、「カネを上げたところで問題は解決しないのでは?」との疑問が尽きません。

教員の「職場環境の悪さ」は、10年以上前から指摘され続けてきました。長時間労働・休日出勤は当たり前、めったやたらに提出書類が多く(文科省や教育委員会の書類)、問題が起こるたびに雑用が増え、さまざまな数値目標なるものが課せられてきました。「親のクレームの数をいくつまで減らす」「問題行動をとる生徒を何人まで減らす」「遅刻する子供を減らす」といった具合です。

「産休・育休、病休などで学校を離れても、その穴を埋める代役の教員が確保できない」「少子化で子どもの数が減少しているのに伴い、正規雇用の教職員の数を減らされている」という声もありましたし、「何か問題が起こると、先生の責任になる」「学校も教育委員会も守ってくれない」「そんな状況で、誰が先生になろうと思うでしょうか?」という嘆きも度々耳にしました。

日本教職員組合が実施した調査では(2022年)、教員の週当たりの「平均時間外労働時間」は23時間53分。月に換算すると実質95時間で過労死ラインを大幅に超えています。

しかも、採用数が多かった年の教員が定年退職を迎えたため、現場は若い先生と非常勤の先生だらけでてんやわんやだといいます。担任が決まらず教頭先生が担当したり、教員経験はないけど教員免許をもっている「ペーパーティーチャー」を集める自治体も増えているとか。

繰り返しますが、10年以上前から「教員の非正規増加は教員不足につながる」「ブラックすぎて学生のなり手がいない」と指摘され続けてきたのに。なぜ、こんなにも改善されないのか。一言でいえば「変える気がなかった」。「どうせ子供の数減るわけだし。あとは現場でひとつよろしく!」っていうことなのでしょう。

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